「もしバフェ5選」フォローアップ。安田倉庫はコロナ禍で下がっている今が買い場と判断
トウシル / 2020年10月15日 7時44分
「もしバフェ5選」フォローアップ。安田倉庫はコロナ禍で下がっている今が買い場と判断
日経平均はかなり上がってしまったが、コロナ禍でダメージを受けた銘柄群は戻りが鈍い
日経平均は、コロナ・ショック前の高値に戻りつつあります。下がったところで十分に投資できなかったと、残念に思っている投資家の方も多いと思います。
ただ、個別銘柄に目を転じると、コロナ・ショック前の高値から、大きく下がったままの銘柄も多数あります。コロナ禍でダメージを受けた銘柄群です。ただし、その中には、コロナ後に、最高益を更新していく力があると、私が期待している銘柄もあります。そういう銘柄群は、今が買い場と判断している銘柄群です。安田倉庫(9324)とパーク24(4666)などです。今日は、安田倉庫について、詳しく解説します。
安田倉庫・パーク24の株価推移、日経平均との比較:2019年12月末~10月14日
「もしバフェ5選」の1つとしてご紹介した安田倉庫
米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏は今年8月30日、同氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが、1年以上かけて日本の5大商社株をそれぞれ発行済み株式数の5%超まで買ったと発表しました。バフェット氏は声明で、「日本の未来と、5つの商社の未来に参画することを楽しみにしている」と述べました。
バフェット氏の運用手法の根幹にはバリュー(割安)重視があります。とは言っても、問題をかかえていて株価が安くなっている銘柄には興味を示しません。安定的にキャッシュを稼いでいく力があるにもかかわらず、投資家からの評価が低くて、株価が割安な銘柄に投資します。
私は9月8日「もしバフェ5選:もしバフェットが日本株ファンドマネージャーだったら買うと考える5銘柄」というレポートを執筆しました。その1つが、安田倉庫です。もしバフェ5選として、日本たばこ産業(2914)・ソニー(6758)・三菱UFJ FG(8306)・安田倉庫(9324)・KDDI(9433)の5銘柄を紹介しました。
古いイメージのまま。投資家に物流で稼ぐ「今の姿」が理解されていない
今、物流業界は、成長産業です。コロナ禍でEC(Eコマース)が急拡大し、宅配業界は超繁忙です。国境を超えた、越境ECも拡大しつつあります。安田倉庫は、宅配事業を直接やっているわけではありませんが、それを支える物流・流通加工作業で収益を上げています。
安田倉庫の事業には、2つの柱があります。物流事業と、不動産事業です。新型コロナウイルスの影響がまだ大きくない2020年3月期、同社は、経常利益(44億円)と純利益(29億円)で過去最高益を更新しました。その期のセグメント(部門別)情報を見ると、物流事業で32億円、不動産事業で22億円のセグメント利益をあげています。不動産で安定収益を稼ぎつつ、物流事業で利益を伸ばすビジネスモデルが確立しつつあると考えています。
倉庫の古いイメージは、「ただ、モノを保管するだけ」ですが、近年の安田倉庫は、そうではありません。モノを保管、配送するだけではなく、品質検査・商品の銘入れ・セット組み・梱包・包装・返品処理など、さまざまな流通加工作業を行っています。それに伴い、高い付加価値を得られるようになってきたことが、投資家に理解されていないと思います。
安田倉庫は、メディカル物流・IT機器物流といった、スペシャル・スキルが必要な分野でも、強みを持ちます。メディカル物流事業では、インフルエンザワクチンや、うがい薬などの医薬品、カテーテルや人工心肺などの医療用機器を扱っています。また、IT機器事業では、IT機器の初期設定や動作確認、データ消去や廃棄まで行っています。
物流事業は、国内だけでなく、海外展開も行っています。中国・香港・ベトナム・インドネシアなどに拠点を持ち、内外一貫の物流を受託できる体制を整えつつあります。国際物流は、まだ収益性で課題がありますが、将来的には、国内物流と並ぶ柱となっていくと思います。
不動産は安定収益源
安田倉庫は、倉庫跡地などに建設した賃貸ビルでも、安定収益を得ています。同社が有価証券報告書で開示している時価情報によると、2020年3月末時点で、同社が保有する賃貸不動産には、235億円の含み益があります。戦前から保有する簿価の低い土地に、付加価値の高い賃貸ビルを持っていることから、大きな含み益となっているわけです。
安田倉庫の株式時価総額は、10月14日時点で279億円です。PBR(株価純資産倍率)で0.39倍の低評価となっている同社に、時価総額に近い金額の含み益があるというのは、特筆に値します。同社のビジネスモデルが理解されず、古い倉庫会社のイメージのまま、株価が低評価に留まっていると考えられます。
不動産は安定収益原で、成長性はありません。気になるのは、最近、コロナ禍の影響で、リモートワークが広がり、都心のオフィス需給がゆるみつつあることです。ただ、安田倉庫が保有する賃貸ビルは都心からは離れているので、その影響をあまり受けていないと考えられます。
リモートワークの広がりから、都心のオフィスに解約の動きが出る一方、郊外や地方の物件には一部、分散オフィスとしての契約を探す動きが出ています。安田倉庫が保有する賃貸ビルについては、都心部を離れているため、2019年までのブームの恩恵はあまり及びませんでしたが、今年の需給悪化の影響も相対的に小さいと考えられます。
今期は減益でも、中長期に最高益を更新していく力があると判断
このように、中長期的に有望と考えている安田倉庫ですが、今期(2021年3月期)はコロナ禍で減益です。会社が予想する今期営業利益は、前年比28%減の25億円です。家電など個人消費関連の物流は堅調ですが、産業用貨物の物流にマイナス影響が出ています。
それでも、私は、コロナ禍が去った後、再び最高益を更新していく力があると考えています。コロナ禍で株価が下がっている今が買い場と判断しています。
(窪田 真之)
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