投資信託で失敗する人に共通する「ある」特徴
トウシル / 2020年11月7日 8時0分
投資信託で失敗する人に共通する「ある」特徴
いざ投資信託で資産形成を始めようと思ったとき、「数が多すぎてどう選んだらよいか分からない」と、途方に暮れた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
無理もありません。日本には現在、個人が購入できる国内籍の投資信託が6,000本以上存在します。近年はこの本数にも頭打ち感が出ていますが、それでもなお6,000本というのはとても大きな数字です。そこで今回は、投資信託の選び方について解説します。
いい投資信託選びにはポイントがある?
優良な投資信託を選ぶにあたっての最大のポイントは、絞り込み(これをスクリーニングといいます)とその順番です。決して、6,000本の中から「ダイヤの原石」を見つけようなどと思わないこと。条件を設け、少しずつ商品をスクリーニングしていくのが鉄則です。
実はファンドアナリストも、まずは定量的なスクリーニングを重ねることで優良な投資信託を洗い出しています。その上で、運用会社やファンドマネジャーにインタビューをするなどして、データだけでは分からない運用の裏側の情報を補足し、最終的に「おすすめファンド」を決めています。運用を始めたばかりの早い段階から特定のファンドを推奨することは、よほどの理由がない限りしません。
それでは今回も、クイズを通して優良な投資信託をスクリーニングしていくためのポイントについて見ていきましょう。
いかがでしょうか。先ほど「投資信託選びのポイントは、スクリーニングとその順番」と申し上げましたが、クイズの内容が「スクリーニングの条件としてふさわしいかどうか」という観点で考えてみてください。
1:純資産残高はなるべく大きい方がよい
解答:×
純資産残高は、必ずしも大きければ大きいほどよいというわけではありません。なぜなら、スムーズな運用ができる規模は投資対象によって異なるためです。また、投資している資産によっては、残高を小規模にせざるを得ないケースもあります。時価総額が小さく、流動性に制約のある中小型株、新興市場株などがその代表例です。
ファンドによっては、純資産残高の限度額が数十億円程度に設定されているものもあります。したがって、最初から純資産残高の水準でスクリーニングを行うことはあまりおすすめしません。
純資産残高の適正な水準は、ファンドの運用体制によって異なるため一概には言えませんが、おおむね数百億円から数千億円の間であれば問題ないと考えてよいでしょう。
純資産残高で見るべきポイントは、規模よりも推移です。例えば、100億円以下の残高であっても、少しずつ増加しているなら問題はないでしょう。逆に、数千億円程度あった残高が、短い期間に急減している、あるいは、元々数百億円程度だった残高がじわりじわり減少している、というような場合は注視する必要があります。急速な資金流出によって、運用に支障が出る可能性も考えられるためです。
2:償還までの年数は長ければ長いほどよい
解答:×
投資信託の償還とは、投資信託の運用を終了し、資産の清算を行って、償還日とした時点の保有者に対して、保有している口数に応じたお金を返還することをいいます。償還には、あらかじめ設定されていた期限で償還される「満期償還」と、この期限から前倒しで償還される「繰上償還」の2種類があります。いずれも、投資信託の運用が強制的に終了してしまうので、特に積み立てなど長期の資産形成を目的としている場合、なるべく償還されそうな投資信託は避けたいところです。
償還までの年数(信託期間)をスクリーニングの条件とするかどうかについては、見解が分かれるところですが、筆者は必須の条件とは思っていません。なぜなら、信託期間は運用会社の判断で変更されることがあるためです。償還日が「無期限」となっている投資信託でも、運用会社の判断によって繰上償還されることがある一方、償還日が決まっている投資信託で運用期間が延長されることもあります。残高の積み上げに時間がかかったものや、償還日が近づくにつれて人気が出てきたものだと、現時点の残高が小粒でも延長されることが多々あります。
もうお気づきの方もいらっしゃるでしょう。ここでもやはり、純資産残高の推移が関係してくるのです。つまり、残高が継続的に「増え続けている」商品は、信託期間が延長される可能性が極めて高いのです。
信託期間の他、先述した純資産残高の水準をスクリーニングの最初の条件にしてしまうと、肝心の運用成績が秀でた投資信託を見落としてしまうことになります。信託期間と現時点の残高は、あくまでも副次的な要素として参考程度に見た方がよいでしょう。
3:運用成績の指標で重視すべきは、騰落率よりもシャープレシオである
解答:〇
「シャープレシオ」とは、取ったリスクに対してどれだけリターンをあげることができたかを表した数値です。「リスク控除後リターン」とも呼ばれます。この数値が大きくなるほど、「低いリスクで高いリターンが得られる運用効率がよい投資信託」ということになります。
騰落率よりもシャープレシオを重視すべき理由は簡単です。運用成績に含まれる「偶然」や「まぐれ」の要素を見極めるのに適当だからです。単純な騰落率だけだと、例えば上昇相場で「げたを履かせてもらっていた」かどうかなどの見極めができないのです。可能であれば、シャープレシオは「5年」、短くても「3年」を参照するようにしましょう。
優秀な運用担当者というのは、市場のリスクをいち早く察知し、運用する商品に悪影響が出ないよう、うまくかじ取りができます。特に近年は、プロの投資家も予期できない、困難な相場環境が続いたため、より運用担当者のリスクコントロールの手腕が問われるようになっています。
以上をまとめると、投資信託のスクリーニングの順番は、あくまでもリスク控除後のリターンを優先し、そのあとに残高の水準や償還までの年数を見る、とした方がよいでしょう。
投資信託で失敗する人には特徴がある!
投資信託で失敗する人の特徴の一つとして、最も肝心な「入口」の銘柄選びの段階で怠けてしまうということが挙げられます。「売れ筋」「低コスト」「(直近の)好成績」といった、分かりやすく聞こえのよい切り口で選ばれた投資信託が、必ずしもその人に適したものであるとは限りません。人生の選択や、現在置かれている状況は人それぞれ異なるからです。
投資信託を選ぶ際はやはり、単純なリターンの高さだけでなく、そのリターンを得るために負うリスクの大小も考慮に入れる必要があります。
例えば、「増やしたい」のイメージが、「老後資金をつくるためにしっかり」なのか、退職金などのまとまったお金が「インフレに勝てる程度」で十分なのか。運用をする目的と、投資資金の性格を明確にし、それに合った商品を組み合わせることができれば、少なくとも大きな失敗は防げます。
(篠田 尚子)
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