ほったらかしできない投資信託?ブルベア型のメリットは?
トウシル / 2020年10月31日 8時0分
ほったらかしできない投資信託?ブルベア型のメリットは?
投資信託という金融商品は基本的に中長期投資を前提としていますが、実は短期売買に適した投資信託というのも存在します。それが、ブルベア型と呼ばれる商品です。
ブルベア型ファンドは、デリバティブ取引を活用することで、レバレッジ(てこの原理)を効かせ、投資資金の何倍もの投資効果を追求します。このため、基準価額の値動きが荒く、非常にリスクが高いという特徴があります。相場環境に応じた、迅速な投資判断が求められる数少ない投資信託です。
ブルベア型の「ブル」とは、英語で雄牛を意味し、角を下から上に突き上げて攻撃する姿を連想させることから、上昇相場を指します。上昇相場でリターンを期待できるのがブル型の特徴です。
一方、「ベア」とは熊を意味し、熊が爪を振り下ろして攻撃する姿を連想させることから、下落相場を指します。下落相場でリターンを期待できるのがベア型の特徴です。株式投資になじみのある方なら、「空売り」と同じ投資効果が得られると考えると分かりやすいかもしれません。
ブルベア型で本数が最も多いのは、国内株式指数を対象とした商品です。一般的に、日本株ブル型は日経平均先物を買い建てることで、また、日本株ベア型は日経平均先物を売り建てることで、日々の基準価額の値動きが国内株式市場全体(実態的には日経平均株価)の値動きの数倍程度になるよう運用が行われます。この倍率(レバレッジ)の大きさは商品によって異なり、2倍程度から高いものだと4.3倍まで展開されています。レバレッジの大きい商品ほど高いリターンを期待できる一方、相場が思わぬ方向に動いたときの損失は大きくなります。
では今回も、クイズを通して、ブルベア型ファンドについて理解を深めていただきましょう。
いかがでしょうか。ブルベア型には、海外の株価指数の値動きを参照する商品もありますが、今回はひとまず国内株式型を想定して考えてみてください。ブルベア型の基本的な商品の仕組みは、参照する株価指数が違っても基本的に同じです。それでは、答えを見ていきましょう。
1:日経225連動型インデックスファンドの1年騰落率が+10.0%だった場合、同期間の「楽天日本株4.3倍ブル」の騰落率は+43.0%程度である?
解答:×
レバレッジの倍率と基準価額の値動きが同程度になるのは、あくまで「前日」と比較した場合です。最終的な投資成果が「4.3倍」になるわけではありません。
ここで、「4.3倍ブル」を想定し、2日以上離れた2時点間の株価指数と、投資信託の基準価額の推移を見てみましょう。基準日の株価指数を100とし、その後3日間の騰落率が+5%、▲10%、+5%であったとします。株価指数と「4.3倍ブル」の騰落率を「前日比」でみると4.3倍になっていますが、基準日との騰落率比較では「2日後」で5.59倍、「3日後」で20.46倍と、4.3倍の投資成果にはなっていないことが分かります。
2日以上離れた2時点間の騰落率比較
2:相場(株価指数)の動きによっては、ブル型とベア型がともに下落することがある?
解答:〇
株価指数が上昇と下落を繰り返す、いわゆる「ボックス圏」の相場では、ブルとベア、双方の投資戦略が裏目に出ることがあります。少々極端な例ではありますが、図のように、対象指数が20日間にわたって連日同じパーセンテージで上昇と下落を繰り返した場合、最終的に、ブル型ファンド、ベア型ファンドのリターンはともに対象の株価指数を下回ってしまっています。このように、対象の指数が上昇と下落を繰り返すと、「負の複利効果」が働いてしまい、基準価額が日々少しずつ下落してしまうのです。
株価が連日3%で上下を繰り返した場合(イメージ)
万人向けではないブルベア型ファンド
以上の2つのケースから分かるのは、ブルベア型ファンドは、市場が一方向に動かないと、どちらに投資してもリターンを期待しにくくなるということです。「ほったらかし」にしたままだと、相場環境によってはズルズルと損失が拡大してしまうことがあるため、特に注意が必要です。
ブルベア型は、決して万人向けではなく、短い投資期間で高いリターンを狙いたいという投資中上級者向けの商品です。初めて挑戦するなら、余裕資金の範囲で、まずは少額で始めることをおすすめします。本コラムでご説明したブルベア型の特徴的な値動きは、実際に保有してみないと実感しにくいためです。「百聞は一見に如(し)かず」の精神でチャレンジしてみてください。
(篠田 尚子)
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