資産運用で人格を磨く(5)売りポジションを持ったときの心の平安の難しさ
トウシル / 2020年11月26日 5時10分
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資産運用で人格を磨く(5)売りポジションを持ったときの心の平安の難しさ
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株価指数が上昇。売りポジションを持っている人に起こる思い
タイミングを計って運用をしている人においては、インバース型ETF(上場投資信託)や、信用取引のカラ売り、先物での売りなどで、売りポジションを取っている人もいるでしょう。日経平均やTOPIX(東証株価指数)を対象に売りポジションを持っている人にとって、足もとの株価指数が上昇している状況は、首を絞められているようなきつい状態になっているのではないでしょうか?
なぜきついのか? 単に資産が減っているというだけではなく、売りポジションを持っている人だけに起こってくる思い、感情について、見ていきたいと思います。
買いポジションにはなく、売りポジションを持っている人だけに起こってくる思い、感情は次のようなものです。
(1) 孤独感
「マーケットが上昇して周りの人がもうかっているのに、自分の資産は減っている。」
「自分だけが取り残されている。」
「みんなと同じように普通に買いポジションの投資をしていれば…。」
(2) 精神的に混乱してくる
「世の中にとって良いことが起こると青ざめ、悪いことが起こるとホッとする。」
「世の中にとって良いことと、自分の資産にとって良いことが逆なので、精神的にきつい。」
(2)がさらに進むと、極端ですが、次のような思いが出てきたりします。
(3) 世の中にとって悪いことを望むようになる
「コロナウイルスが広がって、景気が悪くならないと自分の資産が増えない。」
「米国大統領選挙が訴訟などでより混乱すればマーケットは調整して、資産は戻ってくるはずだ。」
「米中関係がもっと悪化すれば、株は下がる。」
(3)まで進むと、人が不幸になろうが自分の資産を優先している自我の状態、「人として」に関わってくる状態です。私自身、「自我が強すぎると何事もうまくいかない」という考えを持っているので、常に(3)のような思いばかりが頭に浮かんでくるようであれば売りポジションは持たないほうがよいと思いますが、少なからず、人間であれば自我はあり、出てくる思い、感情はどうしようもありません。
自らの「一喜一憂の心理」と「投資手法」を切り分ける
では、どうしたらよいのでしょうか?
それは、自らの「一喜一憂の心理」と、「投資手法」を切り分けることです。
資産が減った時には、「このまま資産が減っていったら、どうしよう」「将来のための資金なのに、このままだと思い描いていた生活をしていけない」といった恐れが出てくるでしょう。
恐れを含む一喜一憂の心理は、「高く買い、安く売る」を私たちにさせてきます。このため、恐れが出ているとしたら、持っている売りポジションをどうするかという運用のほうを考えるのではなく、まずはその恐れを取り除き、冷静な状態になることです。
逆にいうと、恐れという一喜一憂が出ている状態においては、判断したり動いたりしないほうがよいと考えています。
では、どうやって、一喜一憂を取り除くかですが、まずは自らが一喜一憂していることに気付き、横に置くことです。往々にして「恐れ」は将来に対するもので、恐れていることが今、起きている訳ではありません。
そして、俯瞰(ふかん)した視点で、「投資手法」に焦点を当てることです。そもそも、売りポジションを持ったのは、何らかの手法をもとに、もしくは考えがあって持ったことと思います。その手法、考えに立ち返ることです。
私の例でお伝えをしていきましょう。
私の場合には、業績から見たときの「割安・割高」、投資家心理から見たときの「悲観・楽観」という2つの要因から、日経平均ETFを利用して、投資比率を段階的に変えていく(「割安」「悲観」になるほど買いポジション、「割高」「楽観」になるほど売りポジションを持つ)手法を用いています。そして、この手法は分析に基づきルール化して行っているので、一喜一憂せず、いかに淡々と行っていけるかが鍵となってきます。
しかし実際のところ、一喜一憂しない訳ではなく、売りポジションを持っている状態で日経平均が大きく上昇した際には次のような思いが私の中にも起こってきます。
「日本銀行のETF買いさえなければ。日銀がこれほどの金融緩和をしなければ…」
この思いは、「日銀のせい」という私の一喜一憂の1つの表れです。日銀は、私のことを考えてくれるわけではありません。このような一喜一憂が出てきたときには、すぐに切り分け、人のせいにしたことが自らの一喜一憂から発していることを認識し、横に置き、冷静な状態に戻るのです。
冷静になったら、改めてこの手法が基本的には安くなれば買い下がり、高くなれば売り上がるものなので、マーケットを安定化させ、世の中にとって役に立っている手法であることを認識し直します。
そして、冷静な状態の中で、投資手法について見ていきます。
この手法は淡々と行うものであること、段階的にポジションを持つことによってリスクを軽減させている手法であることから、基本的な考え方はそのままとする。ただし、売りポジションを持つことは精神的にきつく、場合によっては世の中にとって悪いことを望んでしまう「人として」に関わる状態になりかねないので、今後、売りポジションは極力持たない形にする。
このような考えのもと、今後の方針を次のように決めています。
- 現在のポジションにおいては、ルールは変えずにこのままでいく。
- 現在のポジションを解消でき、次に新たなポジションを取るときには、売りポジションは「割高」と「楽観」が両方とも伴うとき以外は持たないこととする。
冷静になり、今後の方針を決めたら、腹が据わってきます。
もし、あなたが売りポジションを持っていてきつい状況にあるとしたら、まずは自らに出てきている一喜一憂を認識して横に置くこと、そして、売りポジションを持った根拠、考えを見つめ、冷静な中で今後の方針を決めていくことをされてみてはいかがでしょうか?
投資はあくまでも自己責任で。
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(白石 定之)
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