FRB利下げ再開か?急速な円高、ユーロ安のシグナルは?
トウシル / 2020年2月5日 14時28分
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FRB利下げ再開か?急速な円高、ユーロ安のシグナルは?
2月も新型肺炎の影響続く
1月最終日のNYダウ平均株価は603ドル下落し、下げ幅は昨年8月23日以来、ほぼ半年ぶりの大きさとなりました。そして、この日の東京市場で1ドル=109円台だったドル/円は、ニューヨーク市場で円高が進み、108円台前半に下落して1月を終えました。新型肺炎の感染拡大で世界景気の先行き不透明感が強まったことが背景です。
2月に入っても新型肺炎の感染拡大が続いていることから、2月もこの要因がマーケットの最大注目材料となりそうです。ただ、新型肺炎の感染拡大によって株式市場は大きく揺れ、米長期金利も低下していますが、ドル/円は緩やかな円高進行でした。この緩やかな円高はドル高も同時に起こっていることが背景のようです。このドル高・円高の地合いはしばらく続きそうな気配であり、円高は進んでもドル/円の急落はないかもしれません。注目されていた春節明けの上海株も、一時9%近くの大幅下落となりましたが、ドル/円は108.50円近辺で落ち着いた動きだったのも、そのことを物語っているのかもしれません。
中国経済の減速→世界経済へ波及すれば円高
ただ、中国での感染拡大、ヒト・モノの移動制限によって中国経済は確実に減速することが予想されます。これが世界経済に波及するのが目に見えてきた段階で、ドル/円の円高のスピードは速くなるかもしれません。
2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るった時は春先に影響が集中し、中国の2003年4-6月期GDP(国内総生産)は1-3月期から2%低下(+11.1%→+9.1%)しましたが、SARS発症から半年以上経ってからの減速でした。
一方、今回は規制が厳しいため、かなり早い段階で中国経済の減速が見えてくるかもしれません。また、世界に占める中国のGDPは2003年の約4%に対し、2019年では約16%と4倍近くなっていることから、世界経済に対する影響はかなり大きくなることが予想されます。
日本は中国との経済関係が大きいため、長引けば長引くほど打撃が大きくなります。加えて、中国との人の行き来が盛んであるため、中国人観光客の減少によってインバウンドが減少するだけでなく、日本観光を避ける外国人が増えるリスクがあります。新型肺炎が終息するまでは日本を訪れないでしょう。
新型肺炎影響は未反映でも日本10-12月期GDPはマイナス4%予測
民間15社の10-12月期の日本のGDP予測は、世界経済の減速と消費増税の影響で、マイナス4%になるとの予測です。7-9月期GDPは+1.8%と4四半期連続のプラス成長でしたが、5四半期ぶりのマイナス成長に陥るとしています。これらは2月17日に公表予定ですが、まだ新型肺炎の影響は加味されていません。次の1-3月期はさらに悪化する懸念が強まってきます。
欧州経済も一時持ち直しましたが、10-12月期GDPは前年比+1.0%と前期から減速しました。
ユーロ圏2~3位の大国フランス、イタリアがそろってマイナス成長となり、ユーロ圏GDPを約7年ぶりの低成長に押し下げました。
ユーロ圏1位のドイツのGDPは2月14日発表予定ですが、ドイツ経済もマイナスとなれば、ユーロ、ユーロ/円が下落し、ドル/円の円高を後押しする可能性があります。先行きの欧州経済についても、まだ新型肺炎の影響は加味されていません。ドイツを中心に、自動車などの中国向け輸出が欧州経済を支えているため、大幅なユーロ安が進行するかもしれません。
これらの状況を受けてIMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ専務理事は、いちはやく新型肺炎について「世界景気に短期的な減速をもたらす可能性がある」との懸念を表明し、世界経済を支えるため「主要中央銀行には2020年中も金融緩和を維持するよう強く求める」と主張しました。
FRBの利下げ再開観測
先週末に603ドル下げたNYダウは、週明けの2月3日(月)には、一時300ドル超の上昇となりました。
新型肺炎の感染拡大は続いているのですが、先週のNYダウの下げは新型肺炎をきっかけに上げ過ぎた株の調整にしか過ぎず、下がったところは買い場だとの強気の見方が出てきたようです。この見方の背景には中国人民銀行の18兆円の資金供給を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)に対しても再利下げへの期待が高まったようです。新型肺炎で景気が鈍化すれば、FRBは慎重ながらも何らかの緩和策を取ってくるだろうとの期待です。
米金利先物の値動きから金融政策を予想する「フェドウォッチ」によると、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)までの利下げの確率は、年初で25%程度でしたが、2月2日時点では70%強に急上昇しています。
1月29日のFOMC後の記者会見では、パウエルFRB議長は全体の経済については「緩やかに拡大しているとの見通しに変化はない」と説明しています。そして、新型肺炎の影響については「初期段階であり不透明だが経過を注視している」とし、「近い将来、中国の生産活動に影響し、近隣諸国や世界経済に対しても影響が及ぶ可能性がある」と警戒感を示しました。そして感染は急拡大しているため、2月11日の議会証言でパウエル議長が一歩踏み込んだ警戒感を示せば、利下げ再開期待はさらに高まることが予想されます。そうなれば、米長期金利は下がり、ドル/円の円高圧力が高まる可能性があります。
現在のドル/円は、上海・香港株やニューヨーク株の上げ下げによって上下動していますが、ジワリジワリと頭が重くなってきそうです。
(ハッサク)
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