東証マザーズが上がる理由と投資戦略。世界株高の背景に米中景気のサプライズ
トウシル / 2020年6月5日 7時41分
東証マザーズが上がる理由と投資戦略。世界株高の背景に米中景気のサプライズ
世界株高の背景に米中景況感のサプライズ的な改善
今週も米国株も日本株も堅調な動きとなりました。特に米国市場では、大手IT関連株で構成される「NYSE FANG+指数」が最高値を更新。債券が売られ、長期金利が上昇したことでドル/円相場も堅調で、日経平均株価は2万2,000円台後半で下値を切り上げました。
図表1は、米国と中国の経済サプライズ指数の約1年推移を示したものです。経済サプライズ指数とは、各経済指標の発表値と市場予想(エコノミストの事前予想平均)とのかい離幅を指数化したものです。
同指数は、経済指標の発表値が市場予想を上回れば上向き、市場予想を下回れば下向きとなります。コロナ危機で米・中の経済サプライズ指数は2月末以降急落しましたが、中国は3月中旬に、米国は4月末に底入れしてきました。中国の5月PMI(企業の景況感調査)では、製造業も非製造(サービス)業も回復基調を示しました。
中国の5月の自動車販売台数は前年同月比+12%と発表(全国乗用車市場情報連合会)。米国で3日に発表された5月・ADP雇用統計(民間調査)では雇用減少幅が276万人と市場予想(900万人減少)よりも「悪くない」実績でした。
市場は実体経済よりも「景気の方向感」を材料視する傾向があります。世界的な金融緩和と過剰流動性で生まれた株価回復が、先行きの景況感を先取りしている感もあります。
ただ、5日に発表される米・雇用統計(5月分)では失業率が19.5%に上昇(悪化)する市場予想となっており(4月は14.7%)、株式市場が実体経済の悪さをあらためて材料視する可能性もありますので注意を要します。
<図表1>米国と中国の景況感がサプライズ的に上向いてきた
東証マザーズがここまで強いのはなぜ?
こうしたなか、国内の新興中小型企業で構成される東証マザーズ指数の回復基調に注目したいと思います。東証マザーズ指数とは、東京証券取引所・マザーズに上場されている約320社の時価総額加重平均指数です。
図表2は、2018年初以降の東証マザーズ指数とTOPIX(東証株価指数)の推移を示したものです。2月以降の「コロナ危機」で両指数とも急落しましたが、その後の戻りや勢いの面で東証マザーズがTOPIXより優勢であることがわかります。
東証マザーズ指数は先週、2018年12月以来約1年半ぶりに1,000ポイントの大台を回復。200日移動平均線を上回り、25日移動平均線が75日移動平均線を下から上抜ける「ゴールデンクロス」を示しました。
日経平均やTOPIXに対して出遅れ感があった新興中小型株に資金が戻り始めたことを示しています。その後、利益確定売りが先行し、再び1,000ポイント割れに押されました(4日時点)。
ただ、香港を巡る米中対立の激化や世界経済を巡る不透明感が日経平均やTOPIXの上値を抑えるリスクがある一方、海外(外部)要因に左右されにくい東証マザーズが優位を維持していく可能性に注目したいと思います。
<図表2>コロナ危機をきっかけに東証マザーズ指数が反転を鮮明に
マザーズ主力株のパフォーマンスは?
東証マザーズ指数を構成する銘柄群の特徴として、
(1)内需関連銘柄が多く、米中対立激化や外需不振から影響を受けるグローバル企業が少ない(2)新型コロナに対応する治療薬やワクチンなど創薬ベンチャー企業が含まれる
(3)Eコマース(電子商取引)や法人向け・個人向けITサービスなどデジタル化需要の加速から恩恵を受けやすい企業が多い
などが挙げられます。
図表3は、東証マザーズ指数を構成する上位銘柄のうち15銘柄のみを一覧したものです(ウエイトの降順)。多くの銘柄の「4月初来騰落率」がTOPIXの4月初来騰落率(+14.3%)を上回っています。
上記した特徴に関連した銘柄として、アンジェスやそーせいグループなどの医薬品関連に加え、メルカリ、フリー、マネーフォワード、メドレー、弁護士ドットコム、ラクス、JMDCなどITサービスや新しいビジネスモデルで日本の社会や産業に付加価値を提供して高成長が期待されている銘柄が多く含まれています。
<図表3>東証マザーズの回復をけん引している主力銘柄は?
なお、日経平均やTOPIXの回復や東証マザーズの売買活況そのものが、個人投資家の含み損を解消させ、市場の投資余力が改善してきた状況もあります。東証マザーズ指数には指数先物取引があり、外国人投資家が売買(取引)に参加しやすい市場であることも注目されています。
東証マザーズのハイリスク・ハイリターン銘柄に分散投資するには
上記したように、東証マザーズには未来の社会・経済・産業をけん引しそうな新興企業が多く上場されています。
とはいっても、成長期待が高い半面、先行投資を実践しており、業績面が「赤字」もしくは「低EPS(1株当り利益)」で予想PER(株価収益率)が総じて高く、決算発表や業績見通しを巡るニュースフローで株価が乱高下しやすい点には留意が必要です。
換言すると、「東証マザーズはTOPIXよりもハイリスク・ハイリターン」と言えます。
個別銘柄のリスク(リターンのブレ)を抑制するためには、東証マザーズに分散投資することも検討したいと思います。こうした面で、東証マザーズ指数への連動を目指すETF(上場投資信託)「東証マザーズETF」(東証コード:2516)をご紹介します。同ETFは2018年2月1日に上場され、シンプレクス・アセット・マネジメントが運用しています。
同ETFの投資単位は10口で、直近の取引価格(1口当り:749円)で計算すると8,000円足らずで東証マザーズに上場されている銘柄に分散投資するのと同様の投資成果を得ることが可能となります(図表4)。
<図表4>東証マザーズに分散投資できる東証上場ETF(参考情報)
図表4が示すとおり、インデックスファンド(指数連動型上場投信)である東証マザーズETFの取引価格も4月以降はTOPIXに対し優勢だったことがわかります。
東証マザーズの「マザーズ(母)」とは、「将来東証一部へのステップアップを目指す成長企業を育てる新興市場」を意味します。コロナ危機を契機に国内産業の構造変化をリードしそうな新興銘柄群の成長期待を資産運用に取り入れるツールとして活用できると考えています。
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(香川 睦)
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