円高強めるマーケット! しかしドル急反発リスクあり、なぜ?
トウシル / 2021年1月6日 9時34分
円高強めるマーケット! しかしドル急反発リスクあり、なぜ?
本日のレンジ予測
[本日のドル/円]
↑上値メドは103.60円
↓下値メドは102.00円
コロナ対策、究極的には公衆衛生と経済配慮のバランス
年明け2日目、1月5日のドル/円は円高継続。103.08円でオープンして高値は東京時間の103.19円。上値は重く、待ちきれない実需からは売りもでてNY時間には103円を割り102.60円まで下落しました。終値は102.72円。終値が103円より円高だったのは昨年3月9日以来。
今日のマーケットの注目は米ジョージア州の2議席の決選投票。開票は日本時間午前9時半から始まりますが、大接戦ということで結果が判明するのは金曜日まで延びる可能性があります。直前の世論調査によると、バイデン氏の民主党がリードしているようですが、米大統領選の時のように負けた方が結果を不服として抗議することになれば、決着が着くのはさらに先になりそうです。
なぜジョージア州の決選投票が注目されるかというと、米上院における共和、民主両党の上院過半数争いになっているからです。どちらの党が過半数を奪うかによって、バイデン次期大統領の政策運営は大きく異なってきます。米上院の現時点における議席は共和党50議席、民主党48議席。民主党が2議席獲って50議席ずつになった場合は、上院議長を兼務する副大統領が決裁票を投じる決まり。副大統領は民主党のハリス氏が就くので、民主党が多数派となります。民主党はすでに下院で過半数を確保しているので、上院を制すればブルーウェーブの実現となり、バイデン政権は安定ということになります。
2021年のマーケットのテーマに「世界的景気回復」を掲げるエコノミストやストラテジストが多いようです。景気回復の大前提はなにかというと、それはコロナワクチン。実際、ワクチン供給が始まった昨年末からは、投資家心理が上向く、いわゆるリスクオンによってNY株式は史上最高値を更新し続けました。
しかし、現実には、ワクチン供給のスピードは、マーケットの期待よりもはるかに緩やかです。英国では昨年末に400万人への接種を予定していたが、実績は53万人。フランスでは1月中に100万人接種の計画ですが、2日時点でたった430人にとどまっています。
一方、コロナ感染はワクチン供給をはるかに凌駕する勢いで拡大中。英国は3度目の全土封鎖(ロックダウン)に追い込まれ、ドイツも今月末までロックダウンを延長。日本政府も緊急事態宣言を発令しますが、ワクチン接種は3月頃にようやく始まる予定。
世界経済は景気回復とは逆の方向に動いているので、マーケットの期待と現実のギャップの拡大が、短期的なポジション調整を引き起こすリスクが増大しています。景気回復とドル安がセットにならば、景気回復の遅れはドル高、つまりドル反発の可能性があります。
FRB(米連邦準備制度理事会)の経済成長見通しも、コロナワクチンが前提。この日はメスター・クリーブランド連銀総裁の発言がありましたが「ワクチンが行き渡れば、今年の下半期の米経済は強い回復を示す」と、ワクチンが景気回復シナリオの中心にあることを示しています。とはいえ、ワクチン配布が順調に世界に行き渡るのか、それとも中止になるのか、変異株に対してどこまで有効なのかなど、現時点では不透明なことが多すぎます。2020年の経済予想が全て間違っていたのだから、 新しい経済予想も間違っていると考えるが合理的です。
いまいちど、2020年のドル/円を振り返り。今日の注目通貨をご覧ください。
主要指標 終値
5日のドル/円のNY市場終値は102.72円。前営業日の終値比▲0.43円
今日の一言
誰もが才能を持っている。でも、能力を得るには努力が必要だ – マイケル・ジョーダン
今日の注目通貨
ドル/円:
2020年のドル/円の高値(円の安値)は、2月20日につけた112.22円。この時はM&A(企業の合併と買収)のフローがドル/円を押し上げたのですが、ファンダメンタルズ的には日本経済に対する懸念がありました。
日本の2019年10-12月期GDP(国内総生産)は、前期比年率▲7.1%と大幅に落ち込みました。消費税10%引き上げで消費が大きく冷え込んだことが理由。続く2020年1-3月期は▲2.2%、4-6月期は▲28.1%と3期連続のマイナス成長で日本経済はリセッションに入り。日本経済はもとから悪く、コロナがそれに追い打ちをかけた。政府が給付金を出し渋るのは、そのような理由もあるようです。同時期の米国経済はどうだったかというと、失業率は半世紀ぶりの低さで景気指数も強く、少なくとも新型肺炎の影響もまだ軽微。ドル高/円安に動くのもある意味自然でした。
ところが、それから3週間足らずのうちに、世界は一気に暗転。新型コロナ感染が急速に拡大し、FRBは3月3日に、約11年ぶりとなる利下げを緊急実施しました。その後3週間のうちに、世界のほぼ全ての中央銀行が追随して利下げや緊急緩和政策を行いました。
ただ、当時のトランプ政権は、移動制限などの緊急対策には経済にマイナスという理由で後ろ向き。対策の遅れに対する市場の不満と不安が高まるなか、3月9日のNY株式市場は2,000ドルを超える歴史的暴落を引き起こし、ドル/円は101.17円までドル安(円高)が進みました。
コロナ感染を軽視して初期対策が遅れ、感染の急拡大を許す。慌ててロックダウン(都市封鎖)を行って、経済を一気に止める。今度は経済悪化に焦って、コロナ再拡大のなかで Go To キャンペーンを強引にすすめたかと思えば、またも緊急事態宣言。今起きている経済危機は、世界経済の不均衡ではなく、政策が引き起こしたものだといえます。
(荒地 潤)
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