首相辞任でざわついた日本株、上昇トレンドは継続中。今週の焦点をチェック
トウシル / 2020年8月31日 12時19分
首相辞任でざわついた日本株、上昇トレンドは継続中。今週の焦点をチェック
8月28日の日経平均、一時700円の急落も相場崩れず
先週末8月28日(金)の日経平均終値は2万2,882円でした。前週末終値(2万2,920円)からは38円の小幅安、週足ベースでは2週連続の下落です。
週末28日(金)の14時過ぎまでの日経平均は2万3,300円台で推移するなど堅調だったのですが、突如として市場を揺るがしたのは、「安倍首相が辞任の意向を固めた」という一報です。
■(図1)日経平均(1分足)の動き(2020年8月28日の取引)
こうした動きを1分足チャートで見てみると、14時5分過ぎから10分までのわずか数分間で2万3,300円台から2万2,600円台割れまで約700円の急落を見せたことが分かります。
その後は乱高下となり、途中2万3,000円台を回復する場面も見せつつ、結局この日は前日比326円安で取引を終えています。辞任というキーワードのインパクトで市場がざわついたものの、ひとまず下げ幅を縮小させる動きとなり、相場が崩れなかったことは前向きに捉えて良いと思います。
上値重いが下値も堅い。想定レンジは?
続いて、日足チャートでも先週の動きを確認します。
■(図2)日経平均(日足)の動き(2020年8月28日取引終了時点)
先週の日経平均をローソク足でたどると、25日(火)の取引で「窓」を空けて上昇して2万3,000円台に乗せ、直近高値(8月14日の2万3,338円)も超えてきました。
以降も2万3,000円台超えを維持していましたが、週末28日(金)の下落によって、結局は「窓空け後に失速」というパターンが繰り返された格好です。上値の重たさは相変わらずと言えます。
その一方で下値も堅いです。株価と移動平均線との位置関係では、終値ベースで25日移動平均線上を維持しているほか、その下には75日・200日移動平均線も控えています。さらに、週末の先物取引市場でも大阪取引所で2万2,940円、CME(シカゴ)で2万2,950円と上昇して終えており、日足チャートからも相場が崩れていないことが分かります。
しばらくは、2万3,000円台回復をにらみつつ、6月に形成した「三角保ち合い」の上値と下値のラインの延長線の範囲が基本の想定レンジになりそうです。
首相辞任とジャクソンホールの初期反応に対する修正に注目
従って、安倍首相の辞任に対する相場の初期反応は今のところ限定的です。また、初期反応といえば、先週開催されたジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀が主催する経済シンポジウム)についても押さえておく必要があります。
パウエル米FRB(米連邦準備制度理事会)議長が行った基調講演では、インフレ率が2%を上回ることを一時的に容認する「平均インフレ目標」が打ち出され、これを受けた米国の金融市場は、株高や長期金利の上昇、ドル高/円安に金価格の上昇という、全体的にかなり前向きな初期反応を見せています。
そのため、今週の株式市場は、安倍首相辞任とジャクソンホールの2つの初期反応に対して修正や見直しが行われるかが焦点になります。
前者の安倍首相辞任については、後継者候補の絞り込みや決定までの経緯がまだ確定していないこと、そして、これまでの長期安定政権が終焉(しゅうえん)を迎えたことによる海外投資家の日本株に対する評価が低下したり、日銀との連携などに対する懸念については、新リーダーの政策スタンス次第になります。もともと政治的材料は「蓋を開けてみなければわからない」要素が強く、観測報道の内容で株価が短期的に上下すると思われますが、市場が中期的な視点で織り込みにいくにはまだ難しい状況と考えられます。
また、後者の米FRBの金融政策の見直しについては、株式市場はゼロ金利政策の長期継続観測で上昇する一方、債券市場では短期金利の低下と長期金利の上昇観測によって、調達コストの低下と運用成果への期待が高まっています。史上最高値を更新している米S&P500やNASDAQの上昇基調が今週も継続すれば日本株も引っ張られる格好で落ち着きを取り戻すことができそうです。
ただし、パウエルFRB議長の講演では、物価上昇までの道のりや経済持ち直しのスケジュール感と実現の見通し、具体的な政策手段についての言及はなく、先ほどの市場の反応はどちらかというとアナウンス効果によるものが大きい面があり、今後それぞれの市場で動きが異なってくることも考えられます。実際に、ドル買いとなっていた為替市場も、その後はドル売りへと転換し、1ドル=107円近くまで円安が進んだあと、105円前半までの円高となっています。
ちなみに、下の図3は週足の日経平均とドル/円の推移ですが、為替市場が1ドル=105円あたりのとき、株式市場が低迷していることが多くなっており、意識されやすい水準と思われます。さらに円高が進んだ場合には注意が必要かもしれません。
■(図3)日経平均と米ドル/日本円のチャート(週足)(2020年8月28日取引終了時点)
日経平均は戻り基調の上昇トレンド継続中
確かに、足元の相場環境の不透明度が増していますが、チャートの形状からはトレンドの転換など、いまのところ大きな変化は見られていません。下の図4は日経平均が底を打った3月19日を起点とした「ギャン・アングル」です。
■(図4)日経平均(日足)の動きとギャン・アングル(2020年8月28日取引終了時点)
3月19日からの日経平均の戻り基調の上昇トレンドは、「1×1ライン」からもみ合いを経て「2×1ライン」を挟んだ動きへと移っていますが、ここを維持できるのか、それとも「3×1ライン」へと向かう動きを見せるのかが今週以降の注目点です。
少し面倒なのは、今週から9月相場入りとなり、来週末(11日)のメジャーSQを控えた思惑が絡んで値動きが荒くなる可能性があることです。トレンド転換のサインなどを間違えて判断してしまうこともあり得るため、メジャーSQまでは思わぬ株価の上振れ・下振れに対して注意が必要になりそうです。
(土信田 雅之)
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