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日本株で割安な業種と銘柄は?-PEGレシオで探る

トウシル / 2017年3月3日 0時0分

日本株で割安な業種と銘柄は?-PEGレシオで探る

日本株で割安な業種と銘柄は?-PEGレシオで探る

今日のポイント

  • トランプ米大統領による議会演説は無難に終了。財政出動の詳細は今月中の予算教書発表待ちに。イベント通過と米債券金利上昇で、ドル円も日経平均も反発の動き。
  • 「利益成長(業績回復)期待を加味した割安度」を比較するための指標として「PEGレシオ」(予想PER÷利益成長率)に注目。東証17業種別の割安感を比較検討してみた。
  • 個別銘柄は、TOPIX100指数構成銘柄(東証時価総額上位100社)をPEGレシオで分析。業績回復が見込まれる電機、市況関連、自動車株などが割安銘柄として浮上している。

(1)米大統領の議会演説を無難に消化

為替相場や株式市場が警戒していたトランプ米大統領による議会演説(2月28日)は、想定された範囲の内容で無事通過しました。「分断された米国をひとつにしたい」との意欲をみせるなど、「意外に大統領らしい落ち着いたスピーチだった」との評価も多く、市場に安堵感を広める結果ともなりました。期待された財政政策を巡る発言は、「大規模な法人減税」や「1兆ドルのインフラ投資を議会に提案する」と述べるに留まり、税制改革などの詳細は今月中に見込まれる「予算教書」の発表待ちとなりそうです。一方、米景気指標が堅調で、米債利回りが反転上昇の兆しを見せており、ドル円には底入れ感が出ています。目先は、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長による講演(3日)、米雇用統計発表(10日)、FOMC(連邦公開市場委員会、14-15日)、オランダ総選挙(15日)などの結果や行方を見極める動きが想定されます。高値警戒感が燻る米国株の反落リスクには要注意ですが、ドル円の戻り基調に合わせ、日経平均は徐々に下値を切り上げる展開を見込んでいます。

<図表1:米ダウ平均、日経平均、ドル円の推移>

(出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2017年3月2日))

(2)「PEGレシオ」で業績期待を加味した割安感を探る

一般的に、株式が「割安なのか割高なのか」を判断するモノサシとして、PER(株価収益率)を比較する方法があります。ただ、「利益成長(業績回復)期待を加味した割安度」を知る上で参考となる指標として「PEGレシオ」もありますのでご紹介したいと思います。PEGレシオは、「予想PER÷予想利益成長率」(PER÷Growth)で計算され、レシオ(倍率)が低いほど、「利益成長(業績回復)予想を加味したPER面で比較的割安」と判断されます。

図表2は、東証17業種株価指数について、①今後2年の予想平均増減益率(2017年と18年の暦年予想EPS(1株当り利益)の前年比増減益率平均)、②2017年の予想PER、③予想PEGレシオ(=②17年予想PER÷①今後2年の予想平均増減益率)、を示したものです。TOPIX(市場平均)は、今後2年で利益(EPS)が年平均15.7%で伸びると見込まれており、予想PERは約16.0倍。従って、PEGレシオは1.02倍(=16.0÷15.7)と計算されます。東証17業種で比較すると、「商社・卸売」「運輸・物流」「鉄鋼・非鉄」「電機・精密」「建設・資材」が1.0倍を下回り、業績回復期待を考慮した上での相対的な割安感がみてとれます。

図表2:PEGレシオで分析する割安業種

(注:予想暦年増減益率は、予想EPS(1株当り利益/暦年調整)の前年比伸び率/Bloomberg集計による市場予想平均)
(注:東証17業種指数を「予想PEGレシオ(予想PER÷今後2年(予)平均増減益率)」の低い順に表示したものです)
(出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2017年3月2日))

(3)PEGレシオで比較検討した割安銘柄は?

個別銘柄ではどうでしょう。本稿では、TOPIX100指数(東証上場時価総額上位100銘柄で構成される指数)をユニバース(銘柄の母集団)にし、PEGレシオのみで割安感が強い銘柄を10社のみ一覧しました(図表3)。その結果、18年度(17年4月-18年3月)と19年度(18年4月-19年3月)の予想利益(EPS)成長率平均を加味した割安度の1位はソニー(6758)となりました。業績の急回復が注目されているソニーのEPS成長率は、18年度は前年比+401.1%、19年度は同+14.9%が見込まれており、「今後2年予想平均増減益率(利益成長率)」は+208%と試算されます。予想PER(18年度)は17.5倍ですので、PEGレシオは0.08倍(17.5÷208)と計算されます。2位のジェイエフイーホールディングス(5411)、3位の新日鐵住金(5401)、6位の国際石油開発定石(1605)などは、世界景気の回復を背景とした資源市況・鉄鋼市況の持ち直しで業績回復期待が強く、PEGレシオは低位に留まっています。また、米トランプ政権による保護貿易政策や為替政策を巡る不透明感で一時下落した自動車株で、マツダ(7261)富士重工(7270)のPEGレシオも低位にあることがわかります。単にPERのみで割安度を判断するより、成長見通し(業績回復期待)を加味したPEGレシオで比較した方が、割安感の検討には適しているように思います。ただ、本稿での成長見通しは市場予想平均(アナリストによる予想の平均)にもとづくもので、今後の経営環境の変化次第で修正(上方修正や下方修正)される可能性があり、確定した数値ではないことに注意が必要です。なお、PEGレシオは本来「成長株投資に有効」とされますが、成長(業績回復)期待を加味した割安感を比較する上で、(調査アナリスト数が多い)大型株についても投資判断の「目安」(参考情報)の一つになると考えています。

図表3:PEGレシオで分析する割安銘柄

(注:予想増減益率は予想EPS(1株当り利益/年度調整)の前年比伸び率/Bloomberg集計による市場予想平均)
(注:東証17業種指数を「予想PEGレシオの低い順に10銘柄のみを表示したものです)
(出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2017年3月2日))

(香川 睦)

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