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景気後退から資産を守る6つの指標

トウシル / 2017年9月28日 15時0分

景気後退から資産を守る6つの指標

景気後退から資産を守る6つの指標

景気後退期の6つの兆候

景気後退期の6つの兆候は以下の通りである。

(1)全雇用に近い労働市場


米国の失業率1996年~2017年

出所:石原順

 

(2)バブル的な資産価格の上昇

グリーンストリート商業用不動産価格指数(1997年12月~2016年2月)

「金融危機前の2007年の不動産価格のピークを越えている不動産市場だが、現在の価格は正当で持続可能だという楽観論で泡立っている」

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載

 

(3)中央銀行の金融引き締めFF金利の推移 

1955年~2017年 中銀がこれまで同様に金融市場を支えることはなくなる?

出所:セントルイス連銀

 

(4)イールドカーブのフラット化

S&P500と米国のイールドカーブ

イールドカーブは右肩上がりが基本だが、イールドカーブがフラット化してくると、米国の株式市場に転機が訪れる。前回のフラット化は2007年。

出所:ストックチャーツ

 

(5)総楽観と低いボラティリティ

VIX指数

底打ちから1年以内が危ない・・・。

出所:セントルイス連銀

 

(6)資産間の相関性の低下

世界相関指数の推移

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載

「ダブルライン・キャピタルの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のガンドラック氏は今月、高リスク証券を保有するトレーダーらは徐々に「出口に向かう」べきだと述べた。ブリッジ・ウォーター・アソシエーツ創業者のダリオ氏は21日、戦術的にリスクを減らしていると言明。世界的な大衆迎合主義の台頭が既存の対立を悪化させる中で、「どちらかが倒れるまで戦う確率が和解する確率より高くなっている」と警告し、現在の経済および社会の分断を1937年当時の状況に例えた」(出所:2017年8月28日ブルームバーグ『ダリオ氏もガンドラック氏も警告、リスク資産は高過ぎ-同調者増える』)と、運用界の両巨頭が警鐘を鳴らしているが、今の米国には、景気後退の6つの兆候がすべて出ていると言えるだろう。

 9月26日にイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「FOMC(米連邦公開市場委員会)ゆっくりし過ぎないよう注意すべき」、「緩和政策の長期化は金融の安定を損ないかねない」、「インフレ2%達成まで政策据え置くのは賢明ではない」と利上げに前のめりな姿勢を示し、景気過熱のリスクから物価が上がらなくても段階的利上げの継続が必要という認識を示した。

 レイ・ダリオは、「中銀がこれまで同様に金融市場を支えることはなくなるだろう」と予想している。「投資家としては今のところ踊り続ければいいが、宴会会場の出口に近づき、先行きをよく読むことだ」(「中銀が刺激策繰り出す時代は終わる、宴会会場出口に近づけ-ダリオ氏」7月7日ブルームバーグ)と、バブル的な宴会が終わりに近いという認識をもっている。

 景気循環のメカニズムについては、『30分で判る経済の仕組み』(レイ・ダリオ)を参照されたい。

「30分で判る経済の仕組み」レイ・ダリオ ブリッジウォーター

出所:「30分で判る経済の仕組み」レイ・ダリオ 

 

事実上の無党派になったトランプの経済運営

 さて、景気拡大期が99カ月(過去の平均は58カ月)も続いている米国では、現在、上記のような景気後退の兆候が表れている。

 現在、運用者の間で議論となっているのは、そうしたなかで、トランプが経済政策をうまく進められるか否かである。

「トランプ氏は実質的には独立候補として大統領選に立候補したのだ。彼は大統領選で、必要な時だけ共和党のシステムを利用した。特に選挙活動のインフラ代わりに使った。だが、共和党の議会指導者はトランプ氏を好まず、彼も共和党の指導者を気に入らなかった。トランプ氏は大統領就任式の演説で、党のことなどお構いなしで、ワシントンの権力構造のすべてを攻撃した。彼は共和党議会指導部から、新たな医療保険プランと減税を早急に実現するとともに、年末までに超党派によるインフラ支出支援の道を開くとの確約を得た。ところがその取り組みは不調に終わり、トランプ氏は当惑し、激高した。それもあって、彼はハリケーン被害の復興支援と短期のつなぎ予算の問題で、一転して民主党と手を結ぶ決断をした」(出所:2017年9月12日ウォールストリートジャーナル『トランプ氏はなぜ共和党と決別したのか』)と報道されているトランプだが、現在、トランプは事実上の無党派のような格好となっている。

 オバマケア改廃案が通らず財源が確保できないなかで、トランプは法人税減税や中間所得層の大幅減税を打ち出しているが、財政の縮小をめざす共和党の自由議員連盟(ティーパーティー)をはじめとする保守派は強烈に反対するだろう。トランプが民主党と組んだことに対し、共和党内からは反発が出ている。

 共和党内のティーパーティーの反対で、トランプは選挙公約で掲げていた経済政策が何も進まず、このままではトランプ政権が瓦解し相場の急落や金融危機に発展する可能性があると思われていた。しかし、トランプは民主党と組むことで債務上限問題を先送りし、今回、税制改革法案を出してきた。

 トランプが選挙公約で掲げた大盤振る舞いの政策が実現させるには、相場の暴落が必要である。相場が暴落すればトランプの政策は通りやすくなる。トランプとしては、「相場暴落の原因はイエレンのFRBが金利を上げているから」だと言えばいい。イエレンも相場が暴落したのはトランプの政権運営の失敗のせいにすればいいだろう。トランプとFRBは双方がスケープゴートになっているのである。そうしたオプションをトランプは隠し持っている。

 だが、今回、トランプが民主党とも組む(トランプは90年代までは民主党員だった)という戦法に出たことで、「トランプは中間選挙までバブルを温存(延命)するつもりのようだ」という見方をする運用者が増えている。税制改革(法人税20%と中産層の減税)が出来るかどうかはわからないが、債務上限問題の先送りによって、「とりあえず懸念されていた株価や債券の急落という事態も先送りされた」と運用者の多くが感じているようだ。


イエレンは金融正常化志向も来年以降の道筋は描けず…

 イエレンFRB議長は9月26日の講演で、「物価が上がらなくても利上げの継続が必要」と、金融正常化を粛々と行なっていく決意を見せた。26日のイエレン講演以降、ドル高相場が進行している。

 ただ、来年以降の金利見通しを誰も描けていない。本日は日本時間の23時からスタンレー・フィッシャーFRB 副議長の講演が予定されているが、影のFRB議長フィッシャーは既に辞任を表明しており、イエレンFRB議長も来年2月までの任期である。トランプは、これからFOMCの投票権を持つメンバーのうち5人を選択できる立場にあるが、トランプが中間選挙に向けてバブルを温存する腹積もりなら、米国の利上げはごく限られたものとなるだろう。

 通貨市場ではポンド高やユーロ高でクロス円相場の円安トレンド相場が続いていたが、9月26日のイエレン講演後は調整相場に移行している。ここからはランダムな展開の調整相場となりそうだ。


ドル/円(日足) 

トレンドの発生ポイント(ADX(8)、ADX(14)、標準偏差ボラティリティ(26)の3本のライン(ADX14と標準偏差26の2本でも可)が一緒に上がっている局面) 上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R 中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14) 下段:新値3本足のシグナル 出所:MT4


ポンド/ドル(日足)

トレンドの発生ポイント(ADX(8)、ADX(14)、標準偏差ボラティリティ(26)の3本のライン(ADX14と標準偏差26の2本でも可)が一緒に上がっている局面) 上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R 中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14) 下段:新値3本足のシグナル
出所:MT4


ポンド/円(日足)

トレンドの発生ポイント(ADX(8)、ADX(14)、標準偏差ボラティリティ(26)の3本のライン(ADX14と標準偏差26の2本でも可)が一緒に上がっている局面) 上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R 中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14) 下段:新値3本足のシグナル
出所:MT4

(石原 順)

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