資産運用で人格を磨く(2)増やそうと思わなくなった時に、資産は勝手に増える
トウシル / 2020年8月27日 5時10分
資産運用で人格を磨く(2)増やそうと思わなくなった時に、資産は勝手に増える
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資産運用の成功は「やり方」ではなく「心理」で決まる
「増やそうと本当に思わなくなった時に、資産は勝手に増えると言われても、そもそも資産運用って、増やすためにやっているんじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。私はセミナーを開催していますが、このことを最初にお伝えすると、「こっちは増やそうと思って来ているのに」となってしまうので、お話しをするとしても、セミナー後にしています。
セミナーで、一通りお話しをした後であれば、真逆のように見えることが「そういうことか」と共感いただけるようになります。資産運用の構造は「増やそうと思わなくなった時に増える」になっていると、私には見えています。
中学3年からの自己投資の経験、2000年からは証券マンとして多くのお客様とやり取りをした経験から、資産運用でうまくいくかいかないかは、やり方ではなく、その前段階にある心理で決まっているという考えに至っています。その心理とは、高揚感、欲、妬み、不安、恐れ、恨み、怒りといった“一喜一憂”の心理で、うまくいかない人ほど、この一喜一憂が強く出ているように見えます。
高揚感:「こんなに資産が増えるなんて、すごい!」
欲:「もっと投資をすれば、もっともうけられる!」
妬み:「他の人は資産を増やしているのに、自分は増やせていない。」
不安、恐れ:「大切な生活資金を減らしてしまった。どうしよう。」
恨み、怒り:「資産が減ったのはあの人のせいだ!」
これまでを振り返ってみて、「自分もそういう思いになったことがある」という方もいるでしょう。
この一喜一憂の心理が一部でも出てくると、上がれば上がるほど「もっともっと!」とお金を投じていき、下がると怖くて踏み込めない、もしくはさらに下がると思うと売りたくなるという傾向になってきます。結果として、「高いところで買い、低いところで買えない、もしくは売ってしまう」を繰り返して、資産を減らしてしまうのです。
次のような経験をした方もいるのではないでしょうか?
運用を始めた時は、「とりあえず、どのようなものか試してみよう」と慎重に始めて、マーケットが上昇して資産が増えると、「やはり運用したほうがいいな」と思って、置いていた現金をより投資に回していく。実は、これが「高いところを買う」をしているのです。
また、3月のコロナショックのときに、初めて青ざめた方もいるのではないでしょうか? 資産が減って怖い思いをしたことがない間は、「自分は大丈夫」と思っていますが、許容範囲を超えた下落がやってきたときに、初めて怖い思いをして、「運用なんて、やらなきゃよかった」となるのです。
この一喜一憂の心理は、「増やそう」と思えば思うほど、もしくは「減らしたくない」と思えば思うほど強く出てきて、結果、運用はうまくいかない方向にいきます。
これは、営業の仕事における構造に、とてもよく似ています。営業マンがお客様を獲得しようとして、売り込めば売り込むほど、お客様は引いてしまいます。本人は頑張っているのですが、やればやるほどお客様は離れていく。そして、どこかの時点で「あれっ、売り込まないほうがお客様になってくれる」と気付き、売り込むのをやめた結果、お客様ができていきます。
このように、一見正しいと思えることの真逆に答えがある。この構造に似ていると思っています。
増やそうと思わない、減っても動じない境地にたどり着くには?
鍵となるのは、いかに増やそうと思わない境地に行けるか、減っても動じない境地に行けるかです。
老子の言葉に「足るを知る」というものがあります。『「もっと」「まだ足りない」と思うから、欲が出たり、不安になったりする。今ですでに十分だと思えば、心は満たされ、穏やかでいられる』という意味です。ここに答えがあります。
資産運用において「今のままですでに十分だ」と心底から思うことです。たとえ、資産規模が少なくても「すでに十分」なのです。本当にそう思えた時に、一喜一憂は消えます。
一喜一憂が消えれば、下がった時でも怖いという感情が出てくることなく、冷静沈着でいられるので、買うことができ、資産を増やすことができるのです。
だからといって「そうか、今で十分だと思って、増やそうと思わなければ資産は増えるんだな。では、増やそうと思わないようにしよう!」では、資産は増えないでしょう。そうして運用を続けていった結果、おそらく「増やそうと思わなければ資産は増えると言われたので、そう思わないようにしたのに、増えないじゃないか」となると思います。
みなさまもお気付きだと思いますが、「増やそうと思わなければ資産は増えるんだな」という言葉の中に、「増やそう」という思いが含まれているからです。
繰り返しになりますが、心底から「今すでに十分だ」と思うことです。すでに十分なのです。そして、もし一喜一憂してしまったら、一喜一憂している自分に気づき、「また来たね。さようなら」と横に置き続けることです。
このことを続けていけば、いつしか、一喜一憂しない心を手に入れていることでしょう。その時は、きっと資産運用の結果も付いてきていることでしょう。
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(白石 定之)
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