明暗くっきり日本株、上方修正幅&下方修正幅が大きい14社。来期回復に期待
トウシル / 2019年11月12日 7時27分
明暗くっきり日本株、上方修正幅&下方修正幅が大きい14社。来期回復に期待
中国景気悪化、世界景気減速の影響を受けて、2期連続減益へ
9月中間決算の発表が終盤に入っています。これまでの発表を総括すると、米中貿易戦争の影響により、中国を中心に世界景気が減速した影響を受け、製造業(自動車・設備投資関連株)の業績悪化が目立ちます。
非製造業の業績は堅調ですが、製造業の業績見通し引き下げを受け、東証1部3月期決算、主要841社の今期(2020年3月期)純利益(会社予想)は、11月8日時点で、前期比3.6%減る見通しとなりました。期初(5月時点)の予想は、2.4%の増益でしたが、2期連続減益見通しに下方修正されました。
東証1部3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比変化率):2016年3月期(実績)~2020年3月期(予想)
決算期 | 実績/予想 | 純利益 | |||
---|---|---|---|---|---|
2016年3月期 | 実績 | ▲ 4.7% | |||
2017年3月期 | 実績 | + 12.3% | |||
2018年3月期 | 会社予想(期初予想:5月) | + 5.9% | |||
会社予想(12月末時点) | + 12.2% | ||||
実績 | + 27.5% | ||||
2019年3月期 | 会社予想(期初予想:5月) | ▲ 2.5% | |||
会社予想(12月末時点) | ▲ 1.8% | ||||
実績 | ▲ 6.2% | ||||
2020年3月期 | 会社予想(期初予想:5月) | + 2.4% | |||
会社予想(11月8日) | ▲ 3.6% | ||||
(出所:楽天証券経済研究所が作成) |
過去4年の業績推移振り返り
2016年3月期以降の東証1部主要841社の業績推移を、簡単に振り返ります。
◆2016年3月期:4.7%の減益
下期(2015年10月~2016年3月)の景気が「景気後退ぎりぎり」まで悪化したため、減益となりました。ただし、「景気後退」の定義を満たすまでは悪化しませんでした。結果的に、「景気減速・踊り場」と位置づけられています。
チャイナ・ショック(中国景気の悪化)、原油安ショック(資源国の景気悪化)、米国景気減速を受け、世界的に景気が停滞した影響を受け、日本の景気も低迷しました。
◆2017年3月期:12.3%の増益
2016年4月以降、世界的な景気回復を受け、日本の景気も持ち直しました。景気好転を受けて、増益となりました。
◆2018年3月期:27.5%の増益
期初(2017年5月時点)の会社予想を集計すると、5.9%の増益予想でした。それが、四半期決算が出るごとに上方修正され、最終的に27.5%増益まで拡大しました。世界まるごと好景気の恩恵を受けて、日本も好調でした。
◆2019年3月期:6.2%の減益
期初(2018年5月時点)の会社予想を集計すると、小幅(▲2.5%)の減益見込みでした。例年通り、保守的(低め)の予想で、先行き、上方修正され、増益になると考えられていました。上期(2018年9月)までの景況は一進一退でした。ところが、下期(2018年10月以降)に、中国を中心に世界景気が悪化した影響を受けて、日本の企業業績予想も、下方修正が増え、最終的に6.2%の減益となりました。
◆2020年3月期(途中経過):3.6%の減益予想
期初(2019年5月時点)の会社予想を集計すると、小幅(2.4%)の増益見込みでした。この時点では、例年通り、保守的な見通しでした。ところが、その後、中国景気の悪化の影響を受けて、世界的に景気減速が鮮明になってきたため、9月中間決算の発表で下方修正が増え、11月8日時点では、▲3.6%の減益見通しとなっています。
今期の連結純利益(会社予想)の上・下方修正額が大きい企業
通期(2020年3月期)業績予想を下方修正する企業が、製造業に増えています。以下に上・下方修正額の大きい企業を挙げます。
今期(2020年3月期)の連結純利益(会社予想)の下方修正額が大きい14社:11月8日時点
NO | コード | 銘柄名 | 下方修正額 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 5020 | JXTG HD | ▲ 1,650 | ||
2 | 7203 | トヨタ自動車 | ▲ 1,000 | ||
3 | 7003 | 三井E&S HD | ▲ 910 | ||
4 | 7267 | 本田技研工業 | ▲ 900 | ||
5 | 8058 | 三菱商事 | ▲ 800 | ||
6 | 5486 | 日立金属 | ▲ 755 | ||
7 | 6501 | 日立製作所 | ▲ 750 | ||
8 | 7211 | 三菱自動車工業 | ▲ 600 | ||
9 | 7269 | スズキ | ▲ 600 | ||
10 | 7259 | アイシン精機 | ▲ 530 | ||
11 | 4005 | 住友化学 | ▲ 500 | ||
12 | 6902 | デンソー | ▲ 480 | ||
13 | 7270 | SUBARU | ▲ 470 | ||
14 | 8053 | 住友商事 | ▲ 400 | ||
(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成) (単位:億円) |
世界景気減速を受けて、自動車関連株の業績悪化が目立ちます。また、原油や石油化学市況の下落を受けて、石油精製・化学・商社などの業績も悪化しています。
今期(2020年3月期)の連結純利益(会社予想)の上方修正額が大きい14社:11月8日時点
NO | コード | 銘柄名 | 上方修正額 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 4502 | 武田薬品工業 | 1,100 | ||
2 | 6758 | ソニー | 400 | ||
3 | 4503 | アステラス製薬 | 280 | ||
4 | 6645 | オムロン | 235 | ||
5 | 6702 | 富士通 | 200 | ||
6 | 4568 | 第一三共 | 180 | ||
7 | 4307 | 野村総合研究所 | 130 | ||
8 | 4661 | オリエンタルランド | 109 | ||
9 | 6857 | アドバンテスト | 105 | ||
10 | 1605 | 国際石油開発帝石 | 100 | ||
11 | 9022 | 東海旅客鉄道 | 100 | ||
12 | 4523 | エーザイ | 96 | ||
13 | 6444 | サンデンHD | 85 | ||
14 | 1662 | 石油資源開発 | 74 | ||
(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成) (単位:億円) |
医薬品・情報通信・半導体製造装置に、上方修正が増えています。
日本株は「買い場」の判断継続
足元の景気・企業業績の悪化は、昨年10月以降の日経平均株価の急落で、織り込み済みと判断しています。株価は、おおよそ半年から1年後の景気変化を織り込みながら動きます。ここからは、来期の景気・企業業績を織り込む動きが始まると見ています。
足元、日経平均が順調に上昇してきているのは、来期の景気・企業業績回復を織り込む、最初の動きと見ています。来期は、5G(第5世代移動体通信)・半導体への投資が世界的に盛り上がり、ハイテク産業の業績が増加に転じると予想しています。
日本株は、引き続き「買い場」と判断しています。
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(窪田 真之)
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