日本株レビュー:大手ゼネコン6銘柄の投資価値をプロが分析!建設・土木株は今後どうなる?
トウシル / 2020年8月25日 7時43分
日本株レビュー:大手ゼネコン6銘柄の投資価値をプロが分析!建設・土木株は今後どうなる?
大手ゼネコンには株価指標で見て割安な銘柄が多い
大手ゼネコン(建設)株には、以下の通り、株価指標で見て割安な銘柄が多数あります。
大手ゼネコンの株価バリュエーション:2020年8月24日時点
コード | 銘柄名 | 株価:円 | 配当利回り | PER:倍 | PBR:倍 |
---|---|---|---|---|---|
1801 | 大成建設 | 3,495.0 | 3.7% | 13.0 | 0.97 |
1802 | 大林組 | 1,002.0 | 3.2% | 7.6 | 0.86 |
1803 | 清水建設 | 801.0 | 3.0% | 10.0 | 0.83 |
1812 | 鹿島建設 | 1,299.0 | 3.8% | 8.3 | 0.82 |
1893 | 五洋建設 | 647.0 | 3.1% | 10.0 | 1.31 |
1824 | 前田建設工業 | 770.0 | 2.6% | 14.2 | 0.61 |
出所:各社決算資料より作成。配当利回りは、今期(2021年3月期)1株当たり配当金(会社予想)を8月24日株価で割って算出。PER(株価収益率)は、8月24日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出 |
利益も配当もきちんと出しているのに、将来に対する不安から株価が低迷しているため、結果的に株価バリュエーションで見て、割安となっています。
2020年まで繁忙と言われてきたゼネコン業界、2021年以降はどうなる?
建設・土木業は、2016年ころから「東京五輪まで超繁忙が続く」と言われてきました。実際、2020年にかけて大型プロジェクトが目白押しでした。東北復興・リニア新幹線・東京五輪・国土強靭化などです。さらに、都心部で再開発プロジュクトが多数ありました。
ただし、「東京五輪後には仕事ががくんと減る」とも言われてきました。そのイメージがあるため、建設株は、利益が増えても2018年以降、株価は低迷してきました。
ついに、2020年となりました。東京五輪は1年延期されました。大型プロジェクトはピークアウトしつつあります。コロナ・ショックの影響もあり、都心の再開発ブームもピークアウトしそうです。ただし、それでも3~4年前に言われていたように、2021年にいきなり仕事ががくんと減ることはなさそうです。
建設需要は低下しそうですが、土木、特に防災分野は、やることが山積しています。最近注目を浴びているのは、集中豪雨による水害に対する備えです。今のままでは、夏のゲリラ豪雨や大型台風によって河川の決壊などが懸念される地域が各地に残っています。
また、地震や津波に対する備えもまだ十分ではありません。老朽化した社会インフラのリニューアルも必要です。予算の手当てがつくならば、土木事業はこれから拡大していくと考えられます。
分散投資として、大手ゼネコンに少し投資してみても良いと判断
株価が割安で、配当利回りも3%台で高めの銘柄が多いことから、大手ゼネコン株にも、少し分散投資していって良いと考えています。ただし、来期以降の業界環境に不透明要因があるので、まだ積極投資する条件は整っていないと思います。あくまでも分散投資として、株価が割安と考えられるうちに少しだけ投資してみる、というところです。
今期は、コロナ・ショックの影響で建設工事が滞った影響から、建設業界全般に、業績悪化が目立ちます。建設工事が再開されても、コロナ対策で、コストアップが見込まれます。今は、建設よりも土木に強みのある銘柄の方が、投資価値が高いと思います。
バブル崩壊を経て復活した日本の大手ゼネコン
以下、ご参考まで、ゼネコン株の過去約30年の推移を簡単にレビューします。まず、建設業株価指数の推移をご覧ください。
東証一部・建設業株価指数の月次推移:1993年末~2020年8月(24日まで)
【1】1990年代:バブル崩壊期
大手ゼネコン株は、1980年代後半、不動産・建設バブルで高騰しました。1990年代に入ってからは、バブル崩壊で暴落しました。1980年代後半に、ゴルフ場への投資を膨らませた建設・土木業は、1990年代は、財務内容が悪化し、破綻も増えました。
1995年に阪神淡路大震災が起こった時、復興需要が出る思惑で、一時株価が上がりましたが、すぐにまた急落に転じました。まだ不動産・建設バブル崩壊中だったからです。
【2】2007年ミニバブルで復活、ミニバブルはすぐに崩壊
2003年を過ぎ、建設・不動産バブルの処理が終わると、建設業の株価はようやく底打ちしました。2007年の「不動産ミニバブル」に向けて、再び、株価上昇が続きました。
ところが、2007年のミニバブルは、2008年にリーマン・ショックが起こると、あえなく崩壊しました。2008年以降、不動産価格が下落する中、再び建設業も不況入りしました。
【3】アベノミクスで復活
2013年、アベノミクスがスタートすると、建設株は次のブームを迎えます。「アベノミクスの3本の矢(3つの基本戦略)」の2本目に、「機動的な財政」が挙げられ、10兆円の公共投資が発動されました。不動産価格も底打ち、民間の建設ブームも復活しました。
そのうち東京五輪・リニア新幹線・国土強靭化政策などのプロジュクトがスタートし、建設業界は活況にわきました。ただし、2013~2014年は、過当競争体質が変わらず、採算無視の受注が多かったため、建設業界は「利益なき繁忙」に陥りました。
やがて、人手不足から施工能力に限界が生じ、ゼネコンは選別受注を始めました。そこから、建設粗利が改善し、建設会社の利益拡大が進みました。2014年ころから「利益なき繁忙」が終わり、「利益拡大をともなう繁忙」に変わりました。
2014年10月に消費税が引き上げられましたが、その時、「消費税引き上げを下請けに転嫁するのは禁止」と政府から指示が出ました。公共投資について、あまり厳しく競争入札を実施して、価格を下げさせてはいけないとする風潮が広がりました。公共投資の価格を低く決めると、採算に苦しむ建設会社が下請けにしわ寄せするので良くないと言われました。その後、公共投資の受注採算も改善しました。
その後、大手ゼネコンは軒並み最高益を更新しました。ところが、株価は2018年以降、下がるようになりました。2020年まで繁忙で、その後、仕事が減るとの見方がでたことにもよります。また、以下のような悪材料が続いたことも、株価が売られる要因となりました。
◆建設業界に不正建築が次々と見つかったこと
◆リニア新幹線で談合問題が起きたこと
◆東京五輪や、豊洲(築地新市場)関連の工事で価格が高過ぎると問題視する動きが広がり、一部価格の引き下げもあったこと。
こうしたニュースフローが、ゼネコン業界にネガティブに響きました。
2020年コロナ・ショックによる、建設工事遅延で、大手ゼネコンの業績は軒並み悪化しました。ただし、株価ははやくから低迷していたので、減益でもPERなどのバリュエーションで、ゼネコン株は割安と判断できる低い水準にあります。
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(窪田 真之)
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