「日銀の一手買い」で支えている日本株、外国人投資家にバトンタッチできるか?
トウシル / 2020年7月16日 7時52分
「日銀の一手買い」で支えている日本株、外国人投資家にバトンタッチできるか?
16日、日本銀行の金融政策決定会合の結果が発表されました。事前予想通り、現在、行っている大規模な金融政策を継続するという内容でした。株式市場に、大きな影響を及ぼしているのは、日銀による年間12兆円を上限とする買い付けですが、それもそのまま継続とされました。
日銀の日本株保有額がついに約33兆円に達する
日本株市場で、日本銀行の存在がどんどん大きくなりつつあります。日銀は今、日本株ETF(上場投資信託)を年間12兆円を上限に積極的に買い入れる金融政策を実行しています。売りはせず、買いだけです。累積買い付け額はついに約33兆円に達しました。
日本銀行による日本株ETFの累積買い付け額推移:2011年1月~2020年6月
日銀は、2015年から買い付けペースを引き上げています。2015年は年3兆円(月間約2,500億円)の買い付けを行いました。2016年に入ってから年3.3兆円(月間約2,750億円)、2016年8月から買い取りペースをさらに大幅に引き上げ、年6兆円(月間約5,000億円)としました。そして、コロナ危機で日本株が暴落した今年の3月から、暫定的に、買い入れの上限を年間12兆円まで拡大すると決めました。
日銀の買いが、外国人の売りをすべて吸収
日本株の動きは、これまで完全に外国人投資家に支配されていました。外国人投資家が買い越した月は日経平均株価が上昇し、売り越した月は日経平均が下落する傾向が過去30年、続いてきました。
ところが、その法則に2020年は異変が起こっています。
2020年1月以降の外国人の日本株売越額・日本銀行の日本株ETF買い付け額推移
3月まで、外国人の巨額の売りで日経平均が暴落したところまでは、いつも通りでしたが、4月以降に異変が起こりました。外国人が延々と売り越しを続けているにもかかわらず、日経平均が急反発しているからです。外国人の売りをすべて吸収して、日経平均を急反発させたのは、日本銀行のETF買いでした。上の表をご覧いただくと、日銀が外国人の売りをほとんど吸収してきたことが分かります。
日銀は本当に、年間12兆円ETFを買うか?
日銀は本当に年間、12兆円も日本株ETFを買うでしょうか? そのためには、月平均1兆円を買わなければなりません。確かに、日経平均が暴落した2020年3・4月は、1兆円を超える買い付けを実施しています。ところが、日経平均が2万円を超えた5月以降は、買い付け額が大きく減少しています。7月は14日までで、2,112億円しか買っていません。月間1兆円にはほど遠い買い付け額です。
日銀は、買い付けの上限を年12兆円として積極的に買うと言っているだけで、どのように買うかは、開示していません。
これはあくまでも仮説ですが、日経平均が2万円を大きく超えている時は買い付けを少なくし、日経平均が暴落した時だけ、大量に買い付ける方針に、日銀は転じたかもしれません。なぜならば、今年3月に日経平均が1万6,500円まで下がった時、一時保有ETFに巨額の含み損を抱えたからです。当時、平均買い付けコストが日経平均で1万9,000円台だったからです。
今、日経平均が急反発したので、保有ETFには再び巨額の含み益があります。それでも、以前のように日経平均がどんどん上がっていても買い続けていると、いずれまた暴落した時にヒヤッとすることを繰り返すかもしれません。そうならないように、日経平均が急落した時だけに、大口買いを出すように、変わったかもしれません。
ここで、冒頭の質問に戻ります。日銀は本当に年間に上限の12兆円までETFを買うでしょうか? これから、日経平均がもう一度、暴落すれば、上限12兆円まで積極的に買うでしょう。ただし、日経平均が下がらずにじりじり上げ続ければ、日銀の買いは上限には届かず、年間6兆円程度に留まることになると、予想しています。
外国人はいつ、日本株を買い越しに転じるか?
気になるのは、今年に入って、外国人投資家が、日本株を売り越し続けていることです。いつになったら、買い越しに転じるでしょうか?
外国人投資家から見て、日本株は「世界景気敏感株」です。中国および米国の景気が回復し、世界景気が回復に向かう見通しが出れば、外国人は日本株の保有も増やした方が良いと思うでしょう。今後の、中国・米国の景気指標次第ということになります。
理想は、日銀の買いが縮小し、外国人に買いがバトンタッチされることです。世界景気が回復に向かい、外国人が買いに転じれば、日経平均は戻り高値(2万4,083円)を超え、上昇していくと予想しています。
私は、来年にはコロナ克服が見えてくることから、世界景気は回復に向かうと予想しています。ただし、その前に、まだ感染拡大の不安で、株価が乱高下する可能性は残っています。
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