米国株、5つの疑問に答えよう:経済との乖離、二番底、大統領選、注目業種、為替
トウシル / 2020年7月28日 15時23分
米国株、5つの疑問に答えよう:経済との乖離、二番底、大統領選、注目業種、為替
先週の楽天証券21周年セミナーでは、事前に非常に多くのご質問をいただきました。興味深かったのは、これらご質問のほぼ全てが大きく、下記5つのテーマに当てはまるという事でした。ですので今回は、これら5つのテーマについて私なりの考えを示しておきたいと思います。
#1経済と株式相場の乖離について
最も多かったのが、来週発表されるアメリカの第2四半期GDP(国内総生産)はマイナス35%予想、失業率も10%を上回る状況が続いている中、何故株式相場はほぼ高値を回復しているのか、というご質問でした。
簡単に申し上げれば、株式というのは永久証券なので、いかなる経済ショックであってもそれが比較的短期のものであれば、本来株価に大きな影響があってはならない、という事になります。
歴史的に見てみますと、リセッション時に株価が大きく下がるのはその通りなのですが、アメリカの場合ほとんどのリセッションは、需要を先食いしてしまってその後回復に何年かかるか分からない、という状況を嫌気するパターンです。その点で今回の新型コロナウイルスは恐らく、少し長めの短期的ショックという珍しいパターンなので、経済と株式相場の乖離(かいり)を疑問視されている方が多くいらっしゃるのかもしれません。
ちなみにこの点について、私は3月に相場が大きく下落する前からずっと申し上げてきており、むしろ株式相場を短期的ショックと結びつける3月の方が異常な状態だったと考えています。
#2二番底はあるのか
現在、S&P500指数は3月の安値から45%以上高い水準にあります。#1の疑問や高所恐怖症もあって、この水準ではなかなか手が出ない、二番底があるならそれまで待とう、と考える方が多いのも理解できます。もちろん相場の事なのであらゆる可能性に対してゼロとは断言できませんが、私は限りなくゼロに近いだろうと考えています。
というのは、安値を付けた3月23日の状況を思い出してみてください。感染者が爆発的に増加し、それに対する医療のキャパシティーが足りない、有効な治療薬も無い、ワクチンの開発など着手されていない、そもそもコロナの正体も分からない。経済活動はストップされ、生活の補償も無ければスーパーで生活物資も売り切れ続出、という真っ暗闇の状況です。逆に言えばこの先二番底が来るとすれば、これらの条件が全て整わなくてはなりません。
同日FRB(米連邦準備制度理事会)が空前の流動性供給に乗り出し、3月27日には2兆ドル超の経済対策が成立して現在実行中である事等も勘案すると、例え今後コロナ第二波が訪れようとも、再びあの水準を見る事は無いと考えるべきだと思います。
#3どのような業種が狙い目か
私は大きく5つのグループに分けて考えるようにしています。
A. ほぼ無借金で、コロナがむしろサポート材料になる(ハイテク等)
B. ほぼ無借金だが、コロナによる打撃は受ける(広告等)
C. 借金があり、コロナによる打撃も受ける(半導体、住宅建設、金融等)
D. 借金が多く、コロナにより大打撃(航空、ホテル、クルーズ等)
E. コロナ前から厳しい(エネルギー、商業不動産等)
現在はAからCが「投資適格」で、コロナ感染状況によってより積極的に(AよりB、BよりC)、と考える状況かと思います。米国政府の積極的なサポートにより、早ければ年内にもワクチンが利用可能になる見通しですが、そうなれば負債の状況を精査した上で、Dにも着手して良いかと思います。Eは長期投資には向いていないでしょう。
#4為替の動向
株式相場と違い、為替は経済動向、とりわけ雇用情勢を反映していく可能性が高いと考えています。何故なら為替の大きな変動要因は金利であり、金利の大きな変動要因は雇用情勢であるからです。金融危機時に失われた雇用は800万人強ですが、現時点でかなり取り戻したとはいえ、ネットで約1,300万人が雇用を失った状態です。FRBが2022年末まで現状の金融政策を変更しないと見通している通り、超緩和政策はかなり長く続くでしょう。
金融危機後、ドル/円は70円台を目指すことになりましたが、本格的な円高の進行は、2009年3月にアメリカが金融危機のピークを付けた後からでした。その点では当面、円高に対する警戒は強めておいた方が良いかと思います。幸い日米金利差はほとんど無くなっているため、為替のヘッジコストは気にしなくてよくなりました。米国株投資による為替リスクが気になる方は、状況に応じて各自で為替ヘッジされることをおすすめします。
#5大統領選挙の株価への影響
ざっくりとした予想になりますが、現在優勢とされているバイデン候補が法人税減税の解消を提唱していることから、バイデン勝利の場合S&P500指数の2021年一株利益は150ドル、トランプ勝利の場合は170ドルと予想しています。
現時点ではバイデン勝利の確率が約60%なので、市場は2021年一株利益158ドル((170-150)×0.4+150=158)を織り込んでいる事になります。ここから、バイデン勝利の場合、S&P500指数は5%下落(1-150÷158)、トランプ勝利の場合、7.5%上昇(170÷158-1)という影響が推測できます。
ただ逆に言えば、株式相場への影響はたかが数%程度だという事になります。2016年の大統領選挙結果があまりにサプライズだったので警戒する向きが多いのは理解できますが、このように考えると大統領選挙の影響を過大視する必要は無いように思います。
(2020年7月24日記)
(堀古 英司)
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