ワクチン報道あれば米選挙は変わった?新財務長官候補はドル安論者?為替変動に要注意

トウシル / 2020年11月11日 15時10分

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ワクチン報道あれば米選挙は変わった?新財務長官候補はドル安論者?為替変動に要注意

ワクチン開発報道でNYダウ急騰!ナスダックは反落

 9日(月)のNY株式市場が急騰しました。きっかけは米大手製薬会社ファイザーが開発中のワクチンについて「臨床試験で90%以上の感染予防効果があった」との発表でした。この報道を受けてNYダウ平均株価は一時1,600ドル以上急騰し、2月の取引時間中の史上最高値(2万9,568ドル)を更新しました。一方でこれまでアマゾンなどの巣ごもり需要で上昇していたナスダックは反落しました。

 翌10日の日経平均株価は、急騰したNY株を受けて、一時400円以上値上がりし、29年ぶりに2万5,000円台を回復しました。しかし、さすがに既に5連騰して1,800円以上の値幅で上昇していただけに利食いも入り、65.75円の小幅高で取引を終えました(終値2万4,905.59円)。

 予防効果が高いワクチン開発報道を受けて、新型コロナウイルスの感染終息に期待が高まり、経済活動や日常生活が正常に戻る(Back to normal)との期待が一気に高まった感じです。もう半月早くこの報道が流れていたら、米大統領選挙の展開は変わっていたかもしれません。

 有権者の投票動機で最も重視されたのは、共和党の経済政策に対して、民主党は人種問題と新型コロナ対策でした。もし、このワクチン開発が選挙前に発表されていたら、新型コロナ対策を重視する票がトランプ米大統領に流れていたかもしれません。

 トランプ大統領は「ワープ・スピード計画」を策定し、ワクチン開発を迅速に推し進める政策を実行していました。今回の報道はその結果かもしれません。トランプ大統領は今回の報道を受けて、「バイデン氏が大統領だったら、ワクチン開発は4年かかっただろう」と残念さがにじみ出るツイートを発信しています。ファイザー社の役員は「(発表のタイミングについて)政治的な意図は全くない、あるのは科学のスピードだけだ。発表できる段階で即座に発表した」と海外ニュースで語っていました。

新型コロナ終息には依然として不透明感

 そして、ファイザー社は今後のスケジュールについて12月後半までに初回投与を行い、2021年秋までに広く普及するとしています。日本政府はファイザーから新型コロナワクチン6,000万人分の供給を受けることで基本合意しています。しかし、このスケジュール通りに進むのかどうか、進んだとしても半年から1年は、まだ現在の状況が続くということになりそうです。その間ワクチンが開発されたと油断して、予防行動に緩みが生じると新型コロナ感染拡大の勢いが増す可能性もあります。

 また、全ての人に効果があって本当に新型コロナが終息するのかどうかという点で依然、不透明感は残ります。株急騰は「90%の効果」という数字に反応しましたが、この不透明感が払拭(ふっしょく)されない限り、株上昇のさらなる勢いは鈍り、一服する可能性もあります。

過去最高の得票数を更新した両候補

 今回の選挙で驚くべきことは、バイデン氏のみならずトランプ大統領も7,000万票を超える史上最高の得票数を獲得したということです。オバマ氏の選挙獲得票数(約6,950万票)がそれまでの最高だったのですが、今回の選挙では両候補ともそれをはるかに上回り、現職大統領としては最高の得票数でした。

 今回の選挙は「トランプvs反トランプ」の選挙だと言われていましたが、トランプ氏は現時点では負けたとはいえ、予想以上の大健闘だったということになります。上院議員選挙でも共和党優位となっており、「トリプルブルー」実現は遠のく可能性が高まっています。

トランプ大統領の敗北宣言はあるか?4年後の大統領選に登場する見方も

 さて、現時点ではトランプ大統領が負けたと述べましたが、トランプ大統領はいまだ敗北宣言をしていません。バイデン氏が勝利宣言を行い、各国首脳も祝意を表してきていることから外堀はかなり埋められてきましたが、トランプ大統領はまだ諦めていないようです。共和党議員の中には一部離反する人も現れてきており、トランプ大統領の家族も敗北を説得する動きに出ているとの報道もありますが、現時点ではトランプ陣営は法廷闘争に突入する構えを崩していません。

 ここまでの株式市場は、バイデン氏勝利の報道やワクチン開発報道によって勢いをつけてきましたが、この勢いが持続するには今後のバイデン政権の動きをにらむ展開となりそうです。また、外堀を埋められてきたトランプ大統領がいつ敗北宣言をするのか、あるいは法廷闘争が続き、決着が長引くのかどうかも今後の注目点となりそうです。もし、敗北宣言をした場合、株は一段高になるのかどうか、あるいはこれまでのご祝儀相場が終わるのかどうかに注目したいと思います。

 敗北宣言をせず、法廷闘争に入った場合、選挙人確定日の12月8日までに決着しなければ、事態は混迷し、12月14日の選挙人投票日に選挙ができない事態となるかもしれません。そうなれば、来年1月の下院での決選投票になる可能性が出てきます。長引けば長引くほど先行き不透明感からマーケットにとってはマイナス材料となりそうです。

 また、こういう見方も浮上してきています。トランプ大統領は敗北宣言をしないが、政権は移譲し、4年後の大統領選挙に臨むという見方です。それまでは民主党の不正を主張し続け、4年後の米大統領選挙でリベンジするというものです。岩盤のトランプ支持者がそこまでついてくるかどうか分かりませんが、今回の得票数を見ると可能性はあります。また、4年間でバイデン氏支持者を満足させる業績が伴わなければ、さらに可能性は高まるかもしれません。

ドル/円は米金利との連動性が高く、ポジション調整的な動き

 ドル/円は、上院選で共和党優勢の報道からトリプルブルーの期待が後退し、金利が低下したことによってドル安となり、103円前半まで下落しました。その後、ワクチン開発報道によって金利が急騰し、株上昇とともにドル/円の円買いポジションが巻き戻され、一気に105円台半ばまで上昇しました。この動きを見ていると、ドル/円は米金利との連動性が高く、ポジション調整的な動きだったということが分かります。

 米10年債金利は1%をうかがう上昇となりましたが、今後、この動向には注視しておく必要があります。金利水準が1%以上になれば、1ドル=108円、110円の円安になる可能性が出てきますが、ワクチン開発によって新型コロナ感染拡大が今すぐ急停止するわけではないと考えれば、期待だけでは金利1%超えの水準にとどまるシナリオは遠いかもしれません。今後は、新政権の政策や人事をにらみながら1ドル=105円を中心としたレンジで動くかもしれません。

マーケットが注目する財務長官人事はドル安論者?

 バイデン新政権の閣僚人事でマーケットが注目するのは財務長官人事ですが、有力視されているのはブレイナードFRB(米連邦準備制度理事会)理事です。ブレイナード理事はハト派(金融緩和派)だけでなく、ドル安論者という声も聞こえてきているため、人事が発表されれば為替がドル安に動く可能性もあるため留意しておく必要があります。

(ハッサク)

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