日経平均の株価水準を探る。オクトーバー・サプライズに揺れた株式市場はどうなる?
トウシル / 2020年10月5日 13時24分
日経平均の株価水準を探る。オクトーバー・サプライズに揺れた株式市場はどうなる?
日経平均は上昇と失速を繰り返し、下値切り下げ
「月またぎ」で10月相場入りとなった先週の国内株市場ですが、週末10月2日(金)の日経平均株価終値は2万3,029円となりました。前週末終値(2万3,204円)比では175円安、週足ベースでは3週連続の下落です。
一応、2万3,000円台を維持して終えることができたわけですが、株式市場を取り巻く状況がいわゆる「オクトーバー・サプライズ」によって色々と慌ただしくなり、先行きの相場の視界に霧が立ち込めつつあるような印象を与えた一週間でもありました。
これから今後の相場の行方について考えていきたいと思いますが、まずはいつもの通り、足元の状況から確認します。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2020年10月2日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ってみますと、週初の9月28日(月)に一段高となり、2万3,500円に乗せるスタートとなりました。翌29日(火)の取引も同様の展開で、取引時間中には直近高値(9月14日の2万3,582円)を超え、2万3,622円まで値を伸ばしました。
ところが、週末に向けては大きく失速していくことになります。30日(水)は、個人攻撃の「ディスり合い」となった米大統領選候補の討論会を受けて353円安、続く10月1日(木)は、東証のシステムトラブルで取引が終日停止となり、そして、週末の2日(金)では、新型コロナウイルスの陽性反応が出たというトランプ大統領からの1本のツイッターによって下げ幅が拡大し、一時2万3,000円台を下回る場面もありました。
結果的に、先週も「勢いよく上昇し、直近高値を更新しては失速」という値動きのパターンを繰り返したことになりますが、先週の安値(2万2,951円)に注目すると、直近安値(9月24日の2万3,039円)を下回っており、下値が切り下がっています。
下段のMACDを見ても、シグナルを上抜けできずに下向きが続いており、買いの勢いが弱まっているような格好です。このままMACDが0円ラインを下抜けてしまうと、下げが加速する可能性が出てきます。
今週は国内消費関連企業の決算が相次ぐこともあり、個別物色が中心となりそうな中、日経平均は75日移動平均線をサポートとして意識し、2万3,000円台の維持と25日移動平均線まで戻せるかが焦点になります。
NYダウ一段安のシナリオ回避、一段高も期待できる?
また、先週の値動きは今後の相場の動きを考えていく上で、大きなヒントが隠されているかもしれません。
とりわけ注目されるのは、前半の上昇局面です。上昇のきっかけとなったのは、遅れている米国の追加経済政策の成立に向けて、民主・共和両党で協議が続き、進展への期待が高まったことです。9月の米株下落の主な要因として挙げられるのが、新型コロナウイルスの感染拡大懸念と、この追加経済政策成立の遅れでしたので、その片方の不安が後退した格好です。
実際に、NYダウ平均株価の動きを見ると、75日移動平均線の攻防から上方向に反発し、25日移動平均線水準まで株価を戻してきました(下の図2)。
■(図2)NYダウ(日足)の動き(2020年10月2日取引終了時点)
さらに、直近高値を結んだラインも上抜けている他、週末のトランプ氏のコロナウイルス感染を受けても、今のところ下げが限定的にとどまっていることを見ると、前回のレポートでも指摘した「過熱感の修正から見通しシナリオの修正へと進んで株価が一段安」というシナリオはひとまず回避され、経済政策の成立に向けてさらに進展があれば一段高も期待できる状況です。
とはいえ、油断はできない状況に変わりはなく、トランプ氏のコロナウイルス感染によって、米国の政治面はかなり不透明となりました。選挙戦のスケジュールや勝敗予想行方は、今後のトランプ氏の容体や行動・発言次第で様々な展開が想定される他、先ほどの追加経済政策の成立も影響を受けるかもしれません。政治面の材料は市場が先回りして織り込みにくく、市場のムードも変化しやすいため、その動向には注意です。
NASDAQ平均足は陽転したものの、MACDシグナル下抜けは続く
さらに、これまでのレポートでも懸念していた、NASDAQ(週足)の平均足の陰転とMACDのシグナル下抜けによるトレンド転換のサインについては、先週末時点で平均足が陽転したものの、MACDのシグナル下抜けの状況が続いていることも留意しておく必要があります(下の図3)。
■(図3)NASDAQの平均足(週足)とMACD(2020年10月2日取引終了時点)
トレンド転換のサインが出現後、下げが加速する前に平均足が陽転したことは明るい材料ですが、2019年4~10月の時のように、もみ合いが長期にわたって続くことも想定されます。
日経平均の株価水準と今後のシナリオ
最後に、日経平均の株価水準について見ていきたいと思います。
■(図4)日経平均(日足)のギャン・アングル その1(2020年10月2日取引終了時点)
上の図4は日足の日経平均に、3月19日を起点とした「ギャン・アングル」を描いたものです。
9月の日経平均はおおむね2万3,000~2万3,500円の範囲内での推移となりましたが、こうした横ばいの動きによって、ギャン・アングルでは2×1ラインから3×1ラインへと近づきつつあることが分かります。
現時点の株価水準で2×1ラインに戻すにはかなりの距離があり、強い買い材料の出現や市場ムードの好転が必要となります。そのため、想定シナリオとして現実的なのは、「3×1ラインに沿って上昇できるか?」になります。
さらに、このギャン・アングルとは別に、もうひとつのギャン・アングルを描いていきます。
■(図5)日経平均(日足)のギャン・アングル その2(2020年10月2日取引終了時点)
もうひとつのギャン・アングルは、昨年の8月26日を起点に描いたものです。要は、コロナ・ショックで日経平均が下落する前のトレンドの状況も併せて見てみようというのがねらいです。
昨年の8月26日に2万300円台で底を打った日経平均は、12月の2万4,000円台乗せまでの上昇基調をたどりました。その後は、2万4,000円台乗せの定着を何度か試している最中にコロナ・ショックに見舞われ、トレンドが崩れてしまいました。実際に、日経平均の下げが加速したのは、もうひとつのギャン・アングルにおける8×1ラインを下抜けた箇所であることがわかります。
また、この8×1ラインは、コロナ・ショック後の最初の戻り高値とぶつかっています。つまり、この8×1ラインを本格的に超えて行ければ、コロナ禍を乗り越えた世界に足を踏み入れたと考えることができます。少なくとも、今後の日経平均が8×1ラインを目指しているあいだは、相場に対する見方は強気の判断で良いと思われます。
反対に、最初のギャン・アングルの3×1ラインの下抜けが明確になってくると、相場の基調が下向きに変化し、調整の深押しや長期化が想定されることになります。
9月からの日経平均はレンジ相場が続きましたが、もうしばらくすると大きく動き出す可能性が結構高いと考えることができそうです。
(土信田 雅之)
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