日経平均は反発。意外高は期待の先取り?新型肺炎ショックの織り込みはこれから
トウシル / 2020年2月10日 13時4分
日経平均は反発。意外高は期待の先取り?新型肺炎ショックの織り込みはこれから
日経平均は大きく上昇、下げた分を取り戻す
2月相場入りとなった先週末7日(金)の日経平均は2万3,827円で取引を終え、前週末終値(2万3,205円)から大きく上昇しました。
前回のレポートでは、下方向への意識が強いことを指摘していただけに、先週の上昇は少し意外感がありました。また、先週の上昇幅は先々週の下げ幅と同じ622円となっており、「下げた分をしっかり取り戻した」格好です。
では、今週も先週の上昇の勢いをこのまま持続することができるのでしょうか? まずはいつもの通り、足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年2月7日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ってみますと、週初3日(月)の取引は、「窓」空けで一段安となり、2万3,000円台割れでスタートしました。ちょうどこの日は休場が延長されていた上海株市場が再開された日で、上海総合指数が休場前の1月23日比で7.7%安と大きく下落した影響を受けた格好です。
しかし、翌4日(火)からは連日で株価を戻していく展開に転じます。終値の前日比が4日(火)で112円高、5日(水)が234円高、6日(木)が554円高と、日を追うごとに勢いを増していき、25日と75日の両移動平均線を上抜けた他、節目の2万4,000円台まであと5円ほどにせまる場面もありました。
さすがに週末の7日(金)はやや値を下げて終えたものの、新型肺炎に対する懸念後退をはじめ、中国が対米関税を引き下げたことや経済政策への期待、円安の進行などの好材料が相次いだことが株価を押し上げました。
上昇基調の維持には2万4,000円台を抜けきることが重要
次に少し期間の長い日足チャートでも見ていきます(下の図2)。
■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2020年2月7日取引終了時点)
日経平均はここ2週間あまりの間に、株価水準が2万4,000円台から2万3,000円台割れ、そして再び2万4,000円台へと揺れ動いたことがわかりますが、先週の株価反発でいわゆる「ダブル・トップ」による下げの加速が回避されたことになります。とはいえ、ここで株価が伸び悩んでしまうと今度は「トリプル・トップ」が意識されることも想定されます。
また、足元の株価の下落と上昇のそれぞれの場面で「窓」空けが出現していることで、空白地帯が形成されていることにも注目です。
空白地帯は昨年の10月にも見られましたが、当時は75日移動平均線が株価サポートになっていることや、空白地帯が右肩上がりになっていて、その後の株価は一段高となりました。ただし、今回については、空白地帯が右肩下がりになっていることや75日線を下抜けたタイミングで出現しているため、上値の重たさが感じられると、窓を埋めにいく動きも考慮しておく必要がありそうです。
そのため、今後の日経平均が上昇基調を保つには2万4,000円台を抜けきることが重要になってきます。先週の上昇の勢いがあれば十分可能と考えることができますが、実際には少し慎重に見た方が良いかもしれません。
この2週間あまりの値動きは新型肺炎の動向が影響を与えているわけですが、「現在進行形」の状況であることに変わりはなく、不安を先取りして株価が下落し、期待を先取りして株価が反発しているだけの「ひとり相撲」と見ることができるからです。現在は受験シーズンの最中ですが、試験を終えてその結果が発表されるまでの間に、合格しているか否かで気持ちだけが先走ってしまう状況に似ています。
しばらくはふらつくような値動きが続きそうですが、景気や企業業績などの実体経済に対して具体的にどれだけの影響があるのかについて、これから答え合わせの織り込みが行われることになります。影響が1~2四半期程度であれば足元の株価上昇は順当なものとなりますが、長期化の見込みとなれば株価が下方向への意識を強めることになります。となると、状況の全体像がある程度見えてくるまでは、日経平均はこの2週間あまりで揺れ動いた1,200円の値幅の範囲内で株価の落ち着きどころを探る展開になるというのがメインシナリオとして想定されます。
NYダウの上昇トレンドは崩れていない
また、直近で2万4,000円台から上放れするとすれば、新型肺炎不安の後退以外では、さらなる円安や米国株高が材料になりますので、米国株市場の動向もチェックしていきます。
■(図3)米NYダウ(日足)とRSI(2020年2月7日取引終了時点)
先週の米国株市場は、主要3指数(NYダウ平均株価・S&P500・NASDAQ総合)がそろって最高値を更新していますが、上の図3でNYダウの動きとRSI(相対力指数)の動きを見ると、「逆行現象」が出現したタイミングで、新型肺炎不安で株価が調整し、RSIが低下していることが分かります。
株価上昇の勢いが低下していると見ることができますが、チャートを過去にさかのぼると、昨年の11月中旬に逆行現象が出現した後に株価が調整し、再び上昇基調を強めた場面があったため、NYダウの上昇トレンドはまだ崩れていないと見ることができます。
今週の米国では予算教書(10日)が発表され、積極的な財政出動政策が示されるかが注目される他、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長による下院での議会証言(11日)などが予定されていますが、こうしたイベントが米国株市場のムードに変化を与えるかが焦点になりそうです。
(土信田 雅之)
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