株価は悪影響を織込み済みか。銘柄選びのポイントと投資戦略
トウシル / 2020年5月7日 14時21分
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株価は悪影響を織込み済みか。銘柄選びのポイントと投資戦略
一時2万円を回復した日経平均株価。コロナ・ショックは終わり上昇か、もしくは更なる下落になるのか。今後あり得るシナリオと投資戦略を考えてみたいと思います。
日本株もバブル再開なのか?
コロナ・ショックの株価急落により、日経平均株価は1月17日の2万4,115円95銭から、3月19日の1万6,358円19銭に下落。率にして32.2%の下落となりました。実質的には1カ月弱で30%の下落です。
その後は反発に転じ、4月30日には2万365円89銭まで上昇、下げ幅の半値戻しの水準にまで達しました。
ここからの株価の見通しとして、「日本株は再びバブルになり株価上昇が続く」という見方がある一方で、「二番底をつけにいく」とか「世界大恐慌に匹敵する株価下落になる」という意見もあり、専門家の間でも見解が分かれています。
果たして日本株はバブル再開となるのか? それとも再び下落に転じるのか? 筆者は将来を予想しても当たらないので、予想はしません。その代わり、今後考えられるシナリオと、それを受けての中期的な戦略を考えてみたいと思います。
金融緩和と実体経済の綱引き
バブル再開論を唱える人の根拠は、コロナ・ショックにより各国が実施したさらなる金融緩和です。
もともと世界中で金融緩和が行われていてバブルになっていたところ、コロナ・ショックをきっかけにさらに追加的な金融緩和が実施されることになります。
一方、実体経済はボロボロです。1-3月期のGDP(国内総生産)は世界各国でリーマン・ショック以来の大幅なマイナスとなりましたが、実際にロックダウン等により経済に悪影響が現れたのは3月からです。
もし4月以降も経済が動かない状態が続くのであれば、4-6月期のGDPはとんでもなく悪い数字が出てくるはずです。
このように、金融緩和に注目する人は株価上昇やバブルを予想し、実体経済に着目する人はさらなる景気悪化やそれに伴う株価下落に警戒している、というのが実情です。
株価はどこまで織り込んでいるのか
金融緩和と実体経済の綱引きにより、株価がどう動くか決まってくると思われます。ここでポイントとなるのが、株価はいったい実体経済や企業業績悪化につきどのくらい織り込んでいるのか、という点です。
現在進行中の3月決算企業の2020年3月期本決算では、航空業界や飲食業など、厳しい決算が相次いでいますが、株価はあまり反応せず、ここ最近は逆に決算内容が悪くても株価が上昇するケースも目立ちます。
つまり、2020年3月期の業績が悪化していることはすでに織り込んでいることになります。
実は、4月から始まっている2021年3月期の業績については、多くの会社がコロナウイルスの影響を読めないとして、業績予想の発表を取りやめています。
このため、現時点では2021年3月期の業績については、株価に織り込んでいないと思われます。
現状のような経済活動のストップがこれからも続けば、第1四半期の業績は非常に厳しい内容となるでしょう。この情報が明るみに出たとき、株価へのマイナスインパクトは相当あるのではないかと個人的には危惧しています。
おそらく景気は当面回復しない
筆者は、コロナウイルスの影響で大きく悪化した景気は、仕事を失ったり、貯金を取り崩したりしている人が大勢いるため短期間で回復することは難しいと考えています。
彼らは、もし経済が正常化に向かい、給料や報酬といったお金を再び得られるようになったとしても、それを全額消費に充てることはしないでしょう。ある程度の貯蓄や借金返済を優先することになるはずです。
その結果、世界全体でみても消費の落ち込みは当分の間続き、景気回復までも時間がかかるものと予想されます。
一方で、金融緩和が派手に行われており、景気悪化が続くからといって株価も下がるかどうかは分からない、という点があります。
そのため、今後の株価がどうなるかとか、業績がどうなるか予想することよりも、実際の株価の動き、トレンドについていくのが最も無難で安全なのではないかと筆者は感じています。
ただ、株価が上昇トレンドにある銘柄なら何を買ってもよい、というわけではありません。
足元では、明らかに当面の間業績が大きく落ち込むであろう銘柄であっても、リバウンドで上昇を続けています。しかしそうした銘柄は、4-6月期の業績がものすごく悪い数値になりそうだということが分かれば、再び株価も大きく下落する恐れがあります。
もちろん、そうした業績悪化も全て織り込んでいる可能性もゼロではないので、ある程度の金額は上昇トレンドである限りは持ち続けて良いと思います。
ただし、そのような業績悪化が明らかな銘柄に偏り過ぎてしまうと、予想以上の悪化により株価が急落したとき、ダメージが大きくなってしまいます。
筆者であれば、業績悪化銘柄の底打ちを期待した買いも多少狙いますが、基本は好業績の銘柄を中心に今のところは投資しています。
もし、4-6月期の決算内容がボロボロであるにもかかわらず、株価が下がらないのであれば、最悪の結果すらも織り込んだと判断して、そこからは業績悪化銘柄についても買い目線に切り替えてもよいのではないか、というのが筆者の考えです。
長期的にはインフレ進行も頭にいれておく必要
最後に懸念点を一つお伝えします。現状は、いくら金融緩和しても、インフレになるどころか、逆にデフレが続くような状態になっていますが、今回のコロナウイルスの影響により、国民に対しかなりのお金が支給されることになります。
これによるマーケットへの影響はまだ分かりませんが、今回の政府の「バラマキ」をきっかけとして、インフレに転じる可能性も頭の中に入れておいたほうが良いと感じます。
もちろん、現時点ではその兆候はありませんから、「インフレになる!」と決めつけて行動するのは早すぎます。しかし、インフレの兆候がはっきりと表れたなら、インフレに負けない資産運用をする必要があります。
一般に、株式投資はインフレに強いとされています。あまりに急速な進行だと株価も下がる可能性が高いですが、もしインフレになったとしても、株式に投資していれば、株価の上昇によりお金の価値の減少をカバーできるのではないかと思います。
そしてより大きな投資成果を望むのであれば、投資候補となる企業の選定、および業績のチェックについては、定期的に行っていきましょう。
(足立 武志)
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