Amazonの真の目的を日本は理解できていたか?寺島実郎が語る正念場の日本【前編】

トウシル / 2019年12月16日 9時37分

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Amazonの真の目的を日本は理解できていたか?寺島実郎が語る正念場の日本【前編】

 日本の人口は2053年には1億人を割り、65歳以上の高齢者の割合が38%に達すると予測されている。しかし、日本が抱える問題は人口の減少と高齢社会の進行だけではない。世界はもはや日本をアジアのリーダーとは見ておらず、日本のプレゼンスは大きく後退している。日本が成熟したリーダーとしてアジアで輝くためには、何をすべきなのか。

 2019年11月9日開催の楽天証券ETFカンファレンスで「世界の変調と日本の進路」と題した寺島実郎氏の講演録を2回にわたって公開する。

 前編ではデジタルトランスフォーメーションをテーマに、日本の進むべき道と個人投資家へのアドバイスを紹介する。

GAFAとBATがプラットフォーマーとして巨大データを支配

 これからの日本の進む道を示すキーワードの一つは、デジタルトランスフォーメーションです。デジタルトランスフォーメーションとは「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。携帯電話・スマートフォンの普及数は人口の1.3倍を超えていて、我々は今さら指摘するまでもなく、ネットワーク情報技術革命に身を委ねながら生きています。

 ネットワーク情報技術革命をけん引しているのは、GAFA+M(Google、Apple、Facebook、Amazon+Microsoft)の米国IT5社です。その株式時価総額は4.3兆ドル(約460兆円)に達し、日本のGDP(国内総生産)約5兆ドルに迫る勢いです。

 一方、日本企業の株式時価総額(東証1部市場)トップはトヨタ自動車の23.5兆円。Appleの時価総額は1兆ドル(約106兆円)を超えているので、日本を代表する巨大企業であっても、マーケットではAppleの4分の1の評価しかされていないということです。

 そして、米国のGAFAに対抗するのが、中国のIT3社BAT(Baidu、Alibaba、Tencent。*1)。株式時価総額は1兆ドル(約93兆円)に迫ります(時価総額はいずれも9月末時点)。

*1:HUAWEIは非上場のため入らず

 10年前、西海岸に留学していた中国人が持ち帰った小さなプロジェクトが、IT革命の波に乗ってあっという間に巨大化したのです。米国5社、中国3社は、データを支配するものがすべてを支配する「データリズム」のプラットフォーマーズとして世界に君臨しています。

IT革命を工業生産力モデルの枠組みの中で理解し、失速した日本

 ここで日本企業の株式時価総額の上位10社の推移を紹介します。

 工業生産力モデルの一定点に到達した1980年の株式時価総額1位はトヨタ自工(*2)、次いで松下電器産業(現パナソニック)、日産自動車の順でした。

*2:1982年にトヨタ自工とトヨタ自販が合併してトヨタ自動車になった

 バブルがピークを迎えた1990年の上位3社は日本電信電話、日本興業銀行、富士銀行。

 2019年(9月末時点)の上位3社はトヨタ自動車、NTTドコモ、ソフトバンクグループ。10位にKDDI。携帯電話の回線業者が上位に入っていることから、日本企業もIT革命のインパクトを受けたことが分かります。

 つまり、日本人もインターネットの時代が来ることは予測していました。回線業やeビジネスモデルに目をつけ、半導体などの電子部品の分野でも存在感を示すことができたのです。

 ところが、IT革命が第2段階に入り、ビッグデータ、AI(人工知能)、データリズムという言葉が飛び交う状況になると、にわかに日本の失速が目立つようになり、日本版GAFAが生まれることはなかった。その原因は、日本人がIT革命を工業生産力モデルの枠組みの中でしか理解できなかったところにあると私は考えています。

投資家としてAmazonの真の目的を理解できていたか?

 では、個人投資家としてどうだったか、自問自答してください。米国でAmazonが誕生し、日本に進出してきたとき、Amazonの商売をどう理解したのか? 多くの人はネットを使った本の通信販売会社だと思ったはずです。でも、そうではなかった。Amazonの目的はデータリズムだったのです。

 これからの時代は、企業の大中小、業界に関係なくデータを的確に戦略的に活用できる企業が生き残り、そうでない企業は消えていく。それを個人投資家が見極めることは容易ではありません。

 しかし、攻め筋はあります。キーワードは次の3点です。

(1)デジタルトランスフォーメーション
(2)アジアダイナミズム(後編のテーマ)
(3)ジェロントロジー(高齢化社会工学)

 この問題意識に対して、戦略的な視界を切り開いた企業が、個人投資家が「成功」に近づくことができるのです。

≫≫寺島実郎が語る正念場の日本2020【後編】を読む

寺島実郎(てらしま・じつろう)

一般財団法人日本総合研究所会長、多摩大学学長。
1947年北海道生まれ。1973年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産株式会社入社。米ブルッキングス研究所出向を経て、米国三井物産ワシントン事務所所長、三井物産業務部総合情報室長、三井物産戦略研究所所長、会長などを歴任。
1994年石橋湛山賞受賞。2010年4月早稲田大学名誉博士学位授与。近著に『戦後日本を生きた世代は何を残すべきか われらの持つべき視界と覚悟』(佐高信共著、河出書房新社)、『ジェロントロジー宣言「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』(NHK出版新書)がある。

(トウシル編集チーム)

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