さえないサイン点灯中の日経平均、まだ上昇できる?押さえておきたいジョージ・ソロスの考え方
トウシル / 2019年11月18日 12時44分
さえないサイン点灯中の日経平均、まだ上昇できる?押さえておきたいジョージ・ソロスの考え方
日経平均は2万3,000円台を維持するも、上値は切り下がりの傾向
先週末11月15日(金)の日経平均株価は2万3,303円で取引を終えました。前週末終値(2万3,391円)からは88円安となり、週間では6週ぶりに下落に転じたものの、週を通じて2万3,000円台を維持していた他、12日(火)の取引では終値ベースでの年初来高値を更新しています。
さらに、先週末の米国株市場は米中関係の改善期待が高まったことでNYダウ平均株価が史上最高値を更新し、2万8,000ドルの大台に乗せてきました。今週の国内株市場もこの流れに乗ってさらなる上値をトライできるかが注目されますが、実際のところはどうなのでしょうか?
まずはいつもの通り、日足チャートで足元の状況から見ていきます。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年11月15日取引終了時点)
先週の日経平均の値動きをローソク足で振り返ってみると、5日間のうち、陽線2本・陰線3本と陰線がやや優勢となっています。
次に、5日移動平均線との絡みを見ても、これまでのサポートから抵抗に変わりつつあるようにも見えます。実際に先週見せた2本の陽線のうち、12日(火)はサポートとなって上昇しましたが、15日(金)は戻りの抵抗になっていることが分かります。
先週の週間高値は12日(火)の2万3,545円ですので、前回のレポートで注目した「幻のSQ値(2万3,637円)」に届いていませんし、結果的に終値ベースで年初来高値を更新する場面がありましたが、上値自体は切り下がりの傾向です。
米国株上昇が国内株のさえないサインを吹き飛ばせるかが焦点に
また、平均足とMACDの組み合わせを見ても、トレンド転換の条件とされる「平均足の陰転」と「MACDのクロス」の二つが出現しています(下の図2)。
■(図2)日経平均(日足)の平均足とMACDの動き(2019年11月15日取引終了時点)
そのため、先週末時点のチャートだけで判断すれば、日経平均は良い形で終えたとは言えず、下方向への意識が強まりやすくなっていると考えられます。
とはいえ、先週の相場環境は、状況の悪化が懸念される香港市場が大きく下落したり、さえない経済指標が発表された中国で景気減速懸念が高まったりと、必ずしも良好ではなかったことを踏まえると、相場の地合いは堅調さを保っていたと見ることもできます。
さらに、冒頭でも触れた通り、米中関係の改善期待を背景に米国株市場が最高値を更新してきました。こうした米国株上昇の流れが国内株市場のさえないテクニカル分析のサインを吹き飛ばせるかが今週の焦点になりそうです。
したがって、今週の日経平均の値動きの想定はこれまで通り、エンベロープが意識されることになりそうです(下の図3)。
■(図3)日経平均(日足)のエンベロープ(25日MA基準)(2019年11月15日取引終了時点)
先週の値動きで日経平均は+3%を下抜けてしまいましたが、再び+3%を超えていくのか、それとも25日移動平均線の方向に向かっていくのかが注目されます。また、+6%のラインは2万4,000円台の位置にありますので、強気に傾いた際の一段高も考慮しておく必要があるかもしれません。
最近までの株価上昇は「実際の価格とのギャップ拡大」?
そこで、NYダウの値動きについてもチェックしていきたいと思います。
■(図4)NYダウ (日足)の動き(2019年11月15日取引終了時点)
11月に入ってからのNYダウのローソク足に注目すると、図1の日経平均とは違ってかなり陽線が多く、順調に上値を伸ばしてきたことが分かります。そのため、足元の日経平均がNYダウの上昇について行けていない場面が増えている点は頭に入れておく必要があります。
日経平均は需給的要因(積み上っていない裁定買い残やダブルインバース型ETFの信用買い残の異常な積み上がり)もあって、下げにくくなっている一方で、上がりにくくなり始めている可能性があるわけです。ちなみに、先週の日本株は為替の円高傾向も影響して上値を抑えている面もあります。
最近までの株価押し上げエンジンとなってきた米中協議の進展については、市場の予想通り両国間で「第一段階」の合意が署名・調印される可能性がかなり高いと思われますが、その具体的な内容やスケジュールは未定です。合意によって緩和・撤廃される関税や規制の度合い次第では、「期待をかなり先取りしていた」なんてことも十分にあり得ます。
なお、著名投資家であるジョージ・ソロスは、「市場において投資家の認識と実際の価値はほとんど一致しない」という考え方で知られています。
簡単に説明すると、株価(市場価格)は企業の業績や見通し、経済指標などの景況判断、政治的動向など、様々な材料に対する投資家の認識によって形成されていきますが、期待(不安)の先取りや過度な楽観(悲観)などによって、市場の価格と実際の価格との間にはギャップが生じます。こうしたギャップの発生や拡大、そしてそのギャップを修正していく動きを捉えることが投資の本質であるというわけです。
つまり、最近までの株価上昇が実際の価格とのギャップを拡大させている最中ならば、修正局面に入るまでは株価は上昇していくものの、いざ修正へと舵の向きが切り替われば、今度はギャップを埋めるべく株価が下落していくことになります。
現時点ではまだ積極的な売りが出ているわけではなく、当面は株価上昇に合わせて動く投資スタンスで良いかと思われますが、好材料(米中関係改善期待など)を過大評価して株価の上昇を正当化してしまうと痛い目に遭うことになりますので、株価が深押しし始めたタイミングでの素早い手じまいが重要になりそうです。
(土信田 雅之)
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