裁定買い残の変化から考える日経平均の下値メド
トウシル / 2016年1月15日 0時0分
裁定買い残の変化から考える日経平均の下値メド
14日の日経平均は前日比474円安の17,240円でした。一時771円安の16,944円まで下がりましたが、引けにかけて下げ幅を縮小しました。
今日は、裁定買い残高の変化から、日経平均の目先の下値メドがいくらになるか考えます。
(1)裁定買い残高が2.6兆円まで減少
日本取引所グループが14日に発表した1月8日時点の裁定買い残高は2兆5,597億円と、昨年末の3兆3,018億円から、7,421億円減少しました。年初より外国人投資家から株価指数先物に大量の売りが出たことに伴い、裁定解消売りが増え、裁定買い残高が急速に減少しています。
最初に、日経平均と裁定買い残高の関係について、簡単に解説します。グラフでアベノミクススタート後の3年間のデータを見てみましょう。
日経平均の動き(上段)と、裁定買い残高の推移(下段):2013年1月4日―2015年1月8日
(注:日本取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成、日経平均グラフは2015年1月14日まで)
裁定買い残高の変化は、主に外国人投資家による、日経平均先物の投機的な売買動向を表しています。外国人投資家が先物を買うと、先物が現物に対し一時的に割高になるので、裁定業者(主に証券会社)が、先物売り・現物買いの裁定取引を実行します。すると、裁定買い残高が増えます。
今の説明の意味がわからなかった方は、以下の結論だけ覚えてください。
→外国人投資家から先物買いが入ると、裁定買い残高が増加する。
一方、外国人投資家が日経平均先物を売ると、先物が現物に対し一時的に割安になるので、裁定業者が先物買い・現物売りを実行し、裁定取引を解消します。すると、裁定買い残高が減少します。
今の説明がわかりくい方は、結論だけ覚えてください。
→外国人投資家から先物売りが入ると、裁定買い残高が減少する。
今の日本株の短期的な動きを決めているのは、外国人です。とりわけ、足の速いヘッジファンドなどによる先物売買が、短期的な急騰急落に大きく影響しています。したがって、裁定買い残が増加するとき日経平均は上昇し、裁定買い残が減少するとき日経平均が下落する傾向が鮮明です。
したがって、裁定買い残高がピークをつける(増加から減少に転じる)時、日経平均は上昇から下落に転じ、裁定買い残高がボトムをつける(減少から増加に転じる)時、日経平均は下落から上昇に転じることが多くなっています。
裁定買い残がどこでピークをつけるか、どこでボトムをつけるか予想できれば、相場の短期的な転換点を予想できることになります。
(2)裁定買い残高は近年、3.5兆~4兆円まで増えるとピークをつけている
先ほどのグラフを詳しく見てみると、裁定買い残は近年、3.5~4兆円がピークになり、その後減少に転じていることがわかります。裁定買い残高が3.5~4兆円に達したときに日経平均を売ると、その後、短期的に日経平均が下落する確度が高いことがわかります。以下にグラフを再掲します。
日経平均と裁定買い残高の推移:2013年1月4日―2015年1月8日
(注:日本取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成)
(3)裁定買い残高は近年、1.8兆~2.6兆円まで減るとボトムになっている
以下のグラフでわかる通り、近年は裁定買い残が1.8~2.6兆円まで減ると、そこからは増加に転じていることがわかります。
日経平均と裁定買い残高の推移:2013年1月4日―2015年1月8日
(注:日本取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成)
裁定買い残は、1月8日時点で、2.55兆円まで減少しています。今週、さらに裁定解消売りが出ているので、1月14日時点では2.2兆円程度まで減少していると推定されます。1.8~2.6兆円でボトムを打つとすると、ボトム圏に入っていることがわかります。ただし、今がボトムか、さらに1.8兆円まで減るかは、わかりません。
(4)下値リスクはまだ残るものの日経平均は大底圏にあると考えられる
裁定買い残高の変化から、短期的なリバウンド入りの時期が近づいていると推定されます。ただし、裁定買い残だけを見て、大底がどこかピンポイントで当てることはできません。裁定買い残高のボトムが1.8~2.3兆円辺りになると仮定すると、日経平均の目先の底は16,700~17,200円となります。
ただし、裁定買い残は、短期的な相場動向を考える上でのあくまでも参考に過ぎず、最終的には、企業業績によって日経平均の方向性は決まります。これから始まる10-12月決算発表で企業業績動向をしっかり見て、判断していくことが必要と思います。
なお、裁定買い残高が、3.5~4兆円でピークをつけ1.8~2.6兆円でボトムをつけるというのは、近年の傾向を述べているだけで、普遍の法則と考えないでください。過去には裁定買い残が6兆円まで増えたことも1兆円まで減ったこともあります。
(窪田 真之)
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