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Go Toキャンペーンの経済効果:資金繰りの窮地とお得な施策の副作用

トウシル / 2020年10月30日 19時20分

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Go Toキャンペーンの経済効果:資金繰りの窮地とお得な施策の副作用

ハプニングはあれど、Go Toの利用は順調

 10月1日から開始されたポイントを利用して格安で食事ができると話題のGo To Eat キャンペーン、そして、10月からは東京都も対象地域に加わったGo To トラベル キャンペーン。

 急ごしらえの制度のため、Go To Eat キャンペーンでは利用するための下限となる料金が後から設定されたり、Go To トラベル キャンペーンでは、一時、一部のオンライン旅行サイトが予算不足から利用を制限、その後、政府が予算を追加配分するというハプニングがありました。

 こうしたニュースがむしろ、宣伝につながっている面もあり、Go To Eat キャンペーンもGo To トラベル キャンペーンも順調に利用されているようです。

 Go To トラベル キャンペーン、Go To Eat キャンペーンは新型コロナウイルスのショックで経営が厳しくなっている宿泊業、飲食業を救済する施策です。

 宿泊業も飲食業も企業・店舗数が多いため、現金の直接給付では救済しきれませんし、給付対象の選定や必要額の算定には時間がかかります。

かつてない厳しさの宿泊・飲食サービス業

 宿泊業の場合、宿泊先への移動やホテル・旅館が調達する食材やクリーニング等の各種サービス、お土産を扱う小売店やそれを製造するメーカー等、波及する業種が多いという特徴があります。

 宿泊業の需要を喚起することで、宿泊業だけでなく、他の業種を支える。特に、観光が主要産業の地域では、宿泊業の経営が深刻になると地場の産業が総崩れになる恐れがあるため、経済活動を少しでも復調させる必要があるという事情もあります。

 宿泊・飲食サービスの業況を日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観、2020年9月調査)で確認してみましょう。

▼業況判断D.I.の推移(全規模)

(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より筆者作成。

 2005年からの推移を見ると、宿泊・飲食サービス(全規模)の業況判断D.I.(業況が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた値)は、リーマンショックで大きく落ち込んだ後、一時回復基調になり、東日本大震災で再び大きく悪化。

 V字回復の後、近年では業況判断D.I.がゼロの周辺にいましたが、コロナ禍で急落。6月調査の▲91を底に、9月調査では▲87と少し回復しましたが、まだまだリーマンショック時よりも厳しい状況が続いています。

 宿泊・飲食サービスのほかには、対個人サービスも厳しい状況です。対個人サービスには、塾やフィットネスクラブ、カラオケボックス、映画館や遊園地などさまざまな業態が含まれています。

 まだまだ、3密回避やソーシャルディスタンスを意識せざるを得ないですし、企業側も対応コストがかさみます。

資金繰りに苦しむ宿泊、飲食

 コロナ禍を乗り切るためには、売上回復も重要ですが、まずは何といっても資金繰り。赤字でも資金繰りがうまくいけば倒産しませんが、逆に黒字であっても、資金繰りに窮すれば倒産してしまいます。

 日銀短観の資金繰り判断D.I.(資金繰りが「楽である」と回答した企業の割合から「苦しい」と回答した企業の割合を引いた値)を見ると、業況判断D.I.が悪いにもかかわらず、全産業や製造業、非製造業の資金繰り判断D.I.はプラスを維持しています。

 制度融資の拡充等で借入が容易になり、手元資金が増加している企業が増えているからなのですが、対照的に対個人サービス、そして、宿泊・飲食サービスは資金繰りが苦しいと回答した企業が楽であると回答した企業を上回っています。

▼資金繰り判断D.I.の推移

(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より筆者作成。

Go Toキャンペーンはひとまず成功

 資金調達をしても、それでも本業が回復しないことには、苦しいまま。このままでは資金繰りに窮する企業が続出、倒産ラッシュになってしまいます。

 それを防ぐためにも、Go To Eat キャンペーン、Go To トラベル キャンペーンは、期待が高い政策です。

 内閣府「景気ウォッチャー調査」という調査があります。日銀短観が資本金2,000万円以上の企業を対象にした、経営者への調査という性格がある一方、景気ウォッチャー調査は街角景気調査として知られていて、タクシー運転手や小売店の販売担当、旅行代理店の従業員など現場視点の調査です。

 日銀短観のようなDIも公表しているのですが、「景気の現状に対する判断理由等」に景気の現状に対する判断の理由およびそれに対する追加説明等のコメントがまとめられているのが特徴です。

 景気ウォッチャー調査(9月調査)によると、Go To トラベル キャンペーンの効果や期待する声は多く、例えば、「週末や4連休においては、前年の7割近くまで来客数が回復している」、「タクシー予約について、観光貸切りでの利用が入り出すなど、Go To トラベル キャンペーン効果が出てきている」といったコメントが記載されています。

 Go To Eat キャンペーンは10月1日からですが、こちらも既に効果が出ています。飲食店の予約サイト「ぐるなび」は、10月1日から23日までのネット予約の件数が、去年の同じ時期の2.6倍に上っています。

Go Toの組み合わせで、経済効果アップ

 Go To キャンペーンは、Go To Eat、Go To トラベルが注目されていますが、Go To イベント、Go To 商店街にも期待が集まります。

 10月19日から始まったGo To 商店街キャンペーンでは、商店街の活性化に取り組む事業について、国から補助金が支給されます。商店街のイベントや新たな商材の開発、プロモーションの制作にあてられます。

 第1弾で採択されたのは34事業ですが、今後も拡大して、最終的には1,000件以上のキャンペーン実施を目標にしています。大行燈祭りや一店逸品運動の推進など、地域の特色を生かした企画も目に付きます。

 Go To イベント キャンペーンはイベント・エンターテインメント産業への補助で、コンサートや遊園地、博物館、映画館、スポーツ観戦、スポーツイベントなど、幅広い業態を後押しします。

 実施はこれからですが、チケット販売事業者等の募集は10月19日から、イベント主催者の公募は10月26日から始まっています。

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンがGo To USJ 1デイ・パスの企画を公表するなど、実施日が決まれば、需要喚起につながりそうです。

 一回の旅行で、Go To イベント、Go To トラベル、Go To Eatを同時に使うこともできるので、苦しい業界にとっても、お得に観光・外出を楽しみたい個人にとっても、ありがたい政策と言えるでしょう。

お得すぎる政策に副作用?

 10月26日から、臨時国会が始まり、予備費の使途や第三次補正予算が審議される見通しです。

 Go To キャンペーンを来年のゴールデンウィークまで延長するべきとの意見も与党の一部からは出始めています。事業者は歓迎、そして、多くの国民に利用されているので、予算の拡大や期間の延長はありそうです。

 年度末に当たる3月は例年、倒産が多い時期でもあり、これ以上の借入が難しい企業の資金繰りを支える点でも、Go To キャンペーンの延長を支持する声は強まると思います。

 このように支持された施策は止め時が非常に難しいという欠点があります。

 今のところ、消費者が支払う金額を極端に引き下げることで需要が増えていますし、新型コロナ対応の自粛が強まり過ぎると、外食・外泊をしなくなるという生活スタイルが染みついてしまうので、消費者行動を変える点でもGo To キャンペーンは必要でした。

 一方で、異常に安い価格に慣れすぎると、Go To キャンペーンが終わる前に駆け込み需要が殺到し、その後、元の価格に戻ったら、ばったりと客足が減るという事態にもなりかねません。

 Go To Eat キャンペーンよりも、割引金額の大きいGo To トラベル キャンペーンにより影響が出そうです。

 キャンペーン対象企業とそれ以外の企業とでは、競争上の優位性が全く違っているので、政府による補助の有無が企業経営に大きく影響してしまうという問題もあります。

 延長するにしても、段階的に補助額を減らしたり、安易な利用をし難くしていくのが望ましいでしょう。

 お得に使いたいGo To。今後の実施となるGo To イベント キャンペーンなど、これからも関連ニュースに注目です。

(鈴木 卓実)

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