2020年の景気はどうなる?景気・株価の先読みのルール
トウシル / 2019年12月3日 7時55分
2020年の景気はどうなる?景気・株価の先読みのルール
来年の景気回復を先取りする株価
世界景気は「18年好調→19年悪化→20年回復」か
日経平均株価・NYダウが最近強いのは、2020年の世界景気回復を織り込む動きと考えています。足元の世界景気は悪化していますが、株価は、景気循環よりも半年~1年先行して動きます。
2020年4月あたりから、5G(第5世代移動体通信)、半導体の投資が盛り上がり、世界景気が回復すると考えるならば、今の日米株価の動きは、過去の経験則通りです。
過去の景気循環を振り返り:昭和までは山谷がはっきりしていた
それでは、過去の景気循環を見てみましょう。まず、内閣府が認定している「景気後退期」をご覧ください。
内閣府が認定した景気後退期
昭和では、景気の山谷がはっきりしていたので、内閣府も「景気後退期」の認定に、迷うことはなかったと思います。ところが、近年は、景気の山谷がはっきりせず、景気循環を定義するのが難しくなってきています。
理由は、昭和では日本経済の主導は製造業だったからです。製造業主体の経済では、景気の波がはっきりと出ます。短期の波は「キチンの波」と言われ、製造業の在庫調整を主体として発生します。景気が良い時、ついついたくさん作り過ぎてしまい売れ残った在庫が積みあがると調整期に入ります。在庫調整が済むと、また生産が増えて景気は回復します。これが、「在庫調整の波」です。
製造業主体の経済で、もう少し大きな波として「ジュグラーの波」があります。設備投資サイクルが作り出す波です。景気が良い時、ついついたくさん設備投資をし過ぎてしまい、余剰設備ができて稼働率が低下し、景気後退期に入ります。こちらは、在庫調整よりも深刻です。それでも、時間がたつと余剰設備は解消し、再び前向きな設備投資サイクルに入ります。昔の教科書に、ジュグラーの波は10年周期と書いてありましたが、今は、技術革新による設備の陳腐化が早いので、設備投資の波ももっと短くなっています。
このように、製造業主導の経済では、どうしても良い時と悪い時が周期的に現れます。これが、景気循環として定義され、株価はその循環を半年~1年先取りして動いてきました。
近年は景気の山谷がはっきりしない
「後退には至らない停滞」と「景気回復の実感のない長期回復」を繰り返している
日本経済は、平成に入ってから徐々に「サービス化社会」に入りつつあります。製造業の影響が徐々に小さくなるにつれて、景気循環の波は、分かりにくくなってきました。
日本経済では今でも製造業が重要な役割を果たしていますが、それでも製造業の影響力は年々低下しています。代わって、広義のサービス業、IT産業の比率が高まっています。製造業でも、製造そのものを海外にアウトソースし、開発やマーケティングに特化する「ファブレス(工場を持たない)」製造業が増えています。
消費が少し盛り上がったり停滞したりすることで起こる「消費主導の循環」は、製造業の山谷に比べて、かなりなだらかです。
内閣府は、景気後退期を決めることで、景気循環を定義しています。でも、それでは消費が停滞するだけの悪化局面は、景気後退期の定義を満たさないことになります。そこで、景気後退期がないままに、「戦後最長の景気拡大が続いている」という話が出やすくなっています。「景気回復の実感がない」と言われながら、いつまでもだらだらと回復期が続くことになります。
景気停滞期を定義すべきと考える。2004年以降、3回ある
景気後退期の定義を見直さないと、いつまでも景気後退がないままの拡大が延々と続くことになりかねないと思います。あるいは景気後退期に代わって、「景気停滞期」を定義する必要があると思います。
内閣府が「景気拡大が続いている」と言っている期間の中で、2004年以降、3つの景気停滞期があると私は思っています。以下の通りです。
【1】 2004年7~12月:景気停滞期→当時「景気の踊り場」と言われた。世界的な景気停滞の影響で、日本の景気も停滞。
【2】2014年4~9月:景気停滞期→消費増税(5→8%)の影響で、消費が一時的に大きく落ち込んだ。
【3】2015年10月~16年3月:景気停滞期。資源安ショック・中国景気悪化の影響で、世界的に景気が停滞。
日経平均は、景気停滞・景気後退を半年~1年先取りして動いている
ご参考までに、以下をご覧ください。
景気循環と日経平均の動き、景気後退期に色をつけている:1998年末~2019年11月末
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(窪田 真之)
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