日経平均のPER約14倍、PBR1.09倍は実態とは異なる?正しい投資判断のために知っておきたいこと
トウシル / 2020年2月27日 5時0分
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日経平均のPER約14倍、PBR1.09倍は実態とは異なる?正しい投資判断のために知っておきたいこと
「加重平均」と「指数ベース」
「日経平均株価(2020年2月25日終値:2万2,605.41円)の予想PER(株価収益率)は約14倍だから米国S&P500指数に比べて割安だ」「日経平均株価は2万1,000円を割れたところに、PBR (株価純資産倍率)1倍の水準があるから、その辺りまで下がったら割安だ」という声も聞こえてきますが、これは、実態を表しているのでしょうか?
ご存知の方も多いかと思いますが、PER、PBRの計算方法は、「加重平均」と「指数ベース」の2種類(日本経済新聞朝刊には、「加重平均」が掲載されている)があり、冒頭のPER約14倍、PBR1倍は、「加重平均」の値です。しかし、私は「加重平均」ではなく、「指数ベース」で見るほうが実態と合っており、適切だと考えています。
冒頭の話を「指数ベース」の値を基にしてお伝えすると、「日経平均株価の予想PERは18倍台だから、米国S&P500指数と同程度で、割安感がある訳ではない」「日経平均株価のPBR1倍の水準は、1万3,500円辺りだから、日経平均株価が2万1,000円を割れても、割安ということにはならない」ということになります。
どういうことなのか、お伝えしていきましょう。
PER、PBRの「加重平均」「指数ベース」の値は、日本経済新聞社の日経平均プロフィルのウェブサイトにて参照することができ、2月25日時点の値は、次のようになっています。
加重平均 | 指数ベース | ||||
---|---|---|---|---|---|
PER | 13.95倍 | 18.33倍 | |||
PBR | 1.09倍 (1株当たり純資産:2万738円) |
1.67倍 (同:1万3,536円) |
|||
注:1株当たり純資産は、日経平均株価÷PBRにて計算 |
「加重平均」と「指数ベース」は、これほどまでに値が異なっています。
ここで、PER、PBRおのおのの「加重平均」「指数ベース」の計算式をみてみましょう。
-----------------------------
PER(加重平均)=時価総額合計÷予想利益合計
PER(指数ベース)=日経平均株価÷日経平均EPS(一株当たり当期純利益)(※1)
※1 日経平均EPS=Σ(予想1株利益×50÷みなし額面)÷除数
-----------------------------
-----------------------------
PBR(加重平均)=時価総額合計÷自己資本合計
PBR(指数ベース)=日経平均株価÷日経平均BPS(1株当たり純資産)(※2)
※2 日経平均BPS=Σ(1株純資産×50÷みなし額面)÷除数
-----------------------------
式で表すと難しく感じるかもしれませんが、ざっくりお伝えすると、「加重平均」は時価総額の大きい銘柄の影響力が大きく、「指数ベース」は日経平均株価に影響を与える銘柄の影響力が大きいことになります。
「指数ベース」の方が実態に近い
日経平均株価の構成銘柄について、日経平均株価に対する影響度合い(構成比率)を見てみましょう。
日経平均株価の構成比率 上位10銘柄(2020年2月25日時点)
順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 構成比率 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 9983 | ファーストリテイリング | 8.99% | ||
2 | 9984 | ソフトバンクグループ | 5.22% | ||
3 | 8035 | 東京エレクトロン | 3.87% | ||
4 | 9433 | KDDI | 3.25% | ||
5 | 6954 | ファナック | 3.11% | ||
6 | 6367 | ダイキン工業 | 2.44% | ||
7 | 4543 | テルモ | 2.31% | ||
8 | 6971 | 京セラ | 2.29% | ||
9 | 4063 | 信越化学工業 | 2.15% | ||
10 | 6098 | リクルートホールディングス | 2.05% | ||
出所:日経平均プロフィル |
ユニクロを展開するファーストリテイリングが、8.99%と断トツの比率となっていて、ソフトバンクグループ、東京エレクトロンと続いています。
次に、日経平均構成銘柄の時価総額を見てみましょう。
日経平均構成銘柄の時価総額上位10銘柄(2020年2月25日時点)
順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 時価総額(百万円) | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 7203 | トヨタ自動車 | 24,713,947 | ||
2 | 9984 | ソフトバンクグループ | 11,410,384 | ||
3 | 9432 | 日本電信電話 | 10,666,708 | ||
4 | 9437 | NTTドコモ | 10,319,205 | ||
5 | 6758 | ソニー | 9,253,953 | ||
6 | 9433 | KDDI | 7,994,139 | ||
7 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 7,555,667 | ||
8 | 6098 | リクルートホールディングス | 7,270,581 | ||
9 | 4519 | 中外製薬 | 6,713,432 | ||
10 | 4502 | 武田薬品工業 | 6,411,044 | ||
出所:楽天証券ウェブサイトのスーパースクリーナーを用いて作成 |
構成比率の上位10銘柄と、時価総額の上位10銘柄で共通している銘柄は3銘柄のみで、かなり異なっています。ちなみに時価総額トップのトヨタ自動車の構成比率は1.21%なので、日経平均株価に対する影響度合いは、ファーストリテイリング(8.99%)の7.4分の1しかありません。一方で、時価総額でみると、トヨタはファーストリテイリング(5,984,678百万円)の4.1倍もあります。
日経平均株価は「加重平均」で算出されているものではなく、ファーストリテイリングの影響が大きいのに、用いるPER、PBRの値が「加重平均」だと、トヨタ自動車の影響が大きいということになり、異なる算出方法の物差しで測っていることになります。
測るとしたら、同じ算出方法の物差しで測る必要があります。日経平均株価の算出方法と同じ「指数ベース」でPERもPBRも見ないと、実態とは異なる判断になってしまうと考えますが、皆さんはどう思いますか?
(白石 定之)
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