平均利回り5.6%、18期以上連続増配銘柄。ディフェンシブ、財務体質良好で買い安心感
トウシル / 2020年5月7日 11時49分
平均利回り5.6%、18期以上連続増配銘柄。ディフェンシブ、財務体質良好で買い安心感
米国の経済活動再開期待などを主因に4カ月ぶり反発
4月の日経平均株価は6.7%の上昇と、4カ月ぶりに反発しました。利食い売りが先行したのちは下げ渋り、25日移動平均線を突破以降は1万9,000~2万円のボックス相場となりました。
2万円の大台を前に上値が重くなる場面もありましたが、月末には3月9日以来の大台回復を果たしています。コロナショックによる急落が始まる直前の2月21日から3月19日安値までの下げ幅に対して、54.6%の戻りとなっています。
新型コロナウイルスの影響による米国経済の急激な悪化観測が高まったことで、月初は売りが先行しました。ただ、新型コロナウイルスによるNYの1日当たり死者数が減少に転じたことをきっかけに、その後は欧米での感染者拡大ペースの鈍化が意識されることとなりました。
米国の早期経済活動再開期待、中国経済指標の想定以上の回復、海外半導体関連企業の好決算発表などが下支えとなる一方、原油先物価格が史上初のマイナス圏に落ち込むなどで、月後半にかけて一進一退の動きが続きましたが、新型コロナウイルス治療薬として期待されるレムデシビルの良好な臨床試験結果を受け、月末にかけ高値引けとなった形です。
個別では、引き続きウイルス対策関連銘柄に関心が集まりました。治療薬やワクチン開発に関連する銘柄、外出自粛による内食化進行で宅配会社やスーパーなどの銘柄が買われましたが、先行して買われたマスク関連銘柄などには手じまい売りが優勢となりました。
また、2月期、3月期の決算発表も本格化しました。好調な決算を発表する銘柄はストレートに安心感が強まった一方、業績下振れ銘柄も悪材料出尽くしと捉えられるものも多かった印象です。
なお、想定通りですが、新年度の業績予想を非開示とする銘柄が多くなっています。
緊急事態宣言長期化は日本株の相対パフォーマンス低下に
当初5月6日までとされた緊急事態宣言は延長されました。
日経平均がいったん2万円の大台を回復した中で、さらなる経済活動の停滞を警戒視する動きは強まりそうです。政治への不信感が一段と強まりそうなことも、株式市場にはネガティブな影響を与えるでしょう。
一方、欧米では経済活動の再開に向けたスタンスが強まっており、金融緩和や景気刺激策による好影響を織り込む動きは今後も継続する公算です。これは日本株にとっても支援材料となりますが、相対的にパフォーマンスは低調となる可能性が高そうです。
今回の2020年3月期決算発表では、ガイダンスが非開示となる銘柄が多く、公表時期は第1四半期決算発表前後が多くなると考えられます。そのため、第1四半期決算発表が本格化する7~8月にかけては、あらためて業績水準低下に対する警戒感が強まる場面も到来するでしょう。
決算発表一巡後は、売り込まれた銘柄のリバウンドよりも、2021年3月期の増益ガイダンス発表銘柄をあらためて物色する流れが強まりやすいと考えます。
自粛要請が長期化しそうな外食産業、観光産業などはとりわけ、株価の低迷状態も長引く見通しです。新型コロナウイルス感染拡大が今後も警戒される新興国関連銘柄なども先行き不安は残りそうです。一方、世界的に経済回復ペースが速まりそうな中国関連銘柄などは選別物色の対象となり得るでしょう。また、原油相場の水準が大きく低下していることから、電力や化学、ゴム製品、海運など原油安メリット銘柄の見直し余地も大きいと判断します。
連続増配実施銘柄には現状で安心感が強まりやすい
2020年3月期の決算発表が本格化しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響が不透明な中、ここまでのところ、新年度の業績見通しや配当予想を非開示とする企業が例年になく多くなっている印象があります。
大半の企業が厳しい環境に置かれている状況にあり、2020年3月期と比べて、2021年3月期は業績が悪化し、それに伴って減配を余儀なくされる銘柄が多くなると考えられます。こうした事態が鮮明化するのは4-6月期の決算発表前後になるとみられ、当面は配当に関して不透明感が強まる状況でしょう。
このような中、減配の可能性が相対的に低いとみられる銘柄として、連続増配実施企業が挙げられます。連続増配を行っている銘柄は、経営者の増配に対する拘りが強いとみられる他、経済環境の変化に対応して業績を安定的に伸ばしているということもできるでしょう。
平均利回り5.6%、18期以上連続増配銘柄
下表は、これまで18期以上連続で増配を行っている銘柄群になります。ちなみに、2020年3月期は、配当が現在の会社計画通りに実施されることを前提にしています。
直近2~3年を振り返っても、15期以上増配を行っていた銘柄で連続増配が途切れた銘柄は極めて少ない状況です。2021年3月期は全般的に企業収益の悪化が見込まれ、増配アナウンスにはポジティブインパクトが強まりやすいと考えられます。
下表の銘柄は総じてディフェンシブ性が強いものが多くなっており、財務体質も良好とみられることから、増配傾向維持の可能性は十分と捉えられるものが多い印象です。
18期以上連続増配を行っている銘柄(4月30日時点)
コード | 銘柄名 | 配当 利回り |
4月末 終値 |
時価 総額 |
連続 増配 期間 |
決算期 | 実績 配当金 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4452 | 花王 | 1.73 | 8,316 | 40,083 | 30期 | 2019.12 | 130.0 |
7466 | SPK | 9.51 | 1,315 | 137 | 22期 | 2020.3 | 72.0 |
4967 | 小林製薬 | 1.11 | 9,940 | 8,155 | 21期 | 2019.12 | 73.0 |
8593 | 三菱UFJリース | 11.56 | 519 | 4,649 | 21期 | 2020.3 | 25.0 |
4732 | USS | 4.09 | 1,710 | 5,356 | 20期 | 2020.3 | 55.4 |
配当利回り平均(%) | 5.60 | ||||||
注:連続増配期間には20.3期(予)含む、決算期が20.3期の実績配当金は予想ベース 注:配当利回りは実績配当金(20.3期は予想配当金)ベース |
※配当利回りは会社予想、単位は%。時価総額の単位は億円。4月末終値、実績配当金の単位は円。
1 花王(4452・東証1部)
▼どんな銘柄?
化粧品事業、スキンケア・ヘアケア事業、生理用品や紙おむつなどのヒューマンヘルスケア事業、衣料用・食器用洗剤などのファブリック&ホームケア事業、油脂製品や機能材料製品などのケミカル事業が主力事業となっています。
「Curel」「KANEBO」「SOFINA」「ビオレ」「ブローネ」「ロリエ」「メリーズ」など多くの著名ブランドを展開しています。トイレタリーでは国内トップの位置づけとなります。
▼業績見通し
2020年12月期第1四半期営業利益は393億円で前年同期比2.8%増益となり、通期見通しは2,200~2,300億円のレンジ予想で、前期比1ケタの増益を計画しています。第1四半期業績は、インバウンド需要の減少、外出自粛要請の影響で、化粧品事業が伸び悩みましたが、他の事業は増益をキープする形となっています。
中国市場の回復、衛生用品の需要増加、原材料費の低下などで、通期増益計画達成の可能性は十分にあるとみられます。
▼ここがポイント
前期までで30期連続での増配を実施、2020年12月期も増配となる140円を計画しています。日本のトイレタリー市場は、衛生関連製品の需要拡大で1-3月期も市場を拡大させており、計画比減配の可能性は現状では低いと判断できるでしょう。
今後は第1四半期決算時に発表されなかった自社株買いの実施が注目材料となります。
2 SPK(7466・東証1部)
▼どんな銘柄?
自動車部品の専門商社で、国内では業界トップの実績です。クラッチ、ブレーキ、電装品などの機能部品、車検パーツなどを取り扱い、自社ブランドも展開しています。取扱点数は約3万点、国内販売先は1,500社以上で、海外も80カ国、300社に輸出しています。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は19.4億円で前期比1.0%増益、ほぼ期初計画の水準を達成しています。国内販売が堅調に推移した他、アジアがけん引する格好で海外販売も伸長しています。連続最高益更新も続けることとなっています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響が不透明として、2021年3月期業績計画は開示していませんが、1-3月期も堅調な推移となっていることで、大きく落ち込む懸念も乏しいと考えられます。
▼ここがポイント
2020年3月期の配当性向23.3%から鑑みて、今後の増配余地も大きいと考えられます。現在の事業環境下でも、増配傾向がストップする可能性は低いとみます。
株式の流動性が乏しい点はネックとなりますが、今後、アナリストのカバレッジが拡大することにより、連続増益・増配基調への評価が高まることとなれば、割安なバリュエーション水準の底上げも期待されるでしょう。
3 小林製薬(4967・東証1部)
▼どんな銘柄?
医薬品、オーラルケア、スキンケア、栄養補助食品、衛生雑貨品、芳香消臭剤など幅広い領域において製品を提供しています。「“あったらいいな”をカタチにする」をスローガンとして、ニッチな製品開発に定評があります。
新製品の4年寄与率は2018年12月期にかけて20%台の推移となっていました。M&A展開などにも積極的です。
▼業績見通し
2020年12月期第1四半期営業利益は48.7億円で前年同期比5.3%減益ですが、会計基準変更の影響があり、実質的には同9.1%の増益となっています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響でインバウンド向け売上高が減少したものの、マスク、のどスプレー、メガネふきなど特需が発生した製品も多く、除菌・衛生関連製品が下支えになっています。
通期業績予想は264億円で前期比2.9%増益、4期連続増益となる計画です。
▼ここがポイント
同社の高い製品開発力は、未知のウイルスに対する対策ニーズが高まる中にあって、強みを発揮するものとみられます。今後も折に触れて、新製品開発やヒット商品の登場が株価の刺激材料につながる可能性が高いでしょう。
当面はインバウンド需要の停滞が懸念されますが、いち早く景気回復が期待される中国向けなどには、越境EC販売の拡大なども想定されます。
4 三菱UFJリース(8593・東証1部)
▼どんな銘柄?
リース業界の大手企業で、営業資産残高は5兆円強の水準になっています。国内・海外カスタマービジネス、航空事業、不動産事業、ロジスティック事業、環境・エネルギー事業、ヘルスケア事業、インフラ・企業投資事業が主要セグメントとなっています。
3月に発表した2023年3月期までの中期計画では、当期利益850億円以上、配当性向30%台継続などを掲げています。
▼業績見通し
2020年3月期第3四半期累計営業利益は789億円で前年同期比36.2%増と大幅増益、通期計画1,780億円、前期比12.4%増に対して順調な進捗となっています。不動産や航空関連などの売却益増加による粗利益の増加が増益決算の主因となります。
その他全セグメントで部門利益は増加しています。会社側の通期計画においては、第4四半期での貸し倒れ関連費用なども見込んでいるもようです。
一方、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大している中、2021年3月期業績はやや不透明感が残ります。
▼ここがポイント
世界景気悪化に伴う先行き懸念から、足元の株価の戻りは相対的に鈍い状況となっています。一定程度は2021年3月期の業績悪化は織り込まれている状況といえるでしょう。
新しい中期計画での取り組みとしては、ZMPと事業提携して開始した自動運転実証実験プラットフォームのシェアリング事業、新たに参入したホテル運営ビジネスなどが注目されます。
5 USS(4732・東証1部)
▼どんな銘柄?
中古車オークション会場運営のトップ企業で、全国に19会場を有しています。市場シェアは2018年実績で約40%です。
会員数は、現車オークション会員48,886社、衛星TVオークション会員2,404社、インターネット会員31,983社、中古自動車買い取り店157店舗などとなっています。
2019年3月期実績で出品台数は約293万台、成約台数は約182万台です。また、中古車買い取り専門店も手掛けています。
▼業績見通し
2020年3月期第3四半期累計営業利益は267億円で前年同期比1.3%減益となっています。通期計画は370億円で前期比0.3%減益の見通しです。オートオークションにおける成約率の低下で、オークション手数料が減少していることが減益決算の背景です。
3月にかけては成約台数の前年比減少率が拡大しており、通期予想達成にはやや不透明感も残る形とみられます。
▼ここがポイント
株式上場以来連続増配を続けていますが、2020年3月期からは連結配当性向を50%から55%に引き上げています。安定的な増配傾向とともに、機動的な自己株式の取得も行っており、株主還元意識の高さがうかがい知れます。
また、今後は景気悪化による個人消費マインドの低下によって、新車から中古車への需要シフトの動きなどが注目ポイントとなってくるでしょう。
(佐藤 勝己)
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