日経平均2万5,000円超え。ここからの買いは「危険な賭け」か否か?
トウシル / 2020年11月16日 12時14分
日経平均2万5,000円超え。ここからの買いは「危険な賭け」か否か?
日経平均の上昇トレンドは勢い継続
先週末11月13日(金)の日経平均終値は2万5,385円となり、前週の2万4,000円台超えから2万5,000円をも超えてきました。
週を通じて、連日で「29年ぶりの高値更新」という言葉が踊り、直近2週間の上げ幅(1,348円と1,060円)も2,400円以上と大きくなっています。前回のレポートでも指摘した通り、先週も「株価が高いかどうか」ではなく、「相場が強いかどうか」で推移した格好です。
週末13日(金)はさすがに下落し、前週からの連騰記録は8日間でストップしたものの、足元の相場の強さを印象付けています。
今週からは国内企業の決算発表が一巡するため、米中の経済指標(10月の小売売上高および鉱工業生産)や、新型コロナウイルスの感染動向をにらみながらの展開となると思われます。さすがに「上げ過ぎ」感も漂い始めている中、株価上昇の一服も想定しておく必要がありますが、気になるのは「株価が一服して下落した際に、買い向かって大丈夫なのかどうか」です。
まずは、2万5,000円台に乗せた日経平均について、いくつかの視点で見ていきます。
■(図1)日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2020年11月13日取引終了時点)
最初はトレンドの勢いです。上の図1は、前回も紹介したボリンジャーバンドです。
ボリンジャーバンドでは、一般的にトレンドが発生した際、バンドの幅が狭い状態から拡大し、株価もそれに沿って動いていく傾向がありますが、ここ2週間の日経平均も、拡大するバンドの線(+2σ)に沿って上昇しており、上昇の勢いは一応継続しています。
さらなる上値追いで「行けるところまで行く」展開になってもおかしくはありませんが、前回も紹介した、トレンド一服の判断サイン(「株価が+1σを下抜ける」、もしくは「反対側の▲2σの線の向きが変わる」)をチェックする状況に変わりはなさそうです。
なお、5月から6月にかけての時は上昇局面が一服した後、本格的な下落トレンドにはならず、もみ合いが続くことになりましたが、それでも2,000円超の上昇後に1,000円以上下落する場面を見せていましたので、今回についても多少の値動きの荒さを覚悟しておいた方が良さそうです。
日経平均の2万5,000円超えは妥当な株価水準と言える
続いては株価水準についてです。
■(図2)日経平均(日足)とギャンアングル(2020年11月13日取引終了時点)
上の図2も前回紹介したギャンアングルです。
2つのギャンアングルが描かれていますが、3月19日を起点とする赤いギャンアングルは、「コロナ・ショック後からの戻りトレンド」、昨年8月26日を起点とする青いギャンアングルは、「コロナ・ショック前のトレンド状況」を表しています。
先週の日経平均は青いギャンアングルの8×1ラインを上抜けてきました。つまり、コロナ・ショック前のトレンドの線を超えたわけです。
実際に、先週は米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発する抗コロナウイルスワクチンの検査結果が予想以上の良好なものだったと報じられ、コロナ克服後の経済回復を「先取り」する格好で株価の上昇に弾みがつきました。日経平均が一気に2万5,000円台に乗せたのもこのタイミングです。「コロナ克服への期待」という織り込んだ材料から見れば、日経平均の2万5,000円超えは株価水準として妥当と言えそうです。
とはいえ、前回のレポートでは、「青いギャンアングルの8×1ラインと、赤いギャンアングルの3×1ラインが交差するのは大体2万5,500円辺りの株価水準」としていましたので、株価の上昇ピッチは想定よりもかなり早いと言えます。
そのため、株価上昇のスピード調整や上昇一服の可能性は先週よりも高まっていると言えます。
NYダウは「コロナ克服への期待」で一段高
また、「コロナ克服への期待」の織り込みと言えば、NYダウ平均株価の動きが分かりやすいです。
■(図3)NYダウ(日足)の動き(2020年11月13日取引終了時点)
NYダウの動きをたどると、「選挙前の警戒」で下落した後に、「選挙通過による楽観」で反発し、そして、ワクチン報道をきっかけに「コロナ克服への期待」で窓空けによる一段高という動きが明確です。
ただし、日経平均とは異なり、一段高した後のNYダウの上昇は一服し、結局は2月のコロナ・ショック前の高値水準のところで、ひとまず様子をうかがっている印象です。
確かに、ファイザー社のワクチンは、早ければ11月第3週にもFDA(米食品医薬品局)に緊急使用の許可を申請するとされているため、思ったよりも早く実用化に向けた動きにはなっていますが、その一方で、「検査対象の90%に良好な結果」の詳細が説明されていないことや、このワクチンがマイナス70度~80度の低温を維持して保存する必要があるとされており、普及スピードや安全性などに課題が残されています。
そのため、実際の経済回復スピードが市場の期待に沿うかはまだハッキリせず、「コロナ克服への期待」をもう一段階進めるには新たな好材料が必要ですし、上昇の際に空けた窓を埋めにいく展開には注意しておく必要があります。
なお、今後のNYダウについては、6月8日と9月3日の高値同士を結んだラインを基準に平行線を描いたレンジが値動きの想定範囲になります。
日経平均だけが強い状況。物色の広がりに伴うTOPIXのキャッチアップが待たれる
最後に、再び話を日経平均に戻します。
■(図4)日経平均(日足)の動き(2020年11月13日取引終了時点)
ここでは、シンプルなローソク足と移動平均線の分析です。具体的には週末13日(金)の下落と5日移動平均線について見ていきます。
日経平均の過去の値動きを振り返ると、「株価が大きく上昇した後に、ローソク足が5日移動平均を下抜けると調整しやすい」という傾向があります。この傾向は5月から6月にかけての上昇局面でも見られました。13日(金)のローソク足は、5日移動平均線のところまで下ヒゲが伸びましたが、今週も引き続き5日移動平均線がサポートとして機能できるか注目です。
また、13日(金)の日経平均は前日比で135円安(0.53%安)でした。これまでの上昇幅に比べれば「些細な」下落に見えますが、実際には、指数寄与度の大きいファーストリテイリングや東京エレクトロンの株価が上昇していたことが下げ幅を限定的にとどめさせた面があります。
さらに、この日の騰落銘柄数(東証一部)は、値上がり341銘柄に対し、値下がりが1789銘柄と、値下がり銘柄がかなり優勢で、TOPIX(東証株価指数)の下げ率(1.33%安)は、日経平均よりもかなり大きくなっています。
確かに、外国人の日本株に対する見直し気運や、日本株自体の出遅れ感などは今後も支援材料になると思われますが、現時点ではあまり物色に広がりが出ておらず、日経平均だけが強い状況に変わりはなく、物色の広がりに伴うTOPIXのキャッチアップが待たれるところです。
■(図5)TOPIX(週足)とギャンアングル(2020年11月13日取引終了時点)
そのTOPIXですが、上の図5を見ても分かる通り、先週は節目の1,700pを回復し、2018年1月下旬の高値を起点とするギャンアングルの4×1ラインを超えてきました。今後は、年初来高値を超え、8×1ラインを目指していけるのか、それとも跳ね返されてしまうのかという岐路に立っている状況です。
ひとまず、今週の日経平均も上値を試すスタートになりそうですが、仮に調整を迎えた場合、TOPIXが4×1ラインを維持するなど、堅調さを見せているかどうかが押し目買いのひとつの判断材料になりそうです。
(土信田 雅之)
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