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株式売りは世界に伝染するか、新型肺炎とトランプ大統領の行く末

トウシル / 2020年1月24日 7時50分

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株式売りは世界に伝染するか、新型肺炎とトランプ大統領の行く末

新型肺炎を巡る不安が株式売りの口実に

 中国・武漢で発生したコロナウイルスによる新型肺炎の発症者が570人を超え、死者は17人となりました(23日の報道)。米国や日本でも感染者が発見されたことが株式市場の悪材料となっています。「中国政府が感染の深刻さを過小評価し対応が遅れた」との見方で、中国株や香港株は急落。日経平均株価も2万4,000円割れに押される展開となりました(図表1)。

 WHO(世界保健機関)は、「新たな感染の報告例から、持続的な人から人への感染が起きている可能性がある」と警戒(21日)。中国は24日から春節(旧正月)による大型連休が始まり、海外旅行に出る中国人が増える時期で、市場は最悪のケースとされる「パンデミック(感染症の世界的流行)」を過度に不安視しているようです。特に日本では、2019年のインバウンド(訪日外国人客)総数約3,118万人のうち、中国人訪日客数が約959万人と約3分の1を占めており、今週は資生堂などインバウンド関連銘柄が売られる場面がみられました。株式は高値圏で推移してきただけに、新型肺炎が利益確定売りの「口実」となっている感があります。

 株価下落によるリスク回避姿勢で為替も円高となり、ドル/円相場は110円割れとなりました(23日15時現在)。米国で10-12月期決算発表が続く中、「過剰流動性」をエンジンとしてきた米国株高が日本株の支えとなってきました。目先の日本株は、新型肺炎の行方、米国株の値動き、為替相場の変動に神経質な展開を余儀なくされそうです。

図表1:新型肺炎不安で香港ハンセン指数は急落

出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(2019/1/1~2020/1/23)

トランプ大統領の「再選予想確率」が上昇している

 一方、年末年始の米国株高を支えた要因として、「トランプ米大統領の再選予想確率」が上昇してきたことに注目です。米大統領選挙に関する「予想確率(Implied Probability)」を公表している調査会社(PredictIt)によれば、「共和党候補当選(現時点の予想候補者はトランプ大統領)」の予想確率が初めて「民主党候補当選」を上回りました(図表2)。

 失業率が50年ぶりの低水準(3.5%)にとどまる中、米国の個人消費は堅調に推移。年初のイランに対する強硬姿勢や米中貿易交渉の第1段階合意と株高が現職大統領の当選予想確率を押し上げたとみられます(図表2)。いまだ民主党の大統領候補が絞り込まれていない段階で、当選予想確率として十分な水準とは言えませんが、共和党候補の当選予想確率が民主党を上回ったことが、市場の安堵感に繋がっている可能性があります。

図表2:共和党候補者の当選予想確率が民主党を上回った

出所:PredictItの予想確率(Implied Probability)をもとに楽天証券経済研究所作成(2019/5/1~2020/1/21)

 トランプ大統領は21日、スイスで開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)で演説を行い、好調な米国経済への自身の功績を強調しました。同大統領は、「米国は世界がこれまで見たことのないような好景気の真っただ中にいる」と述べ、「われわれは本来の歩みを取り戻し、米国の精神を再発見した」とまで語りました。

 同大統領はツイッターでも、「これまでよりも大きくて素晴らしく強いアメリカンドリームが戻ってきた」と主張し、「われわれ(米国)はいまや群を抜いて宇宙一だ!」と訴えています。

 また、トランプ政権のムニューシン財務長官は、「中間層に向けた所得税減税」を検討していることを明らかにしました。民主党の左派系候補が「大企業や富裕層への増税」を主張しているのと対極的な姿勢です。

経済悲惨度指数の低下と株高はトランプ再選の追い風

 トランプ大統領の再選予想確率が上昇しているのは、「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に恵まれているから」との見方があります。図表3は、過去50年における米国の「経済悲惨度指数」と株価(S&P500指数)の推移を示したものです。

 経済悲惨度指数(Economic Misery Index)とは、経済学者であるアーサー・オークン氏が考案したもので、失業率とインフレ率の絶対値を足した指数です。「所得格差の問題」は別にして、経済悲惨度指数の低下は与党政権に追い風とされます。逆に、高い失業率とインフレ高進が共存するスタグフレーション色の強い(不況期に物価が上昇する)局面では、米国民(有権者)は生活苦や不満を感じやすくなります。大統領選挙年に経済悲惨度指数が上昇する(高水準で推移する)と現職の大統領(現在は共和党政権)に不利と言われてきました。

 実際、過去50年の間に「再選に失敗した大統領」は、1980年のカーター大統領と1992年のブッシュ(父)大統領のみで、どちらも経済悲惨度指数が10以上に上昇して高水準だったことが分かります。

図表3:米国の経済悲惨度指数と株価の長期推移

出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(1970/1~2019/12)

 トランプ大統領の功績か否かは別にして、米国の経済悲惨度指数は5.1(=失業率3.5%+PCEコア物価上昇率1.6%)と過去50年で最も低い水準(低失業率で低インフレ)で、こうした経済環境が米国株高を支えているとも言えます(図表3)。

 経済の定量的側面では「トランプ大統領再選」に有利な環境と言えそうです。ただ、選挙民の支持は定性的な「感性や好み」で左右される場合もあります。かつて米大統領に求められてきた「高潔さ」、「道徳心」、「倫理観」、「上品さ」、「公正さ」の面では、トランプ大統領の再選に疑問符が付いているからです。

 今週は上院議会で大統領弾劾裁判(審議)がスタートしました。共和党が過半を占める上院議会で否決される可能性が高い弾劾発議に踏み切った下院・民主党の攻勢と証人喚問の行方が注目されています。また、2月3日のアイオワ州党員集会でスタートする民主党の大統領候補者選定の動きも要注目です。株式市場のメインシナリオとされる「トランプ大統領再選」を揺るがすニュース・フローが増えると、米国株やドルは下落しやすくなります。

 新型肺炎の流行不安だけでなく、ワシントン情勢を巡る不確実性が高まると、これまで安定していたボラティリティ(変動率)見通しが高まり株価が乱高下する可能性があり注意が必要です。

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(香川 睦)

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