2024年から新NISAがスタート。一般NISAとつみたての合体版
トウシル / 2020年2月13日 9時9分
2024年から新NISAがスタート。一般NISAとつみたての合体版
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)に関する法改正が議論されています。今回は、つみたてNISA、一般NISA、そして、ジュニアNISAがどのように変わるのかをまとめました。
つみたてNISAは5年延長
まずはつみたてNISAの変更点からみていきます。
つみたてNISAは一定の条件に合致した投資信託(ETF:上場投資信託含む)を一定額ずつ積み立てていくと、最長20年にわたって解約したときの利益が非課税になる制度です。1年間に投資できるお金の上限は40万円です(つみたてNISAの詳細は『「つみたてNISA」ってどんな制度?』をご覧ください)。
現在、新規に投資できる期間は2037年までですが、改正により、2042年まで5年延長されます(図1)。
仮に2020年からつみたてNISAを利用すると、積み立ての上限額は「40万円×23年=920万円」となります。ただし、非課税期間は最長20年(ロールオーバー不可)なので、ある時点において非課税枠で運用できるのは最大でも「40万円×20年=800万円」までです。
一般NISAは2024年から2階建ての新NISAに衣替え
次に一般NISAです。2023年に一般NISAの新規投資枠が終了するのに伴い、新たに新NISAを創設。2024年から2028年まで投資できる期間を5年延長します(図2)。
まず、2024年から始まる新NISAを活用して投資を行う場合を説明します。
新NISAは2階建てとなります(図3参照)。新NISAの特徴は、原則、1階部分(つみたてNISA対象商品の積み立て)を利用しないと、2階部分で投資することができないことです。
「1階部分」で購入できるのは、つみたてNISA対象商品のみ。金額は年間20万円までで、買い方は積み立てに限定されます。
一方、2階部分は現行の一般NISAの対象商品である、上場株式(日本株式・外国株式)や株式投信、ETF、REIT(リート:上場不動産投資信託)などを購入できます(レバレッジを効かせている投資信託、上場株式のうち整理銘柄・管理銘柄は対象外となります)。2階の投資枠は年間102万円まで。一括で購入しても、積み立てをしてもOKです。
もっとも、1階の投資枠20万円をすべて埋める必要はなく、少額でも、対象商品の積み立て設定を行えば、2階部分で投資を行うことはできます。また、投資信託の積み立てを行う場合、1階と2階、それぞれに商品・積立額を設定することも可能です。
1階部分については、5年の非課税期間終了時に「つみたてNISA」にロールオーバーすることも可能になります。その場合、「簿価」でつみたてNISAに移管されます。例えば、1階を上限額である20万円分積み立て投資をしている場合、時価評価額がいくらになっていても、つみたてNISAに移管する際には20万円とされ、あと20万円新規で投資できることになります。
一方、2階部分については課税口座に時価で移管されます(新NISAの制度が将来的に存続していればそれ以外の選択肢もありえます)。
投資経験者は2階だけを使うこともできる
ここまで原則のお話をしてきましたが、一般NISAを利用していた人(NISA口座開設者)や上場株式などの投資経験者は「1階部分」を利用しないことを証券会社等に届け出れば、「2階部分」のみ利用することもできます。
ただし、2階部分のみを利用する場合、投資できるのは個別株のみ。株式投信やETF、REITなどへの投資はできません(株式投資信託やETF、REITなどを買うには先に1階を使う必要があります)。また、年間の投資枠は2階部分の102万円までとなってしまいます。
一般NISAから新NISAへのロールオーバーは複雑
ここまでは新たに新NISAを利用する場合をみてきましたが、これまで一般NISAを利用してきた人はどうなるでしょうか。現行NISAを利用している人については、新制度開始時に自動的に新NISAが設定されるため、再度マイナンバーなどの本人確認書類を出しなおす必要はありません。
一般NISAは非課税期間が5年なので、非課税期間5年終了時に「1.(何も手続きしないと)特定口座などの課税口座に移管」「2.新たなNISA枠にロールオーバーする」「3.売却する」といった選択肢がありましたよね。
2024年から新NISAが始まってもこの選択肢は変わりません。例えば、2019年に一般NISA枠で株式や投信などを購入した人は、2023年末に非課税期間が終了します。その際の選択肢は「特定口座(課税口座)に移管する」「2024年の新NISA枠にロールオーバーする」「売却する」となります(新NISAで対象外となる、レバレッジを効かせている投資信託、上場株式のうち整理銘柄・管理銘柄はロールオーバーできません)。
このうちの一般NISAから新NISAへのロールオーバーは少々複雑です。いくつかの例を挙げてご説明します。
新NISAの枠(122万円)を超えてロールオーバーする場合
一般NISAを利用している人は、新NISAの投資枠(1階と2階を合わせた122万円)を
超えていても全額ロールオーバーすることができます。例えば、2019年に一般NISA枠で投資した株式や株式投信が140万円になった場合でも、すべてロールオーバーできます。
新NISAの枠(122万円)以内でロールオーバーする場合
では、新NISAの投資枠122万円に収まる場合はどうなるでしょうか。
ロールオーバーした分は2階の枠(102万円)から埋めていきます。2階の枠がすべて埋まった場合には、次に1階の枠(20万円)を埋めていきます。
例えば、2019年に投資した株式や株式投信が110万円になった場合、2階の枠102万円を超えるので、1階の枠8万円を使います。それでも1階の枠は12万円残るため、2024年の新NISAでは12万円の範囲内であれば1階で投資ができる、ということになります(1階なのでつみたてNISA対象商品の積み立て限定)。
では、ロールオーバーしても2階の枠(102万円)が残っている場合はどうでしょうか。例えば、80万円分を新NISAにロールオーバーする場合、2階部分は102万円-80万円=22万円残っています。
ここで思い出していただきたいのが、新規資金で新NISAを利用する場合のルール。まず1階を利用してから2階を使う、でしたよね。ですから、この場合も、1階で積み立て投資を行った上で、2階の22万円枠を使うという順番になります。
ただし、個別株だけに投資・2階だけ利用する、という選択をした投資経験者であれば、1階は使わずに2階だけ利用することも可能です。
ジュニアNISAは2023年で終了
最後にジュニアNISAについてです。
ジュニアNISAは2023年の投資枠をもって終了します。それに伴い、2024年1月1日以降はジュニアNISA(または課税未成年口座)で保有する上場株式などについては払い出しが可能になります。
ジュニアNISAの口座を廃止して全額を払い出せば、課税されません(一部だけ払い出すこともできますが、その場合は現行と同じ扱いで、利益に対して課税されます)。
2023年末までに投資した分については成人年齢に達するまでそのまま非課税口座で保有し続けることも可能です。
ここまで、NISAの変更点についてまとめました。新NISAについては少々複雑ですね。
これから投資信託の積み立てで資産形成をしていこうと考える人はシンプルな「つみたてNISA」を利用すればよいのではないでしょうか(非課税期間20年で、新規で投資できる期間も2042年まで確保されています)。それ以上の金額で投信を積み立てる、個別株を買う場合には特定口座を利用する、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を併用する、ということも考えられます。
一方、個別株投資をメインにしている人は、制度が存続する限り、一般NISA・新NISAを活用し続ける(ロールオーバーする)という選択肢もあります。ただし、ロールオーバーには手続きが必要なこと、(ロールオーバー・課税口座への移管時に)取得価額が変わること、損益通算できないことを理解していること、そして、複雑な制度を使いこなす自信があることが前提になるでしょう。
※2020年2月10日時点。「令和2年度税制改正大綱」を基にしており、まだ法案の可決はされていません。内容については変更される可能性があります。制度開始までにオペレーションやシステムなどを鑑み、細かい部分が修正される可能性もあります。
(竹川 美奈子)
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