1月の米国雇用統計:インフレ前に失業率はまだ下がる?米中貿易問題と新型肺炎の影響は?
トウシル / 2020年2月5日 15時0分
1月の米国雇用統計:インフレ前に失業率はまだ下がる?米中貿易問題と新型肺炎の影響は?
過去3ヵ月の推移と今回の予想値
前月のレビュー
先月発表された12月の米雇用統計は弱い内容でした。失業率は3.5%と低い水準を維持しましたが、NFP(非農業部門雇用者数)は+14.5万人にとどまり、さらに11月分も下方修正。平均時給は前月比+0.1%、前年比は+2.9%で2018年以来の鈍い上昇率となりました。
とはいえ、米国のリセッション入りを想起させるほど悪かったわけではありません。FOMC(米連邦公開市場委員会)は、1月の会合で、雇用市場は健全な状態であるとの判断を下しています。NFPの過去1年間の平均増加数は+19.2万人で、これはFOMCが「雇用市場の安定状態」と考える+11.5万人~+14.5万人よりはるかに大きいものです。
賃金上昇率は伸び悩みましたが、これでFRB(米連邦準備制度理事会)はしばらく利上げできないと考えるなら、株式市場にとってはむしろ良いニュースといえます。
1月雇用統計の予想
BLS(米労働省労働統計局)が2月7日に発表する1月の雇用統計は、失業率は3.5%で前月比横ばいですが、非農業部門雇用者数は+16.0万人と前月よりも増える見込み。平均労働賃金は前月比+0.3%、前年比+3.0%に上昇の予想です。
今回の雇用統計でFRBが金融政策を変更することもないでしょう。クラリダFRB副議長は「FOMCは、インフレの兆候が表れる前に“失業率がどれだけ低下”するのか調査するつもりだ」と述べています。現在の金利水準が米経済の持続的拡大にとって適正であり、当面は利下げも利上げも不要との確信を強めることになりそうです。
米雇用市場は、今後も拡大するのか
米中貿易交渉が1月に第一段階とはいえ決着して、特に米製造業の不安が薄れたことで、雇用市場は再び拡大ペースを強めていくのでしょうか。ただ現状では、好調な米経済にもかかわらず、雇用者は鈍化するだろうとの見方が増えています。
米国で深刻な労働者不足が続いていることは事実です。ハワイに行くと、「店員募集」の張り紙が、あちこちの店のウインドウに貼ってあるのが目につきます。雇用ニーズが旺盛な状況なのに雇用が伸びないのは、労働市場がすでにピークに達してしまったからと考えられます。
つまり「働きたい人と思っている人は、みんなもう仕事を見つけてしまった」ということです。そうであれば、米中貿易交渉が合意したからといっても、雇用者数が大幅に伸びることは期待できないかもしれません。今後の雇用統計でも、ここは大切なポイントになってくるでしょう。
雇用統計が悪くても気にしない
だからといって、今回の雇用統計が予想を下回っても悲観する必要はなさそうです。FOMCが「雇用市場の安定状態」と考える11.5万人~14.5万人。この水準を恒常的に下回り始めるまでは気にする必要はないでしょう。
新型肺炎で米雇用市場にどのような影響が出るかはまだ不明。感染は月末に発生したもので今回の統計には含まれていないこと、また北米大陸では今のところ、アジアほど深刻な拡大は起きていません。ロス米商務長官は、1月30日、新型肺炎の感染拡大のおかげで「北米に雇用が戻ってくるかもしれない」と語っています。
(荒地 潤)
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