インデックス投資のやり方:長期分散投資とバンガード「Stay the Course」の意味
トウシル / 2020年9月23日 6時0分
インデックス投資のやり方:長期分散投資とバンガード「Stay the Course」の意味
2017年9月の誕生から約3年が経過した9月3日、 「楽天・バンガード・ファンド」シリーズの純資産残高合計 が2,000億円を突破 しました。
「楽天・バンガード・ファンド」シリーズは、米国市場に上場されているバンガードETFの(上場投資信託)等を活用した投資信託で、いずれのファンドも、バンガードの創業者、ジョン・ボーグルが提唱した「長期分散投資」を体現しています。
安いだけではダメ。「Stay The Course(航路を守れ)」とは?
バンガード社は、1976年に初の個人投資家向けインデックスファンドを売り出した、低コストインデックス運用のパイオニアともいえる運用会社です。
創業者であるジョン・ボーグルは、生涯にわたって「Stay The Course(航路を守れ)」(どんな状況でも目的地を見失うことなく、航路を守りながら進め)という、投資に対する理念を貫き通しました。
この「航路を守れ」を実践するために、バンガード社は以下の4つの永続的な基本原則に基づく投資哲学を掲げています。
<バンガードの4つの投資哲学>
目標:適切で達成可能な目標設定
分散:幅広く分散した投資商品への適切な資産配分
コスト:低コスト商品への投資
規律:規律を維持した投資戦略の実行
日本でも近年、積立投資家を中心に、インデックスファンドを使った長期分散投資を実践する方が増えています。
インデックスファンドを選択する時点で「低コスト」は実践できているとしても、ボーグルの教えそのものを忠実に守ることはできているでしょうか。
ここからは、ボーグル最後の著書となった「Stay the Course」の中から、バンガード社が2001年にETF市場に参入したときのエピソードをご紹介します。インデックス投資家が守るべき航路について考えさせられるエピソードです。
実はETFにも株式取引にも否定的だったボーグル
意外に思われるかもしれませんが、ボーグルとバンガード社は、最初からETFという金融商品に肯定的だったわけではありません。
むしろ、長年にわたって長期分散投資の重要性を提唱してきたボーグルは、ETFが誕生した1990年代当初、株式のように「リアルタイムで売買できるインデックス」としてのETFの商品性に懐疑的な見方をしていました。
著書の中でボーグルは、いわゆる伝統的なインデックスファンドを「パッシブ(受動的)な投資家が(長期)保有するためのパッシブファンド」、ETFを「アクティブな投資家が売り買いをするためのパッシブファンド」と表現しています。
もともとは前者のようにパッシブ=受動的な投資スタンスでインデックスファンドを保有していた投資家が、ETFによってメンタリティーを刺激され、投機的な取引の「沼」へと引きずり込まれてしまうのではないかと危惧したのです。
というのも、ボーグル自身は、頻繁に売買する株式取引に対して、一貫して否定的なスタンスを示していました。著書の中でも、”I believe that stock trading is ultimately the investor’s enemy”(突き詰めていくと、株式取引というのは投資家にとって敵である)と、株式取引そのものを強い言葉で非難しています。
読者の皆さんの中には、インデックスファンドで資産の一部を「ほったらかし」にしながら、現物株投資をされているという方も多いと思います。
しかし、より厳密にボーグルの教えに従うなら、インデックス投資家というのは、ひたすらに「受動的に、長期にわたって、広範囲で且つ高度に分散されたポートフォリオへの投資」に専念すべきなのです。
満を持して市場参入。残高は約20年で100兆円超えに
話をバンガード社のETF参入に戻しましょう。米国におけるETF市場の目覚ましい成長もあり、バンガード社は2001年、満を持して“Vanguard Total Stock Market ETF”(VTI)を設定し、ETF市場に参入しました。
同ETFが連動を目指すのは、CRSP US Total Market Indexという、米国株式市場に上場する約4,000もの投資可能銘柄を網羅した指数です。
日本の投資家にもなじみの深い、S&P500指数の対象は500銘柄ですから、CRSP US Total Market Indexがいかに分散された指数かということが分かります。
その後、バンガード社は、グロース株、バリュー株、中小型株など、様々な指数に連動するETFを投入してきましたが、日本円にして約102兆円(9,742億米ドル。2020年8月末時点。)もの資産残高を誇るVTIは、現在も同社の看板ファンドの1つとなっています。
なお、「楽天・バンガード・ファンド」シリーズの「楽天・全米株式インデックス・ファンド」は、VTIへの投資を通じて、実質的にCRSP US Total Market Indexへの連動を目指すよう設計されています。
重要なのは「インデックスに投資すること」ではない
ボーグルは2019年に亡くなりましたが、広範囲かつ高度に分散されたインデックスと、頻繁に売買することなく長期にわたって投資を続けること、この2つの重要性を説くバンガード社の姿勢は、現在も全く変わっていません。
最近は、「インデックスに投資すること」に固執するあまり、本来、コストと並んで重要視されるべき「長期」、「分散」という2つのキーワードの影がどこか薄くなっているようにも感じられます。
インデックス投資というのは、10年、20年、30年と続けることで力を発揮するものです。市場の見通しがはっきりしない今のようなときこそ、一度立ち止まって「航路を守る」ことができているか確認したいところです。
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