コロナ波と景気の波の時間軸
トウシル / 2020年5月27日 15時36分
![コロナ波と景気の波の時間軸](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_27018_0-small.jpg)
コロナ波と景気の波の時間軸
米中対立が激化していますが、経済活動再開への期待の方が大きいためドル/円、クロス円とも円安気味で推移しています。特にユーロ/円はEU(欧州連合)復興基金創設への期待で118円に乗せ、ドル/円の108円台乗せをけん引しました。その後、ユーロ/円、ドル/円とも失速しましたが、独仏によるEU復興基金創設の提案は、ドイツが一歩踏み込んだ驚きのニュースでした。この報道直後のユーロ高は二日で終わりましたが、今週に入ってユーロ、ユーロ/円は再び上昇し始めています。
ドル/円は、1ドル=108円台に乗りましたが滞空時間は短く、この1週間はほとんど107円台半ばから108円の狭いレンジで推移しています。為替の動きに反して、株式市場は活況が続いています。ワクチン開発や経済活動再開への期待が大きな推進力となっているようです。
ドル/円が動いていない間に、今後のシナリオを想定してみました。為替予想の前提となるコロナの感染ペースと景気の波がどのような時間軸で推移していくのかを考えてみました。WHO(世界保健機関)や感染症の専門家たちの話を参考にしながら、想定したシナリオは次の通りです。
- 新型コロナウイルスが1年後に地球上から完全になくなっているとは考えにくい。
- 新型コロナウイルスが地球上から完全になくなる世界ではなく、人が新型コロナウイルスと共存する世界になる。
- 共存条件として、(1)ワクチン開発、(2)人口の相当数が感染し集団免疫を持つこと、(3)人々の行動様式や社会の在り方を変えることが必要。
- ワクチン開発には1年以上かかると想定し、ワクチン開発までは、コロナウイルスの感染拡大は、第2波、場合によっては第3波が来ると予想。
- 感染の波の時間軸は、5月末頃から収束し始め、7月に鎮まるが、冬場を迎え年末に第2波到来。第2波は3月にピークに達し、第1波よりも感染被害が大きくなることも想定。
ワクチンが来年の4月、5月頃に開発されれば、コロナウイルスは収束するが、ワクチン開発が遅れれば、第3波が到来する可能性が高まると予想。 - 景気は第2波、第3波を警戒しながら、『感染拡大→外出規制→経済停滞→感染ペース鈍化→規制解除・経済再活動→感染拡大→外出規制→…』と循環し、L字停滞が予想される。停滞の中で景気は小規模に上げ下げを繰り返す状況が長引くと予想される。
つまり、経済活動は再開されてもコロナ前の状態を下回り、これまでの生産活動や消費が元に戻るには相当時間がかかり、数年から最悪10年以上かかることも想定。
また、停滞の間に社会スタイル、経済スタイルは変革され、新たなコロナウイルスと共生しながら持続性のある社会に変革していくことが想定される。
このような時間軸の中で、株は、景気が戻らず企業業績悪化、景気悪化を実感することによって早期回復への期待が剥落し、じりじりと下落することが予想されます。ドル/円は株価の動きをにらみながら、FRB(米連邦準備制度理事会)の超金融緩和を背景にじりじりと下落することが予想されます。ただし、世界的に物価が下落していくことから、日本のみがデフレだった時のような80円、70円には至らないと予想されます。
以上のシナリオはあくまでひとつの考え方です。みなさんもこのシナリオを参考にして考えてみて下さい。
米中対立に欧州参戦
さて、コロナ感染と景気の波の時間軸は中長期的なシナリオですが、足元では最大の政治要因である米中関係が重要要因として控えています。
新型コロナウイルスの感染第1波と第2波の間で米中対立は更に激化することが予想されます。米国では11月の大統領選挙を控え、共和党も一丸となって感染拡大の影響を中国に責任転嫁し、中国への制裁を強化しています。
中国は、マスク外交によってこの機に中国覇権の姿勢を強めてきており、最近では「戦狼外交」という高圧的な態度で中国を批判する国家を批判しています。「戦狼外交」は世界各国で批判が高まってきており、国内でも得策ではないとの意見が出始めています。
しかし、全人代で経済成長目標を見送るなど、中国の経済もよい状況ではないため外交ではますます強気で臨んできそうです。
中国の高圧的な外交姿勢に対して、最近ではフランスやドイツが批判を強めてきています。米中対立に欧州も加わると、米中の二国間の覇権対立ではなく、「欧米vs中国」と世界が分断される構図になるかもしれません。
しかし、欧州の中でもイタリア・ポルトガル・ギリシャなどは中国の外交攻勢も強く、それらの国は中国寄りになっているため、中国への対応は分かれる可能性があります。
ドイツ・フランスを中心とした北部欧州とイタリア・ポルトガル・ギリシャを中心とした南部欧州の中国に対する対応が分かれると、欧州が加わった米中対立は「欧米vs欧中」になることも考えられます。
欧州の南北分裂はEU復興基金創設にも影響し、北部欧州の中でも反対しているオランダやオーストリアとの調整が難航すると、欧州全体にとってはかなり深刻な問題になる可能性があります。
世界は分断され、欧州も分断されるとなるとかなり複雑な政治状況となり、株式、金融市場にとってはマイナス材料となりそうです。今後は米中対立問題を見るときに、欧州の動向にも注目していく必要がありそうです。
(ハッサク)
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