日米株高は続く?波乱の下半期。押し上げ要因と大統領選リスク

トウシル / 2020年10月6日 9時1分

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日米株高は続く?波乱の下半期。押し上げ要因と大統領選リスク

 10月1日はまさかの東京証券取引所のシステム障害による全日取引停止。そして、2日(日本時間)にはトランプ大統領のコロナ陽性が判明し、下半期は波乱の幕開けとなりました。

 株価を見ると、コロナ禍にも関わらず、3月末から9月末の日経平均株価は1万8,917円から2万3,185円へと4,268円も上昇しました。上昇幅は1987年以来、33年ぶりの大きさです。

 先週末終値も2万3,029円とネガティブサプライズが続いたにも関わらず、底堅さを見せました。米国に目を向けても、NYダウは3月末の2万1,917ドルから2万7,682ドル(10月2日終値)へと回復しています。

 トランプ大統領の感染・発症、コロナ再拡大が懸念される状況下であることを考慮すると、強気継続と言って良いでしょう。この株高は続くのか、それとも調整が入るのか、関心が高まっています。

金融政策が株高を後押し。日銀の異次元緩和は継続

 日米の株高の要因を考えると、何といっても無視できない要因は金融政策。まずは日本の金融政策を確認しましょう。

 菅政権の誕生、そして、9月17日の日本銀行の金融政策決定会合とその後の黒田東彦総裁の記者会見で異次元緩和の継続が確実なものとなりました。

 短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用し、長期金利は10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう金利をコントロールするYCC(イールドカーブ・コントロール)が続きます。

 新型コロナが終息して、さらに、経済活動の水準がコロナ前に戻るまでは、経済を下支えする意味でも、国債市場の安定を図る意味でも、金利変動の許容幅は限られたものになるでしょう。

 10年物国債までの価格は高止まりすることになります。また、YCCの対象となる10年を超えた年限の国債についても、日銀当座預金に大量の資金が滞留している状態ですし、年金基金や生命保険の買いが期待できるので、金利上昇余地は限られそうです。

 国債価格が高止まりする(利回りが低い)ので、投資旨味としてはリスク資産に分があります。株式やJ-REIT(日本版・不動産投資信託)の下げ局面では、引き続き、日銀によるETF(上場投資信託)買い、J-REIT買いが期待できるため、リスクプレミアム低下を通じて価格形成も強気になります。

米国も金融緩和継続。円安は輸出企業に追い風

 米国の金融政策も異例の状況が続きます。FRB(米連邦準備制度理事会)は、9月16日にゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで続ける方針を表明しました。

 これにより、短期金利上昇を抑えこみ、長期的なコミットをすることで長期金利の急騰を防ぐことが期待できます。

 コミットしない場合に比べて、「政策変更があるのではないか?」という市場の疑心暗鬼を和らげることができれば、金利のボラティリティを小さくする効果もあります。

 金利が低位で安定すれば、企業の活動にも、株式投資にも望ましい環境を作ることができる、ということです。

 米国の金融政策は日本と異なり、マイナス金利もイールドカーブ・コントロールも採用していません。過度に金利をコントロールしようとすると、市場機能を損なう恐れがありますし、政策変更が難しくなるといった、低すぎる金利の弊害もあります。

 金利が低すぎて、金融機関の収益が損なわれると、貸出に消極的になりますし、金融機関の経営が不安定になって、景気や金融システムに悪影響を及ぼすというリバーサル・レートの問題が生じる恐れがあります。

 FRBは、金利引き下げのメリット・デメリットを勘案して、今のところ、極端な金融政策には慎重のように見えます。

 日米の国債金利に焦点を絞って、あえて簡単な比較をすると、10年物まで金利をコントロールして、それより長い年限の国債金利も上がりにくい日本と、金融政策でコントロールする金利の範囲を限定して、なるべく市場に任せる米国という構図があります。

 やや長い目で見れば、経済の回復につれて、日米の金利差が再び広がる局面で円安になる可能性があり、日本の輸出企業にとっては追い風が吹くかもしれません。

 日米とも金融緩和は継続しますし、米国は資産価格がハイペースで上昇する局面でも「バブルかどうかは弾けるまで分からない。バブル抑制のために金融政策を引き締めると、他部門への弊害が大きい。だから、資産価格上昇は気にせず、もし、バブルが崩壊したら、その対応に全力を注ぐ」という、いわゆるFED(連邦準備制度)ビューに沿った政策をとる傾向があります。

 金融政策だけを考えれば、株高継続と言えそうです。

リスクは、米国の大統領選挙

 次いで、ダウンサイド・リスクを見ていきましょう。

 注目はやはり、米国の大統領選挙。ひと月後の11月3日に迫っています。9月30日の大統領選討論会を受けて、民主党のバイデン候補がリード。さらに、トランプ大統領が病床にあるため、選挙戦略に影響が出ています(なお、退院は早ければ月曜日のようです)。

 今のところ、トランプ大統領が不利な状況ですが、快復時期やその後の選挙戦略、そして、財政刺激策が可決できるかどうかで、まだまだ、どちらが勝つかは分かりません。

 新型コロナ再拡大が懸念される中での投票ということになれば、開票の遅れやどちらが勝っても集計作業への疑義から混乱が生じる可能性がある点は留意しておいた方が良さそうです。

 トランプ大統領が勝利した場合、これまでの政策と連続性があるので、株価への影響は限定的と見られますが、他方、バイデン候補が勝利した場合は株価に調整が入りそうです。

 なぜなら、バイデン候補の基本政策は再分配重視。富裕層の税率を上げ、低所得者層への社会保障を手厚くする方針だからです。

 富裕層のキャピタルゲイン課税は、現行の20%から39.6%まで引き上げる計画。これほどの増税、しかも、現在の高めで推移している株価を考えれば、税制が変更される前に売却する富裕層も出てくるでしょう。

 売り圧力が強まれば、当然ながら、株価は下がります。

 米国の場合、機関投資家の層が厚く、確定拠出年金による需要が支えになるので、吸収余地は大きいと思いますが、リスク要因であることには変わりありません。

 トランプ減税がどれだけ実体経済を押し上げたかは議論が分かれるところですし、むしろ、再分配を重視して、低所得者層の底上げをした方が消費の拡大に繋がり、教育機会の拡大等を通じた人的資本の蓄積で生産も増加するように思いますが、そうした効果(特に生産への影響)が出るのは長い時間がかかります。

 短期的には、バイデン大統領誕生の方が株価にはマイナスでしょう。

日本は経済対策と同時に将来展望を描けるか

 日本と米国を比較すると、このコロナ禍で成長した企業や存在感を発揮した企業が少ない点が課題です。

 インフラを除けば、テレワークを支える企業はほとんどが海外企業。これまで使ってきたOSやアプリだけではなく、Zoomの急成長が印象的な事例でしょう。環境が変化した際に、伸びる企業が少ないことが課題です。

 日本は貸出中心の金融制度なので、どうしても、リスクの高いビジネスへの資金供給は苦手。そのため、新しいビジネスを立ち上げることが難しいという面があります。

 また、資金に余裕のある大企業が社内ベンチャーを立ち上げようとしても、大企業目線の売り上げ目標が設定され、ロットの小さいビジネスに参入したがらないという問題もあります。

 総じて言えば、「新しいものを創るよりも、今あるものを良くしていく」、というのが日本企業の基本戦略になるのですが、そのためには、安定した経済環境・雇用環境が欠かせません。

 コロナ禍でも失業率は3.0%(8月)と低い水準ですが、その企業では有用だが他の企業では有用性が限られるスキル(企業特殊的スキル)を蓄積する傾向が強く、平時でも、転職後に伸び悩むという事例はよく聞くところです。

 その一方で、リーマン・ショック時に大量のゾンビ企業を生み出したと批判された中小企業金融円滑化法が事実上、復活。不採算企業が存続し続けることで、生産設備や労働力といった資源の配分において、現状維持の傾向が強くなっています。

 何事もバランスですが、原則的には禁じ手だった、保証付融資を既存の債務返済にあてる旧債振替が公然と行われるなど、何が何でも企業を延命しようとし過ぎているきらいがあります。

 延命された企業の「隠れ不良債権」はどこかのタイミングで顕現化し、信用コストとなって銀行等の経営を圧迫します。銀行側としても、顧客から預金を預かっている以上、放漫経営は許されず、信用コストが増加すれば、融資スタンスは硬化します。

 10月1日に公表された日銀短観(9月調査)では、今のところ、資金繰り判断や金融機関の貸出態度判断は企業金融に変調がないことを示していますが、保証付融資の枠を使いきってしまえば、追加の融資を受けることは一気に難しくなります。

 また、この局面を乗り切っても、据置期間が経過すると金融機関への返済額が増えて資金繰りを圧迫するので、楽観はできません。

 菅政権の誕生で、地銀再編が加速すると目されています。11月には独占禁止法の特例法が施行され、地方経済が騒がしくなりそうです。

 冬のボーナスも減少するので、消費の下振れ懸念もあります。金融一本槍では企業収益の回復も、成長期待も限られます。

 足元の経済対策と将来展望をどうバランスさせるか、菅政権の施策に注目です。

(鈴木 卓実)

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