外国人が買い?オイルダラーは売り?日本株を支配する外国人売買を徹底研究
トウシル / 2020年4月15日 7時48分
外国人が買い?オイルダラーは売り?日本株を支配する外国人売買を徹底研究
19日の日経平均株価は595円高の1万9,638円。節目と見られている、1万9,500円を超えました。まだ統計は出ていませんが、外国人が買った可能性が高いと思います。今後、外国人はどう動くのでしょうか?
外国人が買えば上がり、売れば下がる日本株
外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売る傾向があるので、短期的な日経平均の動きはほとんど外国人によって決まります。外国人が買い越しの月は日経平均が上昇し、外国人が売り越しの月は日経平均が下落する傾向が、過去30年続きました。
以下に2018年以降の日経平均の動きと、外国人の売買動向を示しています。ご覧いただくとわかる通り、日経平均が高値を取るのは、外国人が買っている時です。日経平均が安値を付けるのは、外国人が売る時です。
日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2018年1月4日~2020年4月14日(外国人売買動向は4月3日まで)
外国人が買っている時、当然ですが、国内投資家は売っていることになります。外国人が売っている時は、国内投資家は買っています。したがって、「国内投資家が日本株を買っている時、日経平均は下がり、国内投資家が日本株を売っている時、日経平均は上がる」とも言えます。
このように、外国人が日本株を動かすようになったのは、1990年代からです。1980年代まで(日経平均が史上最高値・3万8,915円をつけた1989年12月まで)は、日本人が日本株の動きを決めていました。日本株の動きを外国人が決めるようになってから、既に30年が経過しています。
私は、過去25年間、日本株のファンドマネージャーをやってきましたが、外国人売買動向を重視しながら、売買していました。外国人が買う時にいっしょに買い、外国人が売る時にいっしょに売っていれば、大きな間違いをしないで済みました。
ファンドマネージャー時代、その戦略を「コバンザメ戦略」と呼んでいました。ちょっと情けない話ですが、1990年代以降はそれが最も効率的にマーケットの流れを取る手段でした。
4月に入ってから、外国人は買い越し?
コロナ・ショックの暴落を引き起こしたのも、外国人投資家です。2月25日から4月3日まで、外国人は、株式現物と日経平均先物を合わせて3兆9,305億円も日本株を売り越しました。
ただし、4月6日以降、日本株を買い越しに転じている可能性もあります。まだ売買統計は出ていませんが、日経平均1万9,500円超えを演出したのが外国人だった可能性はあります。
ただし、外国人がこれで買いトレンドに入ったとは考えられません。しばらく、外国人は売ったり買ったり、はっきりとした方向感のない売り買いになると考えています。どういう外国人が買い、どういう外国人が売るでしょうか?あくまでも推定ですが、私は以下のように考えています。
しばらく買うと予想される外国人マネー
【1】日経平均先物主体に動く短期マネー
4月3日時点で、裁定売り残高は1兆6,045億円、裁定買い残高は6,466億円です。詳しい説明は割愛しますが、裁定残高を見ると、投機筋の先物売り建てが、先物買い建てよりも、1兆円近く大きいと推定されます。日経平均先物を売り建てている投機マネーには、外国人が多いと考えられます。
3月19日に1万6,552円まで下がった日経平均は、4月14日に1万9,638円まで急反発しています。先物を空売りしている投機筋は、日経平均の急反発で踏み上げに合っていることになります。これ以上、損失が拡大しないよう、今後は買い戻しを急ぐ可能性もあります。
【2】恐怖指数が上昇すると売り、恐怖指数が低下すると買うマネー
恐怖指数を見ながら株式などリスク資産の組入比率を上げ下げするようにプログラムされた投資マネーが、現在、世界中にたくさんあると推定されます(リスク・パリティ戦略と呼ばれる)。やり方は、ファンドごとに異なりますが、総じて、恐怖指数が上昇すると株を売り、恐怖指数が低下すると株を買うようにプラグラムされています。
3月19日まで恐怖指数が急上昇する中、リスク・パリティ戦略をとる投機資金は、株式をどんどん売ってきたと考えられます。ただし、3月19日以降は、恐怖指数は徐々に低下してきています。リスク・パリティ戦略による株式の売りは、もう出にくくなっていると考えられます。ここからさらに恐怖指数が低下すれば、買いに転じる可能性もあります。
日本株で「恐怖指数」と呼ばれている指数は存在しませんが、日本経済新聞社が計測して発表している日経VI(ボラティリティ・インデックス)が、事実上の恐怖指数です。以下のように推移しています。
日経平均と日経VI(ボラティリティー・インデックス)推移:2018年1月4日~20年4月14日
売る可能性のある外国人マネー
オイルダラー
中東産油国は、国家予算の一部で毎年、金融資産に投資しています。日本株にも投資しています。通常は、安定的な買い主体となっています。
ただし、原油が急落した時には、日本株などの保有金融資産を売りにくることがあります。原油の下げ幅がさほど大きくなければ株を売ることはありませんが、急激に大きく下げた時は、国家収入(原油輸出代金)が減るのを補うために、金融資産を売ることもあります。
たとえば、2016年がそうです。原油価格急落を受けて、日本株に中東産油国の国家ファンドから、大口の売りが出ました。
コロナ・ショックでも、原油は急激に大きく下げました。年初1バレル60ドル前後で推移していたWTI原油先物(期近)は、4月13日には22.41ドルまで下落しました。たった3カ月で3分の1近くになる暴落です。
OPEC・非OPECの産油国は13日、原油価格の引き上げをはかるため、世界生産の1割に当たる日量970万バレルの協調減産で合意しました。ただし、世界の原油需要は、コロナ・ショックで、現時点で日量2,000万バレル以上減っている可能性があります。
結果的に、世界で原油在庫は増加を続けています。協調減産しても、すぐには原油価格の立て直しはできないと考えられます。こうした環境下、オイルダラーが日本株を売ってくる可能性は否定できません
外国人の売買動向を知るには、どうしたら良いか?
相場は予想するよりも、ついていく方が安全です。私がファンドマネージャーの時は、「予想しないでついていく」が鉄則でした。何についていくかと言えば、外国人です。外国人が買ったら買い、売ったら売る「コバンザメ戦略」が一番安全です。
それでは、外国人の動きを知るにはどうしたら良いでしょうか? 売買統計が出るには約1週間のタイムラグがあります。1週間たってから知っても遅すぎます。場の動きを見ながら、外国人が今、売っているか買っているか、推測するしかありません。それで、外国人の動きについていくのが、私のファンドマネージャー時代の基本戦略でした。
たとえば、日経平均が1日で500円以上、上がるのは、たいてい外国人の手口です。国内投資家はそんな荒い買い方はしません(例外はあります)。外国人好みの銘柄、外資系証券アナリストの推奨銘柄が勢いよく上がっている時も、外国人の買いの可能性があります。
私がファンドマネージャーの時は、相場つきや経験則から、外国人の売買を推測しながら、それについていくことを心掛けていました。
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