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“コロナ第2波”警戒でも、原油は40ドル台で定着と読む理由

トウシル / 2020年6月22日 14時46分

 “コロナ第2波”警戒でも、原油は40ドル台で定着と読む理由

“コロナ第2波”警戒でも、原油は40ドル台で定着と読む理由

新型コロナ第2波は来る?

 原油相場は以下のとおり、4月にマイナス価格を付けて以降、反発色を強めています。今月に入り、複数回、1バレルあたり40ドルを超えました。3月のOPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)の会合決裂をきっかけとした急落の直前の水準まで、回復しつつあります。

図:WTI原油先物価格 単位:ドル/バレル

出所:ミンカブ・ジ・インフォノイドのデータをもとに筆者作成

 今回は、今後の原油価格の動向を考える上で欠かせないテーマである、

【1】新型コロナウイルスの“第2波”
【2】米国と世界の石油消費見通し
【3】OPECプラスの減産
【4】米国の原油生産量の見通し

 について、解説します。

新型コロナウイルス、世界的にはまだ“第1波”の最中

 以下のグラフは、地域別の、新型コロナウイルスの感染者の前日比を示しています。

図:地域別、新型コロナウイルス感染者(前日比) 単位:人

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 ここ最近、毎日のように取りざたされる“新型コロナ第2波”について考えます。さまざまな報道の情報をまとめれば、第2波とは“初めて感染が拡大した後、いったん感染拡大が収まるも、ぶり返して再び拡大し、第1波よりも大きな被害を発生させる波”と言えます。

 上図でいえば、米国(北米のうち95%以上が米国)がそれに近い状態にあり、米国で第2波が起こりつつある、と言えます。

 では感染拡大が続いている南米、インド、中東、アフリカは、どのような状態と言えるのでしょうか? “いったん感染拡大が収まる”ことがまだ起きていないため、現状は、第1波の最中、と言えます。

 一口に“第2波”といっても、地域によって状況が異なるため、当てはまる地域とそうでない地域に分かれるわけです。日本に住んでいて、“第2波”というと、新しい心配事が迫ってきているような気持ちになりますが、それは日本や米国での話です。

 第2波への警戒は、個別の地域での議論であり、世界全体での議論ではありません。世界全体で言えば、第1波が拡大中、です。

 以下のグラフは、世界全体の新型コロナウイルス感染者の前日比を示しています。

図:世界全体の、新型コロナウイルス感染者(前日比) 単位:人

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

  現代社会における世界経済では、足りないものを他国から買う(輸入する)、余分なものや自国で付加価値をつけたものを他国へ売る(輸出する)という“貿易”が、発展のために不可欠です。

 このように、基本的に国と国は、関わり合いながら存在しているからこそ、世界全体を網羅する議論が重要です。

 現段階で、第2波の議論は、世界の一部の地域についての議論で、世界全体を網羅する議論ではないことに、留意が必要です。一部の地域に第2波を到来させないことと同じくらい、第1波が起きている地域でまずは感染をひと段落させることが、重要なのです。

米国の石油消費は年末にかけて増加、ただし見通しの水準は鈍化

 足元、一部の国で第2波の懸念があり、世界全体では第1波が続いていると、述べました。

 以下は、第2波の懸念がある米国の、石油消費量の見通しです。この場合の“石油”とは、ガソリンやジェット燃料、軽油や暖房油の元となる中間留分などの合計です。このような“石油”の消費量は、経済の活況度のバロメータといっても過言ではありません。

図:米国の石油消費見通し(2020年6月から12月) 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 これらは、EIA(米エネルギー省)の“見通し”であり、実績値ではありません。また、ここに示しているのは、現時点で最も新しい6月に公表された見通しだけではなく、新型コロナウイルスがパンデミック化する以前に作られた3月に公表された見通しからの、合計4カ月分です。

 米国は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために講じられたロックダウンを順次、解除しています。経済再開の流れが、石油消費の見通しを増加させていると考えられます。3月から6月まで、いずれの月の見通しも“年末にかけて消費は増加する”としています。

 ただ、見通しが公表されるたびに、増加の度合いが鈍くなっている、つまり、見通しの下方修正が続いていることが分かります。例えば、同じ2020年12月の見通しでも、4月公表分は、日量1,983万バレルでしたが、5月公表分は1,921万、6月公表分は1,880万へと引き下がりました。

“見通し”は、過去のデータを参照して作成された一定の公式(フォーミュラ)に、足元で起きている“さまざまな要因”を加えて、作られていると考えられます。このため、見通しの対象が同一で、公表月ごとに見通しが変化した場合、“さまざまな要因”が月をまたいで、見通しを変化させた、と考えられます。

 特に上図のとおり、見通しが同じ方向に修正され続けている場合は、“さまざまな要因”そのものに、数カ月単位のトレンドが生じている(事象の度合いが同一方向に強まり続けている)と考えられます。

 消費見通しの引き下げにトレンドが生じていることは、米経済にとってマイナスの事象が発生・拡大する可能性が徐々に高まっていることを意味します。米経済にとってマイナスの事象とは、米国で第2波が起きることなのだ、と筆者は考えています。

 加えて、もともと、新型コロナの影響がほとんど想定されていなかった3月公表分の見通しでは、2020年12月の消費量の見通しは日量2,060万バレルとされていました。しかし、同月の見通しは引き下げられ6月時点では、日量1,880万バレルとなりました。米国国内の石油の消費は足元よりは回復するものの、年末になっても、平時には戻らないことも、見通されています。

世界の石油消費は米国と同様、年末にかけて増加、ただし見通しの水準は鈍化

 また、以下は、第1波の最中とした、世界全体の石油消費量の見通しです。

図:世界の石油消費見通し 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 米国の石油消費の見通しと同様、見通しの引き下げが続いていること、年末に平時に戻らないことが見通されていることは、世界全体の“第1波が終わっていない”、米国などで“第2波が到来している”ことが意識されている可能性があります。

 先日、OPEC(石油輸出国機構)が月報で、年後半に世界の石油需要が回復する、見通しを示しました。上記のとおり、EIAの月次レポートでも、米国単体・世界全体ともに、同様のことが示されています。

 しかし、考慮すべき点は、回復の見通しの程度です。年後半に回復する、ということは変わりませんが、だんだんと回復の見通しの程度が低下しています。これは、米国などでの第2波到来と、世界全体での第1波継続、が考慮されつつあるため、だと考えられます。

OPECが減産順守すれば、原油相場40ドル台定着か

 実際に米国などで第2波が到来したり、世界全体で第1波が継続したりした場合、石油の消費量は、現時点の見通しよりも低水準になる可能性があり、このことが石油の市場の下押し材料となる可能性があります。

 とはいえ、石油市場における材料は、新型コロナウイルスだけではありません。その時の需給データの(見通しではなく)実績値が、例えば、OPECプラスが減産をきちんと順守したり、本年春から始まったシェールを含む米国の原油生産量の減少が続いたりすれば、一定程度、需給バランスが引き締まり、年後半にかけて、原油価格は今よりも、高い位置にある可能性があります。

 以下の資料は、OPEC内減産実施国10カ国の5月の減産順守状況などを示しています。

図:OPEC内減産実施国10カ国の5月の減産順守状況など

出所:海外メディアおよびEIA(米エネルギー省)、OPECのデータをもとに筆者作成

 OPECが6月17日(水)に月報で公表したOPEC内で減産に参加する10カ国の5月の原油生産量から推計される減産順守率は、84.1%でした(筆者推計。100%以上で減産順守)。

 つまり、協調減産再開初月となった5月は減産非順守だったわけですが、以前の「原油価格は1カ月で約2倍に上昇。OPECプラスの「ヤミ増産ストッパー付き減産に期待」で述べたとおり、5月と6月に、基準を超えて生産をしてしまった量を、7月から9月の3カ月以内に、本来削減するべき量に上乗せをして、削減をすることになっています。

 その上乗せをする量は、OPEC内減産参加国10カ国合計で、上記の資料のとおり、日量およそ120万バレル程度です。これに関連し、5月の減産順守率が40%程度だったイラクが、上乗せをして減産をすることを明言した、という報道もあります。

米国の原油生産量も減少予定で、原油相場40ドル台定着か

 以下のグラフのとおり、5月に公表された見通しも、6月に公表された見通しも、米国の原油生産量は、来年の春ごろまで、減少するとしています。

図:米国の原油生産量の見通し 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 ただ、減少の程度はやや異なります。5月公表分よりも、6月公表分の方が、減少の程度が、大きいことが分かります。

 6月公表分の見通しは、5月半ば以降、6月初旬にかけて作成されたと考えられます。同様に5月公表分の見通しは、4月半ば以降、5月初旬にかけて作成されたと考えられます。

 どちらの見通しが、高い原油価格を参照して作成されているのでしょうか?マイナス価格を付けた4月20日以降、原油相場が大きな下落を伴わず、上昇し続けたことからも分かる通り、5月半ば以降、6月初旬に作成された6月の見通しの方が、高い原油価格を参照しています。

 にもかかわらず、原油生産量の見通しは、6月公表分の方が弱気です。このことは、3月の原油価格の暴落によって、米国全体の原油生産量のおよそ7割と推計されるシェールが受けたダメージが大きく、回復がまだ先になることを示唆していると筆者は考えています。

 世界の石油消費が見通しよりも引き下がったとしても、OPECプラスの協調減産が、きちんと守られる状況が続き、米国の原油生産量が見通しどおり減少すれば、原油相場は大きな混乱が生じず、年後半にかけて、WTI原油ベースで1バレルあたり40ドル台を定着させる可能性があると、考えています。

[参考]具体的な原油関連の投資商品

種類 コード/
ティッカー
銘柄
国内ETF/
ETN
1671 WTI原油価格連動型上場投信(東証)
1690 WTI原油上場投資信託 (東証)
1699 NF原油インデックス連動型上場(東証)
2038 NEXT NOTES 日経TOCOM原油ブル
2039 NEXT NOTES 日経TOCOM原油ベア
投資信託   UBS原油先物ファンド
外国株 XOM エクソンモービル
  CVX シェブロン
  TOT トタル
  COP コノコフィリップス
  BP BP

(吉田 哲)

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