お得な相続税対策:上場株式を有利に贈与する方法とは
トウシル / 2020年5月29日 5時0分
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お得な相続税対策:上場株式を有利に贈与する方法とは
相続税対策として非常に有効な贈与。現預金だけでなく上場株式でももちろん可能です。でも上場株式の場合はより有利に贈与できるタイミングがあるのです。
生前の贈与が相続税対策に有効な理由とは
相続税を軽減させる対策の1つとして有名なのが、生前に財産をお子さんなどに贈与するというものです。
まずご自身の財産を把握し、相続税の額や税率を試算し、それと贈与税の額を比較します。その結果、贈与税の税率の方が低ければ、生前に財産を贈与することで、贈与税と相続税をトータルした税額を軽減させることができます。
贈与税の税率は、贈与する財産の金額が大きいと非常に高くなりますが、数百万円ほどであればそれほど高くありません。例えば親子間の贈与なら、500万円を贈与したときの税額は48万5,000円、税率でいえば10%以下です。
特に、相続税の税率が30%とか50%になりそうな方であれば、毎年110万円の贈与税非課税枠の範囲内で贈与するよりも、多少贈与税を支払ってでも、お子さん1人当たり500万円くらいは贈与しておいた方が、かなりの相続税軽減につながります。
上場株式を贈与するときの評価額のルールは?
贈与といえば、一般に思い浮かぶのが現金や預金の贈与です。でも、現預金だけでなく、不動産や有価証券など、財産全般が贈与の対象となります。もちろん、上場株式を贈与することもできます。
上場株式を贈与する際のルールは、以下のようになっています。(出所:国税庁ホームページ)
上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価します。
ただし、課税時期の最終価格が、次の三つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
1. 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
2. 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
3. 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
少し分かりにくいので解説を付け加えます。
原則は贈与をした日の株価の終値で金額を計算します。ただし、「贈与した月の毎日の終値の平均」「贈与した月の前月の毎日の終値の平均」「贈与した月の前々月の毎日の終値の平均」と比較して、最も低い価格で評価することができることになっています。
例えば、5月29日に贈与して、株価が以下のような場合は、評価額は最も低い3月の平均値である1,300円となります。
・5月29日の終値:2,000円
・5月の平均値:1,700円
・4月の平均値:1,500円
・3月の平均値:1,300円
つまり、上場株式を贈与する際は、2カ月前や1カ月前の株価を用いて評価することができるのです。
急落後の大きな反発時は上場株式を贈与する絶好のタイミング
3月にはコロナ・ショックの株価急落が起きたことは記憶に新しいでしょう。
3月に株価が大きく売られたものの、その後4月以降は株価が順調に上昇した…という銘柄はかなり多いです。こうした銘柄を5月中に贈与した場合は、5月の高い株価ではなく、3月の低い株価で贈与することになります。
これにより、贈与税を計算する上では、現時点では価値(=価格)が高まっている上場株式を、価値が低かった3月の値段で評価することができるのです。
本コラムの掲載は5月末ですから、これから5月中に贈与することは難しいと思いますが、6月中の贈与であっても、かなり有利に贈与することができる可能性があります。
典型例が、3月決算の企業で、5月に発表された決算や、来期の見通しが好調のため、株価が決算発表後大きく上昇した、というケースです。
こうした銘柄は、例えば6月の株価が2,000円まで上昇しているにもかかわらず、4月平均1,000円、5月平均1,500円、というように、特にまだ底打ち後間もなかった4月平均の株価が現時点よりかなり低いという状況になっているものも少なくありません。
つまり、上の例でいえば2,000円の株を実質的に1,000円で贈与することができるのです。もし3,000株保有していたとしたら、600万円の価値のある株にもかかわらず、300万円の評価額で贈与税を計算してくれるのです。
親子間の贈与で600万円の贈与税額は68万円ですが、300万円なら19万円で済みます。この差は49万円にもなります。
今回に限らず、今後も「◯◯ショック」が起きた後のように、株価が大きく下落したものの、底打ち後は大きく反発した、という状況であれば、同様に有利な贈与を実行することができます。
一般的な解説に要注意!「値上がりが期待できる株」の贈与はすべき?
上場株式を贈与した場合の贈与税の取り扱いについては、メジャーな論点のため、ネットを検索すれば数多く載っています。
しかしその多くで、上場株式を贈与すべきは「将来株価の値上がりが期待できる株を贈与しましょう」と解説しています。
確かに一般的な解説としてはそのような書き方になってしまうのですが、筆者から言わせれば「そんな無責任な解説あるか!」という感じです。
そもそも将来株価が値上がりする株が事前に分かるなら、株式投資が上手くいかず苦労する個人投資家がこんなにたくさん生じるはずはないのです。残念ながら、こうした解説をしている専門家は、自身で株式投資をしていないのでしょう。
筆者は、将来株価が値上がりする株を事前に予想することは困難だし、不確実性が高いと思っていますから、こんなあいまいなアドバイスはしません。
株価が大きく売られた後に好決算により株価が急上昇したという、「すでに株価上昇が事実として生じていて」かつ「株価上昇に確固とした根拠がある」場合が最も有利な贈与のタイミングだと思っています。
ネット証券では上場株式の贈与もやりやすくなっていますから、多額の財産や上場株式をお持ちの方は、公認会計士・税理士などの専門家に相談しながらご自身・ご家族に有利な形で実行されてみてはいかがでしょうか。
(足立 武志)
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