プロが解説!バフェット氏が日本の商社株を買う理由
トウシル / 2020年9月1日 7時13分
プロが解説!バフェット氏が日本の商社株を買う理由
5大商社株がそろって急騰、バフェット氏が5%超取得の発表を受け
米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏は30日、同氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが、1年以上かけて日本の5大商社株をそれぞれ発行済み株式数の5%超まで買っていたと発表しました。
バフェット氏は声明で、「日本の未来と、5つの商社の未来に参画することを楽しみにしている」と述べました。今後の株価次第では、発行済み株式数の9.9%まで買い増す可能性があるといいます。
この発表を受けて8月31日、以下の通り、5大商社株がそろって急騰しました。
5大商社株:2020年8月31日の株価上昇率
コード | 銘柄名 | 31日株価 :円 |
株価 上昇率 |
---|---|---|---|
8058 | 三菱商事 | 2,512.5 | 7.7% |
8001 | 伊藤忠 | 2,723.5 | 4.2% |
8031 | 三井物産 | 1,914.0 | 7.3% |
8053 | 住友商事 | 1,374.5 | 9.1% |
8002 | 丸 紅 | 639.6 | 9.5% |
株価急騰後も、以下の通り、株価バリュエーションで見て、なお割安と考えています。
5大商社株の株価バリュエーション:2020年8月31日時点
銘柄名 | 配当 利回り |
PER | PBR | 1株当たり 配当金 会社予想 |
---|---|---|---|---|
三菱商事 | 5.7% | 18.5倍 | 0.71倍 | 134円 |
伊藤忠 | 3.3% | 10.1倍 | 1.31倍 | 88円 |
三井物産 | 4.4% | 17.8倍 | 0.83倍 | 80円 |
住友商事 | 5.4% | ー | 0.69倍 | 70円 |
丸 紅 | 2.5% | 11.1倍 | 0.71倍 | 15円 |
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは今期(2021年3月期)1株当たり配当金(会社予想)を8月31日株価で割って算出。PERは、8月31日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出 |
5大商社株に「買い」の投資判断を継続します。投資判断の根拠については、先週木曜日に書いた以下のレポートをご参照ください。
2020年8月26日:配当利回り4~5%台も!総合商社の投資価値を見直し
なぜ今、バフェット氏は日本の商社株を買うのか?
私は、20年以上前、ファンドマネージャー時代から5大商社の経営説明会に足しげく通い、分析レポートを何回も書いてきました。また、個人的にウォーレン・バフェット氏に強い関心を持ち、バリューを基軸とした運用手法を研究してきました。
したがって、バフェット氏の考えから、日本の5大商社がとても魅力的な投資対象と映ることは、よく理解できます。ただし、バフェット氏が、ここまで本腰を入れて日本株を買い始めるとは思ってもいなかったので、今回の発表には驚きました。
バフェット氏の運用手法の根底に、バリュー(株価割安度)重視があります。「本源的価値を大きく割り込んでいる株に投資する」ことを、若いころから常に追求してきたバフェット氏は、米国経済に強気で、米国株中心に投資してきました。しかし近年、世界中の投資資金が米国に集中し米国株に割安銘柄が少なくなってきたことに悩んでいました。
そこで、とうとう日本株に投資対象を広げたものと考えられます。彼の目から見て、割安で投資価値の高い、日本の5大商社株に長期投資を始めたと考えられます。
ウォーレン・バフェット氏の言葉を聞くため世界中から何万人もの投資家がオマハに集まる
米国株投資で高い実績をあげたウォーレン・バフェット氏は、「オマハの賢人」として、世界中で知られています。コロナ危機が起こる前は、彼の言葉を直接聞こうと、米国中西部のオマハで行われる運用報告会に、世界中から何万人もの投資家が集まっていました。バフェット氏は、この運用報告会で、次々と出てくる質問に1つ1つ丁寧に答え、その発言は、世界中で報道されます。
バフェット氏は日本でも有名で、彼の運用手法について書かれた「バフェット本」が書店にたくさん並んでいます。ただし、バフェット氏自身は、自ら投資教育の本を書いたことはありません。彼が書き続けているのは、自ら運用している投資会社(バークシャー・ハサウェイ)の株主(投資家)に当てた手紙だけです。それを参考に、バフェット氏の投資手法を研究した本がたくさん出版されているということです。
時代とともに変わる運用手法、若い頃はバリュー(割安)重視
「バフェット氏の運用手法」と一言でいっても、若年期と壮年期で異なります。無名だった若年期にはハゲタカ・ファンド張りのディープ・バリュー(激安)株投資で荒稼ぎしていたこともあります。運用手法の根底に、バリュー重視があります。ただし、年とともに、グロースを重視しました。
ただ、根底には、常にバリューを考えながら投資銘柄を選ぶ慎重さがあります。運用で「勝つ」ことを考えつつも、常に「大負け」しないようにリスクをコントロールしてきたからです。それが、グロースを重視しつつ、バリューも見る運用手法につながっていったと思います。日本の個人投資家にとって、参考になる知恵がバフェット氏の言葉にたくさん詰まっていると思います。
ウォーレン・バフェット氏の言葉に学ぶ
バリュー(割安株)運用で高い運用利回りを上げて有名になったウォーレン・バフェット氏の、若い頃の言葉を紹介する著作を、私は原書で読んだことがあります。「Warren Buffett’s Ground Rules(ウォーレン・バフェットのグラウンド・ルール)」(Jeremy C. Miller著)です。バフェット氏が若い頃、投資家向けに書いた手紙が紹介されています。私が、25年のファンドマネージャー時代にやってきたバリュー運用に通じる極意が、若きバフェットによって熱く語られており、感動しました。
私が強く共感した言葉を、2つ紹介します(日本語訳は窪田)。
【1】「企業の本源的価値がわかっていれば、それを生かして有利にトレードできる。株価が、本源的価値と比較して、ばかばかしい程、安い水準まで売られた時に買うことで、利益が得られる。」
【2】「最近、新時代の投資哲学を語る人が増えた。その哲学によると、木々が空まで伸びるように上昇し続ける株が出るという。そんな哲学に乗って割高株を高値づかみする位なら、過度に保守的といわれてペナルティを課せられた方がましだ。」
私は、今の日本株に、本源的価値を割り込んでいる株はたくさんあると思います。地味で不人気だが、財務内容が良く、キャッシュフローが潤沢で、安定高収益の会社を探せばいいわけです。価値が高いのに、不人気で株が割安になっているものは、結構あります。5大商社は、バフェット氏から見てわかりやすい「投資価値の高い株」だったと考えられます。
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(窪田 真之)
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