7月に急騰したビットコインとイーサリアム。“無国籍通貨”の時代が来る?
トウシル / 2020年7月31日 8時0分
![7月に急騰したビットコインとイーサリアム。“無国籍通貨”の時代が来る?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_27990_0-small.jpg)
7月に急騰したビットコインとイーサリアム。“無国籍通貨”の時代が来る?
本レポートでは、主要な暗号資産であるビットコイン、イーサリアムと、金や原油などのコモディティ、通貨、株価指数を比較します。騰落率、価格推移などを切り口に、比較をしながら、ビットコイン、イーサリアムの今後を展望します。
本コンテンツで参照するのは、ビットコイン、イーサリアム(以上、暗号資産)、日経225、マザーズ指数(以上、株価指数)金、銀、プラチナ、パラジウム、原油、トウモロコシ、天然ゴム(以上、コモディティ)の、合計12銘柄です(すべて円建て)。
騰落率:年初来の騰落率は、イーサリアムがダントツ1位。金、銀も健闘
まずは、年初(2020年1月6日)と7月28日の騰落率です。このおよそ7カ月間、最も上昇率が高かったのは、イーサリアムでした。+116.8%はダントツの1位です。
図:ビットコインとイーサリアム、各種銘柄の騰落率
2020年1月6日と7月28日を比較 日足の終値で計算
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/e/4/-/img_e4b83913d6496ba9c8b74d61cae7c74a6607.png)
ビットコインが2位、次いで、銀、金の上昇が目立ちました。ベンチャー企業が中心の新興市場の全体的な動向を示す株価指数であるマザーズ指数は上昇したものの、日本経済の先行指標と言われる日経225や、産業用の用途がメインのプラチナ、天然ゴム、原油などの景気動向に連動する傾向があるコモディティ(商品)は下落しました。
全体的には、暗号資産と通貨の側面をもったコモディティが上昇し、景気動向に連想する傾向がある資産が下落した、と言えます。
この7カ月間、振り返ってみれば、世界に新型コロナウイルスの感染が拡大し、さまざまな分野で変革が起きました。ウイルスの感染拡大が収まらないことや、新しい生活様式を受け入れることへの不安、懸念、心配、焦り、いら立ちなどが募り、感染拡大前に比べれば、人々の心は不安定化していると言えます。
一般大衆の間で心配事が蓄積すれば、やがて大きな不安心理の塊となり、市場を揺さぶる存在となります。
暗号資産と通貨の側面を持ったコモディティの共通点は、“国籍を持たない通貨”です。不安心理が拡大する中、そのような通貨の価格が上昇したことは、一般大衆の不安が、国の信用を背景とした通貨(円、ドル、ポンドなどの一般的な通貨)へ波及していることを示唆していると、考えられます。
価格推移:7月にイーサリアム、ビットコイン、銀が大幅上昇
次に、12銘柄のうち、動きが比較的大きかった5銘柄の価格の推移に注目します。7月、イーサリアム、ビットコイン、銀が大幅に上昇しました。金の上昇も目立ちました。この間、株価指数の日経225はほぼ横ばいでした。
図:ビットコインとイーサリアム、各種銘柄の価格推移(2020年7月28日まで)
2020年1月6日を100として指数化 日足の終値で計算
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/6/e/-/img_6eb466235a2b5054d74b766c9ae59c8f20617.png)
現代社会では、多くの国や地域で貨幣制度が用いられているため、多くの国や地域ごとに通貨が存在し、それをもとに商取引が行われています。通貨が異なる国同士が貿易をする際は、為替レートをもとに、取引でやり取りをする金額を算出します。そして、その為替レートは、当該国の信用力や、諸情勢によって変動します。
一方、先述のとおり、イーサリアム、ビットコイン、銀、金の共通点は“国籍を持たない通貨”です。このため、どこかの国の信用力が、直接的にこれらの通貨の価値を変動させる要因になることはありません。これらは“無国籍通貨”と言われることもあります。
新型コロナの感染拡大をきっかけに、世界に強く重い不安が垂れ込め、誰か、何か、への信用を置きにくい状況にあり、国の信用を背景とする通貨にも、信用を置きにくくなっていることが、無国籍通貨が上昇している一因とみられます。
米国で金融緩和は続けば、“無国籍通貨”が注目を浴び続けるだろう
特に7月に、無国籍通貨が大きく上昇したのは、現在の世界の基軸通貨(世界の貿易で最も多く用いられている通貨)である米ドルの信用力を担保する米国が、新型コロナの感染拡大によって受けた同国の経済的なダメージを回復させるために、金融緩和策を強化すると宣言したことが要因とみられます。
金融緩和は、中央銀行(その国の銀行の銀行)が、目標金利を引き下げたり、一般社会から国債などの資産を買い取ったりする行為です。米国で金融緩和が強化されると、個人や企業が米ドルを持っていても金利が付きにくくなる、一般社会に出回る米ドルの量が増えて価値が希薄化する懸念が生じる、などが懸念されます。
米国で金融緩和が行われれば、米ドルを保有する妙味が低下する懸念が高まるわけです(もちろん、金融緩和策の本来の目的である、経済の回復は、達成される可能性は高まります)。世界の基軸通貨であるドルを保有する妙味が低下する懸念が生じた時、どの通貨を持てばよいのでしょうか?
7月にイーサリアム、ビットコイン、銀、金が大幅上昇したことを考えれば、市場がこの問いに対して出した答えが“無国籍通貨”だった、と言えると思います。このため、米国で金融緩和が続けば“無国籍通貨”に注目が集まる状況が続く可能性があります。
今回の米国の金融緩和は、新型コロナでダメージを受けている米国経済を回復させることにあるため、米国で感染拡大が鈍化したり、複数の経済指標が目立った好転を見せたりするまで、金融緩和は続く可能性があります。すでに、2021年末まで目標金利を引き上げない、ことが明言されています。
足元、イーサリアム、ビットコイン、銀、金などの“無国籍通貨”の動向に、米国の金融政策の動向が、強く影響していると考えられます。今後もこのような状況が続く可能性があるため、これらの価格動向を考える上で、引き続き、米国の金融政策に要注目です。
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