第10回 中国の衰退と日本の出番
トウシル / 2015年10月8日 0時0分
第10回 中国の衰退と日本の出番
中国の衰退と日本の出番
このコラムも10回目となり今回は最終回です。先日朝倉慶の<中国ゴーストタウンセミナー>ということで、中国の現状を視察してきましたが、ツアー参加者一同予想以上の衝撃を受けました。内陸部オルドスでは人のいないマンション群が山のように連なっています。そして周りに作られた広大に続く工場群はただの一つも動いていません。そして最も驚くべきことはそれらの工場群やマンション群を取り巻くインフラや道路が非常に綺麗で整備つくされ続けているということです。人のいないマンション群や稼働しない工場を想像してみてください。それが延々と続く姿を想像してみてください。当然廃墟のようにすたれて人が全くいない、まさに<ゴーストタウン>が出現してそれは薄気味の悪いところに思えませんか? ところが現実は全く違うのです。廃墟でありながら今も整備され続けていて、道路はちり一つなく綺麗に整備、掃除されているのです。何処に行っても人影もまばら、特に子供の姿はほとんど見かけることはありませんでした。ところがマンション群にはその広大な建物の一つ二つに電気がともるところ、全くともらないところ、とにかく人の気配は全くありません。そしてそれらが何故綺麗になっているかというと実は連日清掃しているからなのです。たまに会う人々はまさに清掃の仕事をしている人のようでこの人のいない街を何故かしっかりと清掃し続けて清潔さを保とうとしているようです。そのような人の気配のない広大にまたがる街をただ清掃し続けて外見を保とうとしている様子は異様と思いませんか? これこそが中国の現状であり、中国で起こっている現在の縮図をみせているように感じました。
夜になるとこの人のいない<ゴーストタウン>は見事にライトアップされたショービジネスのような街に変身します。街を連なる中心の川にいくつもの噴水が大きく躍動して様々な色を成すまさにラスベガスのショーそのもののような見事な演出がなされ、見るものを魅了するショーが連日催されるのです。そこには観客はほとんどなくまるでツアーに来た我々のためだけに演出されたショーが特別に開催されているような錯覚にさえ陥ってしまいます。街の主要部は全て見事に光の街に変身して全てライトアップ、その見事なライトアップは夜12時までどころか夜中中続き電気の消えることがないのです。想像してみてください、昼間でさえ誰も通らない道路、子供も全くいない街が見事にライトアップされて不夜城のように洗練された美しさを演出している姿を、そして街を二分する橋は見事に馬の姿を形どったライトに映し出され見るものを魅了する景観となっています。そしてそこに人は全くいないという異様な光景なのです。
これこそ中国の今の姿、まさに成金の摩天楼を見る思いがしました。いずれ破たんするのが必至なのに壮大な無駄を続けています、開発計画の失敗を認めない、変更できない愚かな共産党政府の方針をみる思いがしました。オルドスは中国の内陸部の一つの典型的な<鬼城>いわゆる中国全土にまたがる<ゴーストタウン>の一つにすぎないのですが、その異常性はそのような街をまだしっかりと維持させようとしてきれいに清掃を続け、連日人がいないのに膨大な資金を投下して派手なショーを続け、見た目だけは美しく、見た目だけは経済破たんが起きていないことを虚勢を張って無理やりに示そうとしている愚かさなのです。これぞ現在の中国が世界に見せている姿そのものと思えました。内部はぼろぼろなのにみかけだけは大丈夫と無理に無理を重ねているのです。
中国はここ20年以上にわたって驚異的な経済成長を遂げてきました。一昔前の誰もが人民服を着て自転車で通勤していた時代とはうって変わって大発展を遂げたのです。人々は豊かになり日本へも旅行で爆買いをするために訪れるようになりました。その発展は余りに急激で行きすぎ、人々は永遠に成長が続くと思い違いしてしまったようです。
確かに中国は目覚ましい発展を遂げました。しかし、どんな経済でも急激な発展を遂げれば遂げるほど、大きなショックなしで発展を続けることはできません。必ず行き過ぎるのが資本主義経済の宿命です。日本でもバブル崩壊で20年にわたる苦境を経験していますし、米国でも2008年のリーマンショックや2000年のネットバブル崩壊を経験しています。その中の混乱を通して再び経済の復活を遂げてきたのです。中国は日本や米国以上に実は資本主義的な傾向が行き過ぎています。その中国が大きな混乱なしで高度成長から中低成長に移行できることなどあり得ません。オルドスに見られるように中国全土で壮大なバブルが構築され、それはまだ不良債権などにはカウントされていないでバブルの構築や維持は続いているという事実を確認しておく必要があるでしょう。
中国の経済は予想以上に悪くなっていくと思います。しかしその中で中国の経済と日本の経済を一緒に考えて、日本株を叩き売るような姿勢はおかしいと思います。確かに中国経済の急減速に対しての日本経済に対しての影響はあるでしょう。しかし日本は資源に大きく依存してきたようなブラジル、オーストラリア、ロシアのようにその主要な産業が中国に依存してきたわけではありません。また産油国も直接的にも間接的にも中国の恩恵を大きく受けてきました。それは中国の大発展の最中で資源価格の急騰という追い風を大きく受けてきたからです。そういう意味ではサウジアラビアをはじめとする産油国やアフリカ諸国も今後中国経済の大減速を受けて大きな打撃を受けるでしょう。アジアでも中国への輸出に大きな経済を依存してきた韓国や香港やシンガポールなどは大きな影響を免れません。
しかしこれらの諸国と日本は経済構造が違うのです。中国が沈みつつありますが、中国が沈んで世界中の全てが沈んでしまうわけもありません。中国が沈むことで大きく浮かび上がる経済もあるはずです。中国が目指してきたものはその安い労働力を盾にした大量の生産販売です。しかし中国も発展途上から現在豊かになってきたことで、いわゆる安全で快適で安心できる商品を求めるようになってきています。だから中国の人々が日本にきて日本の商品を爆買いするわけです。時代の変化、発展の度合いで彼らの消費性向は本物志向に移ってきたと思っていいでしょう。それは日本商品に対しての爆買いに繋がっているのです。これこそが中国経済の急減速後に求められる新しいトレンドとみるべきでしょう。安心、安全、本物志向です。
資源国や産油国などはただ自国に資源が眠っていたというだけで豊かになってきました。それらの国は技術の発展に怠って自国の資源だけに寄りかかって発展してきたのです。このような経済の咎めが中国経済の失速に伴ってやってくるわけです。そこでは新しい物、本物に対する志向が新たに生まれてきます。その受け皿が日本企業と思えばいいでしょう。中国は衰退します。それは新しい本物、安全、安心志向の始まりであり日本企業の出番でもあるのです。
(朝倉 慶)
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