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「空売り」で売買技術の向上を目指そう

トウシル / 2014年9月4日 0時0分

「空売り」で売買技術の向上を目指そう

「空売り」で売買技術の向上を目指そう

トレンドに応じた売買や損切りの重要性を肌で感じることができる「空売り」

先日(「売買技術」の重要性(その1)「売買技術」の重要性(その2))のコラムにて、売買技術の重要性をお伝えしました。この売買技術を磨くための効果的なツールがあります。それが「空売り」です。

空売りを通じて、株価のトレンドに応じた売買や損切りを学ぶことができます。

筆者は常々、株価のトレンドに従った売買や適時の損切りがいかに重要かをお伝えしてきました。空売りを実際に経験してみると、そのことが良く実感できるはずです。

トレンドに反して空売りを行った場合、得てして「踏み上げ」によりさらなる株価の上昇が生じます。そして、踏み上げにより生じた含み損を、早目に損切りをせずに我慢しているとさらに株価が上昇して含み損がたちまち膨らんでしまいます。

トレンドに反した売買をしたり、損切りを躊躇していると大きな損失に直結する、それが「空売り」なのです。

理不尽な株価上昇は頻繁に生じる

空売りで最も失敗しやすいのは、ファンダメンタルを重視しすぎる投資家です。

確かに、10年単位の長い目で見れば株価は企業業績をはじめとしたファンダメンタルにおおむね連動して動きます。しかし、数年単位では、ファンダメンタルでは到底説明のつかない理不尽な株価の動きをみせることがしばしばあります。

例えば、ファーストリテイリング(9983)は、一般的な感覚では多少贔屓目にみても、業績に比べて株価が高いと判断したくなります。実際、「株価が割高だ」と判断したファンダメンタル派の個人投資家の中には、2013年はじめ頃にファーストリテイリング株の空売りを実行した人も少なくありませんでした(当時の信用売り残高の推移をみればわかります)。当時の株価は20,000円前後でした。

ところが株価はアベノミクス相場の後押しもあって上昇を続けます。この間、一部の個人投資家はナンピン買いならぬ「ナンピン売り」で応戦しましたが、それでも株価上昇は止まりません。結局株価は2013年5月には44,400円まで上昇、最後は空売りの買い戻しを余儀なくされ、せっかくのアベノミクス相場を生かせずに多額の損失を被ってしまったのです。

最近大きく株価が上昇したクラリオン(6796)も、「この株価上昇はファンダメンタルからみておかしい」と考えた個人投資家からの空売りが今年7月ごろから大量に入りました。その頃の株価は300円前後でした。しかし株価上昇は止まらず、8月27日には469円まで上昇、今では空売りの買戻しによる踏み上げが株価上昇の原動力となっています。

この程度ならまだよいですが、最近のソディック(6143)のように、株価600~700円前後で空売りを仕掛けたものの、わずか1カ月で株価が2,000円近くにまで駆け上がってしまった、ということだってあります。

トレンドに逆らわなければ大ケガは未然に防げる

上記でご紹介したファーストリテイリングやクラリオン、ソディックもそうですが、株価が上昇を続けている銘柄の信用売り残高をみると、日々急増しているケースをよく見かけます。これは、逆張りで空売りを実行している個人投資家がかなり存在することを表しています。これには筆者自身驚きを隠せません。筆者の感覚では、「よく逆張りで空売りをして株式市場で生き残っていられるなあ」と感心してしまいます。

ファンダメンタルを重視しすぎるあまり、株価のトレンドに反すると時に致命的な損失を被りかねないのが空売りです。

でも、株価のトレンドに従って売買をするのであれば、例えファンダメンタルからみてこの株価上昇はおかしいと強く感じていたとしても、上昇トレンド途中にある銘柄をトレンドに逆らって空売りすることは避けることができます。また、仮にトレンドに逆らって空売りしてしまっても、含み損が小さいうちに損切りして撤退すれば、ダメージは最小限で済ませることができるのです。

外国人投資家もトレンドに反した空売りで大失敗している

実は、逆張りの空売りで失敗しているのは個人投資家だけではありません。外国人投資家も、トレンドを無視した逆張りの空売りで大きな損失を被っているのです。

今年に入ってからの例でいうと、日本マイクロニクス(6871)やミクシィ(2121)の空売りで外資系証券が数十億円規模の損失を被ったのではないか、とも言われています。

日本マイクロニクスやミクシィは制度信用銘柄ではないので個人投資家は原則として空売りができません。多少の誤解を恐れずに言えば、これらの銘柄は個人投資家の買いパワーが外資系証券の空売りを打ち負かした事例であるといえます。

繰り返しになりますが、これらの事実から分かるのは、空売りを逆張りで実行すると大きな損失につながりかねないということです。

資金に余力のある外国人投資家であれば、空売りの失敗で多少の損失が生じても平気ですが、資金に制約のある個人投資家は、下手をすれば致命傷になりかねません。大損したくなければ、逆張りの空売りは行うべきではありません。

空売りの実行・筆者ならここに注意する

ここで、筆者が空売りを実行するうえで注意しているポイントを簡単にまとめておきます。これは筆者なりの売買技術といってもよいかもしれません。

  1. 信用売り残高の多い銘柄、特に最近になって信用売り残高が急増している銘柄は避ける(信用売り残高の多い銘柄は踏み上げが起こりやすいため、それを事前に回避)
  2. 空売りを新規実行する際、トレンドに逆らった逆張りはしない(トレンドは主に25日移動平均線と株価の位置関係から判断)

具体的には、以下のようなタイミングで新規実行及び損切りを行います。

ア.25日移動平均線割れで空売り実行→25日移動平均線超えで損切り・決済

イ.天井からの下落で空売り実行→天井超えで損切り

ウ.二番天井からの下落で空売り実行→二番天井超えで損切り

上記のうち、最も多用するのはア.です。相場状況によってはウ.を使用することもありますが、イ.はあまり用いません。二番天井が確認できるまでは株価のトレンドが下向きになったと判断することができないためです。

無理せず少額資金で練習して売買技術の向上を

もちろん、空売りは信用取引ですからリスクが高いことは言うまでもありません。したがって、売買技術の向上を目的として空売りを行う場合は、「資金を少額にとどめる」、「値動きがあまり大きくない銘柄(発行済み株式数の多い大型株)を選ぶ」などといった点に注意するとよいでしょう。練習ですから、多少の損失を受け入れる余裕のある人は、あえてトレンドに逆らった空売りをしてみて、どのような結果になるかを身をもって経験してみるのも悪くないと思います。

リスクという観点からは空売りは現物買いや信用買いよりも難しいものです。逆に言えば、空売りで大損しないように立ち回ることができれば、株式投資全般で大損することはなくなるはずです。そして、空売りで大損しない立ち回りとは、まさにトレンドに応じた売買と適時の損切りに尽きるのです。

個人投資家が行うファンダメンタル分析は、得てして正確性が低く中途半端なものになりがちです。それなのにファンダメンタルのみで株式投資を実践しようとする個人投資家は大勢います。

少額でもよいですから一度ファンダメンタルを重視した空売りを実践して(できれば)失敗し、売買技術の重要性を肌で感じ取ることをお勧めします。

(足立 武志)

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