PERとPBRは何倍がいいの?株価指標の見方と注意点
トウシル / 2020年6月4日 5時10分
株価指標を使いこなすには?
今回のテーマは「PER」や「PBR」と呼ばれる株価指標についてです。
すでに「日頃からチェックしているよ」という投資家の方も多いと思いますが、日本語でPERは「株価収益率」、PBRは「株価純資産倍率」といいます。ちなみに、PERはPrice Earnings Ratio、PBRはPrice Book-value Ratioの頭文字をとっています。
PERとPBRは株式投資に関わる上でかなり馴染みの深い指標です。マーケット関連の新聞や雑誌、テレビ、ウェブサイトなどのメディアでも頻繁に登場し、「この銘柄の株価はPERが〇倍なので割高」とか、「株価が急落したが、PBRが1倍を下回ってきたので割安水準」といった感じで使われます。また、具体的なデータについても証券会社の投資情報ツールなどで入手・確認することができます。
このように、PERやPBRは「株価が割高なのか割安なのか」を探る指標として知られています。
また、すでにご存じの方にはおさらいとなりますが、計算式も以下のような簡単な割り算です。
<PERの計算式>
株価÷1株あたり純利益
※もしくは、時価総額÷純利益
<PBRの計算式>
株価÷1株あたり純資産
※もしくは、時価総額÷純資産
なお、PER・PBRともに単位は「倍」で表されます。また、PER・PBRの数値が変化する要因は、株価の上下と1株あたり純利益(純資産)の増減です。
一般的に、株価は企業の価値を示すとされていますが、その企業の価値は、ビジネスの稼ぐ(利益を生む)チカラである「事業価値」と、企業が保有している「資産価値」の2つにざっくり分けられます。あらためて上の計算式で確認すると、株価を事業価値(利益)で比較したものがPER、資産価値で比較したものがPBRということが分かります。
PBRで何が分かるのか
まずはPBRから見ていきます。先ほど、「PBRが1倍を下回ってきたので割安水準」という例を挙げましたが、PBR1倍は株価と資産価値が同じであることを意味します。PBRが1倍を下回るということは株価が資産価値よりも安くなっている状況のため、割安だと判断できるわけです。
実際にPBRは相場の下落局面で注目されることが多い指標です。日経平均株価のPBRの推移を振り返ると、コロナ・ショックで株価が下落していた2020年3月16日にPBRが0.82倍をつけました。リーマン・ショック時につけた過去最低水準(0.81倍)に迫ったわけですが、その後の日経平均は3月19日に底打ちし、反発局面へと転じていきました。
ちなみに、企業の資産には現金や有価証券、土地以外にも、保有している独自のビジネスモデルや技術、ブランドなども含まれます。
PERで何が明らかになるのか
次に見ていくのはPERですが、これはPBRと比べて少し厄介です。その理由は対象としている事業価値(稼ぐチカラ)が関係しています。
まず、稼ぐチカラは業種や企業ごとによってまちまちであり、単純に比較することが難しいものです。そのため、PERにはPBR1倍のような明確な基準がなく、今のPERの水準が過去の推移や同業他社と比べてどうなのかといった具合に相対的に判断する必要があります。
さらに株価は足元で稼いだ利益だけでなく、「これからいくら稼げそうか?」という期待も織り込んで動いていきます。
例えば、日経平均株価の採用銘柄や東証1部銘柄のPERはおおむね10~30倍あたりが多いのですが、マザーズなどの新興株市場にはPERが100倍を超える銘柄がゴロゴロしています。新興株市場の銘柄は会社の規模が大きくなくても、育ち盛りの途中で利益が倍々ゲーム、もしくはそれ以上のペースで成長していく企業も珍しくありません。高いPERは割高というよりも成長期待の大きさが反映されている面があります。
反対に、景気後退や〇〇ショックのような局面においては企業を取り巻く環境も悪化し、利益が減ったり、赤字になってしまう企業も出てきますので、稼ぐチカラへの期待とともにPERが低下していきます。とりわけ、赤字になると1株あたり利益がマイナスとなるため、まともなPERが計算できません。楽天証券のマーケットスピードⅡではPERが「0.00(倍)」と表示されますし、投資対象からも除外されがちになります。
ただし、直近の赤字がコロナ・ショックの影響による一時的なものが原因だとすれば、今後の決算で黒字に転じる見込みも強くなります。赤字から黒字への転換で株価が急上昇することもありますので、PERにこだわり過ぎてしまうとせっかくのチャンスを逃してしまうことも考えられます。
このように、PERやPBRは知名度のわりに、使いこなすにはいろいろとコツが必要な指標です。PERやPBRを投資判断の基準にするのではなく、株価と企業価値とのバランス関係やその推移という視点で捉え、テクニカル分析など他の材料と組み合わせて使うというのが有効と言えます。
(土信田 雅之)
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