私のファンドは大丈夫?相場急変時の心構えと対処法
トウシル / 2020年10月29日 9時1分
私のファンドは大丈夫?相場急変時の心構えと対処法
市場が急落したとき、あるいは今後下落が予想されるときにどう対処すればよいのか。具体的な対処法と心構えを考えてみよう。
相場急変時の対応は投資家の投資スタンスで異なる
投資信託にかかわらず、資産運用には大きく2つの考え方がある。1つは市場の長期的な成長を取りにいく長期投資の考え方。もう1つは市場の短期的な変動を取りにいく短期売買の考え方。相場急変時の対応を考える前に、まずは自分がどちらの投資スタンスで投資しているのかを確認することが重要だ。
長期分散投資をしている投資家はリバランスを行う
投資信託で長期投資を行っている投資家には、株式ファンドと債券ファンドなど、複数のファンドを組み合わせて分散投資をしている人も多いだろう。長期でかつ分散投資をしている投資家は、市場が急変しても慌てる必要はない。狙いは市場の長期的な成長なのだから、短期的な値動きに一喜一憂しなくてよい。では、何もしなくてよいかと言われれば、そうではない。長期分散投資で行わなければならないのは、「リバランス」だ。
「リバランス」とは資産配分の調整のこと。例えば、当初の計画として、株式ファンドと債券ファンドを5:5の組み合わせで運用を始めたとしよう。株価下落や円高などで市場が下落したときには、「株式ファンド」の組み入れ比率が下がり、「債券ファンド」の組み入れ比率が上がっているだろう。
そうなったときに組み入れ比率が上がった債券ファンドを一部売却し、組み入れ比率が下がった株式ファンドを一部購入し、バランスが崩れた資産配分を再び5:5の比率になるように戻すと良いだろう。リバランスは市場が大きく動いたときこそ効果的であることを覚えておこう。
積立投資をしている投資家は続けること
長期投資派ではあるけど、商品の分散はせず、株式ファンドなどの単一資産で積み立て投資を行っている人もいるだろう。「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」をしている場合もこれに含まれる。積立投資を始めたばかりの投資初心者に多いのが、市場が下落した途端に怖くなって積立投資をやめてしまうこと。これは非常にもったいないことだ。積立投資の利点は、毎月一定額を機械的に投資していくことだ。
市場が下がったときには安値で多くの口数を買い、市場が上がったときには高値なので買付口数を抑える。これを続けることで買付単価を平均化させながら長期的な成長を取りにいくことにある。したがって、市場が急落したからといって、積み立てをやめてはならない。むしろ大きく下がったときこそ絶好の買い場と捉え、積立金額を増額するくらいの心構えでいると良いだろう。
短期売買派は売買の規律を明確化、あるいは資質を再確認
筆者は、投資信託は長期投資が王道の金融商品と考えている。しかし、中には市場の短期的な変動に期待している投資家もいることだろう。短期売買派の投資家は、市場が急変したときにどんな行動を取るべきか。月並みではあるが、これはおのおのが考える市場見通しによって異なる。
市場の急落は一時的なもので、今後の見通しは良好だと考えているのであれば、含み損に一喜一憂せず、継続保有あるいは追加投資をするべきだろう。逆に、悪い見通しがしばらく続きそうだと考えるのであれば、含み損があったとしても一旦リスク資産を縮小すべきだろう。いずれにしても、短期売買を行うときには、自分のなかで利益確定と損切りのルール(売買の規律)を明確にすることが重要だ。どうすれば良いか分からないという投資家は、自分に短期売買の資質があるのかどうか、あらためて確認すべきだろう。
短期売買から長期投資に移行するための処方箋
短期売買、とくに株式ファンドなどの変動が大きい(リスクが高い)資産で売買を行っている投資家が、より安定的、かつ長期的な投資にスムーズに移行していくにはどうしたら良いか。まずは、リスク資産を縮小させることだが、損益状況やタイミングに悩むことだろう。
痛みを伴わない方法としては、儲かっているものがあれば、今後の見通しは顧みず、儲かっているうちにポジションを縮小することだ。そして、余裕ができた資金で、より安定的なもの、あるいは、今保有している資産と逆の動きをするものに投資していくと良いだろう。含み損を抱えている場合は、資金に余裕がなければ回復するまで待つしかない。資金に余裕があるならば、積立投資などで買付単価を下げることで、より早く回復することを期待しながら、回復したところでポジションを縮小するのが良いだろう。
あるいは、タイミングを考えずに着実に移行する方法として、今保有している資産を定期的に売却しながら、新しいポートフォリオに徐々に移行していく方法がある。例えば、株式ファンドを保有していたとして、これを損益状況に関わらず、3カ月や半年といった期間ごと毎に一定口数ずつ売却し、着実にリスクを抑制していく。
一方で、より安定的あるいは逆の動きをするものに毎月積立などで着実に積み上げていくという方法だ。リスクの高い資産からリスクの低い資産に移行する場合、一気にリスクを落とした後に市場が急反発すると、せっかくの上昇機会を逃してしまうというデメリットがある(逆に急落した場合には、下落を回避できたということでメリットになる)。短期的に市場が上昇するか、下落するかを予測するのは難しいため、良くも悪くも効果をマイルドにさせるという点で、この方法を取っても良いだろう。
資産運用においては、市場環境が良好なときは何も考えなくてもうまくいくものだ。市場環境が悪化したときこそ、自分に合った投資スタンスを見極める絶好の機会と考え、適切な対処を行ってほしい。
(吉井 崇裕)
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