一般NISA非課税期間終了後の注意点とその対策はどうする?
トウシル / 2013年8月8日 14時0分
一般NISA非課税期間終了後の注意点とその対策はどうする?
損しているのに税金を取られてしまう?
NISA口座では、5年間の非課税期間が終わると、通常の口座(一般口座ないし特定口座)に保有株を移管することになります(ただし後述のロールオーバーも可)。
実は、移管後に保有株を売却した際、「損をしているはずなのに税金がとられる」という何とも理不尽なことが起こる可能性があります。
例えば、2014(平成26)年のはじめにNISA口座にて100万円で買った銘柄の株価が、5年後の2018(平成30)年末に40万円まで値下がりしていたとします。
非課税期間の5年間を経過しましたので、原則として通常の口座へ移管することになります。移管の際の株価は、2014年はじめの購入価格100万円ではなく、移管時の時価である40万円となる点がポイントです。
もし、移管後に90万円まで株価がもどり、「だいぶ含み損が減ったので売ろう」と思って売却すると、買値より10万円損をしているはずなのに、(90万円-40万円)×20.315%=101,575円の税金がかかってしまうのです。
なぜこんなことが起こるのでしょうか? それは、NISA口座で保有していた期間の含み益や含み損は、非課税期間終了後通常の口座へ移管する際にすべてなかったものとされてしまうからです。
つまり、NISA口座にて100万円から40万円に値下がりした分の60万円の損失は、移管時に切り捨てられてしまうのです。
さらに5年間NISA口座にロールオーバーして株価回復を待つ作戦も
なお、上記の例では5年間の非課税期間が経過した後、通常の口座に移すのではなく、2019年分の非課税枠を使って再びNISA口座にロールオーバーすることも可能です。つまり、さらに5年間の延長戦を行い、株価の回復を待つのです。ただしこの場合も、ロールオーバー後の価格は、当初の購入価格100万円ではなく、ロールオーバー時の時価である40万円です。
もし、新たな非課税期間中の2023年末まで保有を続け、株価が当初の購入価格である100万円を超えれば成功です。でも、結局100万円を回復できなかったとしても、平成36年以降は通常の口座に移管するしかありません。
2024年はじめに通常の口座に時価で移し換えた後、株価が上昇して売却したら、売却額と移管時の時価の差額が売却益となり、20.315%の税金が発生します。
このように5年経過した2018年時点で含み損を抱えた状態の株の選択肢は、「通常の口座に移管」「NISA口座にロールオーバー」、そして「売却」の3つありますが、大きな含み損をかかえてしまって売るに売れない状況なら、NISA口座にロールオーバーして株価の回復を待つのが定石なのでしょう(筆者は大きな含み損を抱えたまま持ち続けることはしませんが)。
5年経過後含み益が生じている場合はどうするか?
もちろん、NISA口座で保有を続けた結果、含み益が生じているというケースも十分に考えられます。この場合はどうすればよいでしょうか?
結論から言えば、さらに株価が上昇しそうであれば、さらなる非課税メリットを狙ってNISA口座にロールオーバーするという戦略が考えられます。
この「さらに株価が上昇しそうかどうか」というのは、「長期のトレンドが上昇トレンドかどうか(株価が上向きの12カ月移動平均線より上に位置しているかどうか)」で判断すればよいと思います。
配当利回り狙いで長期保有している銘柄についても、ロールオーバーでよいでしょう。
(まとめ)制度に振り回されてはいけない-自身の運用スタイルを大事に
NISAは、「バイ・アンド・ホールド」の長期投資運用を前提とした制度です。一方、個人投資家の運用スタイルは長期投資からデイトレードをはじめとした短期投資までさまざまです。
株式投資の目標は、資産を増やすことにあります。でも、目標は同じでも、そこに至るまでの道はいくつもある、これが株式投資の面白いところです。筆者が当コラムで提唱している方法以外にも、株式投資で資産を増やす方法はいくつもあります。
筆者は、数多くの個人投資家の方と接してきましたが、株式投資で成功している個人投資家には共通した特徴があります。それは、「自分自身の投資スタイルを確立している」ということです。
もし、ご自身の投資スタイルがバイ・アンド・ホールドの長期投資であれば、NISAは非常に魅力的な制度です。
一方、投資スタイルが短期投資やトレンドに従った売買という場合は、NISAとの親和性は低くなります。このような方が無理にNISAに適したスタイルであるバイ・アンド・ホールドの長期投資に合わせてしまうと、せっかく確立した投資スタイルがぐらついてしまいます。
投資スタイルによってはメリットよりもデメリットの方が強く出てしまう恐れがあるのがNISAです。
税金面のメリットにこだわり過ぎて、自らが築き上げた投資スタイルを崩すことは、かえって失敗の要因にもなりかねません。
くれぐれも、自身の投資スタイルを崩さない範囲でNISAを活用するようにしてください。
※このレポートは、当初2013年8月8日公開時点の内容を制度変更に伴い、データなどの一部を現時点の情報に合わせて、トウシル編集チームが修正、編集しています。
(足立 武志)
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