中道派バイデン氏躍進で選挙リスク後退も、米株に残る2つのリスク。注目銘柄はマイクロソフト
トウシル / 2020年3月10日 5時10分
![中道派バイデン氏躍進で選挙リスク後退も、米株に残る2つのリスク。注目銘柄はマイクロソフト](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_25882_0-small.jpg)
中道派バイデン氏躍進で選挙リスク後退も、米株に残る2つのリスク。注目銘柄はマイクロソフト
1.最近の米国株式市場
最近の米国株式市場の大きなリスク要因は、米国大統領選と新型コロナウイルスの感染拡大でしたが、足元で原油価格の急落が起きました。主要産油国で構成するOPECプラスが追加減産で合意に至らず、サウジが原油価格の引き下げを決めたためです。
この判断が修正される可能性はありますが、仮に低水準の原油価格が続いた場合、中小のオイル関連企業の資金繰り悪化や、負債のデフォルト化が懸念されます。これが第3のリスクとして浮上していると考えられます。(2020年3月9日時点)
以下で述べますが、米国大統領選のリスクは後退したと考えます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止策による経済のダメージについては、今後発表されるマクロの経済指標や、企業決算発表時の企業コメントを確認したいと考える投資家が多いと考えられます。
こうしたデータから実際の深刻さと、回復までの目途が立たなければ、企業の利益水準の予想が困難だからです。このような時期に起きた原油価格の急落が、米国株式市場の重しになる可能性があります。
2.米国大統領選のリスク
米国大統領選ですが、投資家から最も警戒されていた急進左派のエリザベス・ウォーレン上院議員は、他の候補者との獲得代議員数の差が開き、撤退しました。
また、これまで獲得数に勢いがあったリベラル派のバーニー・サンダース上院議員も、厳しい状況となってきました。先週3月3日のスーパーチューズデーでは、サンダース氏の4勝に対し、ジョー・バイデン前米副大統領は10勝となりました。現地の報道では、これまでの総獲得数でも、バイデン氏がサンダース氏を上回っています。
民主党候補の獲得代議員数
- ジョー・バイデン氏…509
- バーニー・サンダース氏…449
- エリザベス・ウォーレン氏…37
出所:各種資料、取得時期は日本時間2020年3月5日午前10時50分
勝利を収めるには1,991の獲得数が必要であるため、まだ勝負はついていませんが、今後のヤマ場である10日の6州と17日の4州の予備選ではバイデン氏が有利になるかもしれません。
2016年に、サンダース氏は10州のうち代議員数の多い南部フロリダや中西部イリノイ、オハイオでクリントン氏に敗れています。
保険制度改革や富裕層への増税案をうたうサンダース氏の劣勢は、株式市場にとって好材料です。
バイデン氏の躍進を受け、先週の米国株式市場では、医療保険関連の銘柄、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)や、ヒューマナ(HUM)、ETF(上場投資信託)では、SPDR ファンド(XLV)
等が物色されています。同ETFは、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)、メルク(MRK)などで構成されています。
3.新型コロナウイルス感染拡大のリスク
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界規模で人や物の流れが規制されています。
この規制がリセッションにつながる可能性が警戒されていますが、足元では83億ドル規模の緊急予算措置にトランプ大統領が署名するなど、金利の引き下げだけでなく財政面でもサポートする流れが具体的に出てきました。
ただ、リセッションの懸念については完全に後退したわけではないと考えられます。規制によるネガティブな影響が、直接関係する旅行業や、中国にサプライチェーンを置くメーカーの範囲にとどまるのか、それ以外の広い範囲にも広がり消費マインドが低下し雇用環境にまで影響するのか、見極める必要があります。
前者であれば、米国株式市場は上昇トレンドに戻るとみられますが、それを決めるのは今後のマクロの経済指標や、4月下旬から本格化する決算発表における企業コメントでしょう。
今後注目したい経済指標
- 3月16日:3月ニューヨーク連銀製造業景気指数
- 3月17日:2月小売売上高(前月比)
- 3月17日:2月鉱工業生産(前月比)
- 3月18日:FOMC(米連邦公開市場委員会)、終了後政策金利発表
- 3月18日:パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の定例記者会見
出所:楽天証券ウェブサイト
4.マイクロソフトとエヌビディアに注目
原油価格が急落した水準から回復し、新型コロナウイルスの影響が一時的、部分的なものにとどまるというシナリオになれば、S&P500は回復トレンドに入るとみられます。
その場合に最も注目したい銘柄はマイクロソフト(MSFT)とエヌビディア(NVDA)です。
両社に共通している以下の3点を考慮すると、個別銘柄として保有する価値があると考えられます。
1.世界規模で高いシェアをすでに有しており、参入障壁を築いている分野がある
マイクロソフト…オフィス向けソフトウェア
エヌビディア…デスクトップPC用GPU(画像処理半導体)、ノートPC用GPU
2.今後業績をけん引する成長分野がある
マイクロソフト…クラウドサービスの「Azure」が成長中。2019年10-12月期の増収率は62%で、競合のアマゾン・ドット・コムやアルファベットのクラウドサービスよりも増収率が高い。
エヌビディア…データセンター向けが成長中。2019年にデータセンター向けネットワーキング企業「Mellanox」を買収しており、今後はさらにデータセンターを高機能化させる戦略。
エヌビディアのセグメント別売上高推移(単位:百万ドル)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/e/4/-/img_e4a789aba164f55b448360e975b6d3bb17159.png)
3.企業活動に必要なサービスも提供しているため、個人消費が落ち込んだ場合の影響を相対的に緩和できる
マイクロソフト…オフィス向けソフトウェア及びクラウドサービスは企業活動に必要。ソフトウェアに関しては、近年、サブスクリプション型(ユーザーは使用期間に合わせて料金を支払う)への移行が進んでおり、利益の安定成長に寄与している。
エヌビディア…データセンターの需要は高いとみられる。主力のゲームは売上が変動しやすいが、足元ではサブスクリプション型のゲームストリーミングサービス「GeForce NOW」を発表しており、収益の安定化を図る狙いがあるとみられる。
(松村 梨加)
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