日経平均は上?下?トレンドブレイクとスピード調整後の動き
トウシル / 2020年6月22日 12時56分
日経平均は上?下?トレンドブレイクとスピード調整後の動き
日経平均はスピード調整の段階に入った
先週末6月19日(金)の日経平均は2万2,478円で取引を終えました。前週末終値(2万2,305円)からは173円高、週足ベースでも反発となっています。
前週末時点では下落基調への転換も警戒されていただけに、ひとまず相場が崩れずに済んだことでホッとした印象ですが、先週の持ち直しが今後の安心感につながるとは限りません。
それでは早速、下の図1で足元の日経平均の状況から確認します。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年6月19日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週初の15日(月)は大幅下落でした。前週末比で774円安となった他、2万2,000円台も下回り、2万1,500円あたりまで株価水準を切り下げていきました。
ただし、翌16日(火)になるとガラリとムードが一変し、今年3番目の上げ幅となる1,051円高を見せて大きく切り返します。そして、その後は週末までは方向感が出ないまま、ほぼ横ばいの動きが続く展開となりました。
週末の終値ベース比では173円高と小幅の値動きでしたが、週間の高値(2万2,624円)と安値(2万1,529円)の値幅は1,095円と比較的大きく、実際の値動きはかなり慌ただしかったと言えます。
次は移動平均線に注目します。週初15日(月)の下落場面では25日移動平均線がサポートとして機能し、その後、200日移動平均線を上抜ける「ゴールデン・クロス」も達成しています。また、75日以外の移動平均線(5日・25日・200日)の距離感が近くなっていることが分かります。
移動平均線はそれぞれの指定期間の値動きの中心線ですので、最近まで上昇トレンドを描いてきた短期~中期の移動平均線(5日と25日)と、下落から上昇へと向きを変えようとしている長期の移動平均線(200日)の株価水準が近くなるということは、上値トライの買いと利益確定の売り、そして戻り待ち売りが交錯しやすいことを意味します。前回までのレポートでも指摘した通り、日経平均がスピード調整の段階に入っていることをあらためて確認できます。
スピード調整には、「値幅調整」と「日柄調整」の2種類ありますが、ローソク足の並びに注目すると、15~16日の大陰線および大陽線の出現でいったん値幅調整が完了し、以降は実体が短く下ヒゲが長めの線が続いたことで、日柄調整へと進んだようにも見えます。
スピード調整後、株価はどちらに向かう?
それではスピード調整が終わった後に、株価はどちらに向かうのでしょうか? 現時点では「どちらも有り得る」としか言えないのですが、下落に転じるにせよ、再び上値をトライするにせよ、目先で注目されるのは、それぞれの「トレンドブレイク」ラインです。
■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2020年6月19日取引終了時点)
まずは、上昇のトレンドブレイクラインから見ていきます。
トレンドは上げ下げを繰り返しながら形成されていきますので、上昇トレンドであっても下落する場面が当然ながら出てきます。いわゆる「調整」と呼ばれるものですが、その調整による下落が止まった際に、直近の高値同士を結んだトレンドラインを描き、そこを上抜けたら買いのサインという見方があります。
実際に、3月下旬からの日経平均の上昇トレンド局面に当てはめてみると、上手くトレンドに乗れていたことが分かります。
先週の15~16日の値動きでいったん下落が止まったと考えれば、9~10日の高値を結んだ線が次のトレンドブレイクの目安として描くことができ、まずは2万3,000円近くまで戻すことが必要になります。
反対に、下落のトレンドブレイクについては、15日(月)につけた直近安値(2万1,529円)が目安になります。図2を見ても分かる通り、最近までの上昇トレンドは下値切り上げながら形成されてきました。直近安値を下回ってしまうと、これまでの基調が崩れることになります。また、同時に25日移動平均線の下抜けも重なりそうなため、さらなる下げ幅の拡大に気を付ける必要が出てきます。
そのため、今週は上下のトレンドブレイクを気にしつつ、日柄調整が進んでいくというのが基本的な想定シナリオとなりそうです。
米国株市場も持ち直したが、上値を伸ばすに至らず
そして、最後に米国株市場についても見ていきます。
■(図3)米NYダウ(日足)とMACDの動き(2020年6月19日取引終了時点)
先週のNYダウ平均株価も、日経平均と同様に25日移動平均線がサポートとなって持ち直しました。その一方で、200日移動平均線を上抜けできず、「アイランド・リバーサル」の窓埋めも進んでいません。下段のMACDについても、先週にシグナルを下抜けた後、今週も右肩下がりが続いています。相場が崩れるのを回避できたものの、再び上値を伸ばす動きには至っていないと言えます。
先週の株価が持ち直したのは、FRB(米連邦準備制度理事会)が社債購入の開始を発表した他、トランプ政権が新たに1兆ドル規模のインフラ投資を検討していると報じられたこと、発表された経済指標が予想ほど悪くないものが相次いだことなどがきっかけです。さらに、国内でも、コロナウイルスをめぐる人の移動や店舗の営業といった自粛規制が解除された他、東京エレクトロンが強気の業績ガイダンスを示したことなども追い風となりました。
確かに、最近の相場材料は前向きなものが増えており、コロナ感染による実体経済への影響や回復スピードが想定していたよりも早まる可能性は以前よりも高まってきたと思われます。
ただし、現在の株価水準が、金融緩和や信用緩和、そして需給を中心に吊り上げられてきた面もあるだけに、これらの好材料を織り込んだとしても、実体経済と株価水準とのあいだに生じたギャップを埋めることができるのかは微妙です。
これまでは株価の戻りを試す段階だったため、「事態は思ったほど改善しなくとも、悪くなっていない限りは買える」という状況だったと言えます。ただ、日経平均が2万3,000~2万4,000円台の天井圏の抵抗帯に差し掛かり、米株市場でもNASDAQが1万p台に乗せて史上最高値を更新するなど、ここからは戻りを試す状況から、さらに買い上がれる状況か否かを判断する段階に入ります。
また、経済活動とコロナ再拡大が表裏の関係である他、日米の政局や、香港・北朝鮮情勢など政治の影もくすぶっていますので、相場材料の面で見ても、今週の相場は日柄調整を中心に進んで行くと思われます。
(土信田 雅之)
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