老後に重要な自助・共助・公助。具体的に分かっていますか?
トウシル / 2020年11月24日 6時0分
老後に重要な自助・共助・公助。具体的に分かっていますか?
「自助・共助・公助」~公的年金の役割は「共助」
菅義偉総理大臣の所信表明演説で登場した「自助・共助・公助」のフレーズ。この3つの整理をしておくことは、私たちの老後資産形成を考えるとき、役に立つと思います。
共助とは何か?
公的年金は基本的には「共助」として説明されます。私たちの年金保険料が今、年金を受ける世代の給付を支え、また年金保険料を納付し続けることにより将来の世代から給付を受ける資格を手に入れる仕組みになっているからです。
公助とは何か?
国民の所得保障の役割としても公的年金の役割はあり、基礎年金(国民年金)の給付財源の2分の1は税財源により、まかなわれています。その意味では、一部分は「公助」の役割も含まれているとも言えます。
私たちは自分の力だけで老後をやりくりするわけではありません。むしろ経済的基盤の多くは公的年金に依存しています。
自助とは何か?
そして、自助努力という言葉がある通り、経済的な余裕がある人は自分で自分の老後に備える資産形成の上乗せを行う努力をします。自助の取り組みを支援する器となっているのがiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などの公的な税制優遇支援制度です。
誰にも訪れる老い。予見しにくい長寿への備えの大きな役割
現在のリタイア年齢はおおむね65歳となっていますが、そこからの老後は思ったより長いものです。65歳に達した男性の平均的な老後は約20年、女性は約25年あります。
もちろん、平均よりも早く「お迎え」がくることもありますが、ずっと長生きをすることもあります。平均的な老後はおおむね「2人に1人」がまだ長生きをする年齢に相当するのですが、「4人に1人」はさらに5年程度、長生きをします。
65歳の女性なら95歳ですし、もう少し寿命が延びれば「4人に1人は100歳」ということも十分にありえます。
私たちはとかく非合理的判断をする生き物ですが、老後については「現実より短くイメージする」傾向があります。つまり過小評価です。若いころは自分が90歳まで生きるとは考えられません。大学生の頃だと「オレ、どうせ60歳には死ぬし」とか言って、保険料を未納していたりします。30~40代でも自分がまさか100歳まで生きるとは考えず人ごとです。
しかし、お金のやりくりで「お金が足りなくなったので、ここで自分の寿命とさせていただく」というようなことはできません(できるとしたら、それはもはや星新一のSF小説の世界でしょう)。
65歳の段階で、老後が何年か分からないにもかかわらず、仕事はリタイアすることになります。この経済的不安をカバーするのが「共助」である公的年金制度ということになります。
「自助」で備える老後資産形成が老後の豊かさをデザインする
昨年2019年、大きな注目を集めた「老後に2,000万円」問題ですが、実のところ老後の日常生活費と公的年金収入はおおむね均衡しています(高齢夫婦無職世帯。総務省家計調査年報による)。
そして、公的年金収入は終身でもらえるわけですから、日常生活費については基本的に収支のバランスが取れた状態で維持できることになります。公的年金のいいところはどんなに長生きしても「終身給付」というところです。ある程度インフレにも追随します(今はマクロ経済スライドの調整がありますが)。
そうなると、何が不足しているかというと「教養・娯楽費」と「交際費」です。時々、美術展を見に出かけて食事をしたり、夫婦で年に一度くらい旅行に出かけたり、子どもや孫が遊びにきてくれたらおこづかいをあげたり、誕生日にプレゼントをあげるようなところに、「自助」の老後資産形成の努力が位置づけられ、がんばればがんばるほど、老後は楽しく豊かなものに変えられるわけです。
これは大事なことで「共助では飲み食いすらできないから自助努力か」と考えるのと、「自助でがんばるほどに老後が幸せになる」と考えるのでは、老後資産形成のやる気はまったく違ってきます。
公的年金があるからこそ、NISAやiDeCoが生きてくる
公的年金はあなたのリスクに備える公的な保険です。一方で公的年金があなたに確実に保障してくれるのは「老後の長さ」というリスクであって、「老後の豊かさ」まで期待するのは無理があります。もちろん今よりも負担増でよいというのならそれに応じた給付増も実現可能でしょうが。
それでも「老後の長さ」という不確定要素をカバーしてくれるだけで、共助の価値はあります。10年の老後もあれば、30年あるいはそれ以上の老後もあるというのは資金計画上あまりにも不安定だからです。
「老後の豊かさ」に備えるのは自助の部分であり、iDeCoやつみたてNISAなどの活用ということになります。そして会社が実施している退職金・企業年金制度もそこに加わります。
まずは自分の会社のモデル額を把握し、今チャレンジしているiDeCoやつみたてNISAの65歳ごろの見込額をシミュレーションしてみましょう。
そうすれば「自助・共助・公助」のバランスの向こうで、自分の老後の安心が見えてくるはずです。
(山崎 俊輔)
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