スガノミクス関連株を品定め!「政策に売りなし」の有望筋は?
トウシル / 2020年10月6日 7時0分
スガノミクス関連株を品定め!「政策に売りなし」の有望筋は?
「スガノミクス」銘柄がにぎわう
株式市場は10月相場入りとなりました。9月の日本株は、米国株が大きく下落する場面を見せる一方で、日経平均がおおむね2万3,000円台をキープし、比較的堅調に推移した他、マザーズ指数が年初来高値を更新するなど、日本株と米国株の「デカップリング」のような動きとなりました。
こうした日本株の堅調さの背景には、(1)夏場の米株上昇についていけなかった分、下落にもついていかなかったことや、(2)新政権誕生による期待で買える銘柄が存在していること、(3)米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による商社株買いをきっかけとした日本株の見直し気運の高まり、(4)日本銀行によるETF(上場投資信託)買い期待などが挙げられます。
とりわけ、(2)については、菅新政権下で推進を図っているデジタル庁関連銘柄を筆頭に、いわゆる「スガノミクス」銘柄の売買がにぎわいを見せるなど、相場格言にある「政策に売りなし」を地でいく印象になっています。
その他のスガノミクス関連銘柄の主な項目については、いろいろな区分の仕方があると思いますが、ざっくり分けると下記のようなイメージです。
図1:「スガノミクス」関連銘柄の項目
項目 | 内容 |
---|---|
(A)行政のデジタル化 | デジタル庁創設、マイナンバーカード推進 |
(B)携帯料金の引き下げ | 携帯料金の引き下げ |
(C)地方の活性化 | 地方銀行再編、ふるさと納税 |
(D)DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進 | 企業変革、オンライン診療、オンライン教育 |
これらの項目をベースに具体的な個別銘柄に落とし込んでいくと、連想ゲームのように対象が広がり、結果的にかなりの銘柄数になります。
本当に期待できる「スガノミクス」銘柄は?
例えば、デジタル庁関連銘柄として注目されているIT bookホールディングス(マ:1447)の株価がなぜ大きく上昇したのかといえば、同社が行政に対して、マイナンバー対応などのコンサルティング業務を行っており、直接的な恩恵が期待できると市場が考えたからです。
図2:IT bookホールディングス(マ:1447)の日足チャート
実際のところ、同社がどこまで業績を伸ばせるかは分かりません。このように政策の恩恵を受けて収益の向上が見込まれそうなものが大きく値を伸ばしますが、その後の継続的な株価上昇は、企業の成長次第となります。
ちなみに、同じデジタル庁関連で買われた銘柄にチェンジ(東1:3962)があります。
図3:チェンジ(東1:3962)の日足チャート
この会社は、子会社がふるさと納税サイトの運営をしている他、企業や公共団体などにIT技術人材の育成サービスやマイナンバーを使った行政サービスの提供を行っています。図3のチャートを見ると、株価がいったんの天井をつけたタイミングは図2のIT bookホールディングスと似ています。
ただし、細かく分析していくと、チェンジの方がかなり以前から上昇基調を辿っていますし、上げ幅も大きくなっています。「マーケットスピードⅡ」の四季報情報などをチェックすれば分かるのですが、利益額の大きさやROE(自己資本利益率)の高さなどの面で、チェンジの方にやや優位性があります。前回も指摘した通り、ファンダメンタルズ分析の視点から、利益力など少しでも会社の中身が良いものを選ぶことが大切です。
つまり、スガノミクス関連株で、同じように株価が上昇したといっても、中長期的な成長性を期待できそうな銘柄と、思惑で買われている銘柄が混在しているため、今後は絞り込みが行われていくことになります。
携帯料金の引き下げ、地方の活性化の有望株は?
となると、(B)携帯料金の引き下げや、(C)地方の活性化については、関連銘柄である携帯事業会社や地銀の収益に対して積極的な恩恵になるとは考えにくいと言えます。
確かに、地銀の統廃合によって経営効率が改善され、収益への期待感もありますが、そもそも地銀を取り巻く経営環境が苦しくなったからこそ、再編の話が浮上していることを踏まえると、やや後ろ向きの成長ストーリーです。
DX銘柄は?
また、(D)についても、DXを推進することによってビジネスや業績を成長させたところが、投資妙味のある銘柄となります。なお、経済産業省と東京証券取引所は、上場企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進し、活用の実績を残している企業を「DX銘柄」として選定し、ウェブサイト上に公開しています。
今後も、IR(統合型リゾート)関連や国産農産物の6次産業化の推進など、スガノミクスをテーマにした新たな項目が浮上し、さまざまな銘柄の取引がにぎわう可能性がありますが、あくまでも銘柄選別のポイントになるのは、中長期的な企業の収益に直結するかどうかになります。
(土信田 雅之)
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