米長期金利低下を受け「金」は上昇しやすい地合い。先行き不透明感から「原油」は反発
トウシル / 2017年10月16日 12時0分
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米長期金利低下を受け「金」は上昇しやすい地合い。先行き不透明感から「原油」は反発
米長期金利低下を受け、金は2週間半ぶりの高値
金相場は6日間の続伸。トランプ米大統領が2015年のイラン核合意について、最終的には米国が離脱する可能性があると警告したことや、低調な内容だった9月の米CPI(消費者物価指数)を受けて、米長期金利が低下したことが材料視され、2週間半ぶりの高値をつけた。チャートポイントの1,295ドルを超えたことで、上昇しやすい地合いになっている。
一方、世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月6日の854.02トンから10月13日には853.13トンに減少。米国株高で安全資産である金からリスク資産である株式への資金シフトが進んだ可能性がある。また金相場の上昇で手仕舞い売りが出たことも影響したともいえるだろう。
COMEX(ニューヨーク商品取引所)金先物市場での大口投機筋のポジションは、10月10日時点で20万112枚の買い越しとなり、前週から3,743枚減少。買いポジションが8,069枚減少した一方、売りポジションも4,326枚減少した。
これは先週と同様のパターンで、買い方が金相場の戻り局面で手仕舞い売りを出す一方、売り方も同様に買い戻しを進めていることが確認できる。金相場は週末に掛けて1,300ドルを回復しており、さらに買い戻しが進んだことが金相場をさらに押し上げた可能性がある。
FRB(米連邦準備制度理事会)が注視するコアPCE(個人消費支出)物価指数が目標とする2%を下回っており、現状で利上げを敢行すれば、これまでの政策運営と異なるため、FRBの信認が低下するリスクがある。FRBはこれまで、金融政策の正常化を盾に徐々に利上げを行ってきたが、利上げを行うには十分な材料が整っていない。市場での利上げ確率が高まっているが、実際に利上げを実施すれば、株価が不安定になり、結果的に安全資産である金が買われる可能性もあるだろう。
一方で利上げが見送られれば、株式市場に安心感が広がる一方、長期金利の上昇が抑制され、これが金相場を押し上げる期待もある。
金相場は1,300ドルを超えたことから、上値を試しやすい地合いにある。次のターゲットは1,315ドル、さらに前回高値の1,362ドル。
一方、ロシア中央銀行は、モスクワ取引所で金の購入を検討していると報じられている。同行のユダエバ第一副総裁は「そうした選択肢も検討している」とし、準備資産としての金購入について言及している。今月初めのロシア中銀の金準備高は736億ドルと、前年同期の655億ドルから増加している。
中国の輸出入が加速
非鉄相場はまちまち。LME(ロンドン金属取引所)在庫は亜鉛が増加したが、それ以外は減少した。
アルミは反落したが、崩れていない。銅は続伸し、さらに高値を更新した。直近高値の6,970ドルを超え、7,000ドルの大台も視野に入ってきた。ニッケルも大幅続伸し、1万1,720ドルまで上げてきた。きわめて強い戻りである。
亜鉛は下落し、鉛も下げたが、基調に変化はない。強さは維持されている。
中国の9月の輸入(ドル建て)は前年同月比18.7%増となり、前月の13.3%増を上回る。輸出は同8.1%増と、前月の5.5%増から加速した。一方、貿易収支は284億7,000万ドルの黒字で、3月以来の低水準となった。前月は419億9,000万ドルの黒字だった。輸入の増加は10月初めの1週間の中国国内の連休を控えて企業が輸入を前倒ししたものと思われる。
9月の対米貿易黒字は280億8,000万ドルで、前月の262億3,000万ドルから拡大。2008年以降の税関データに基づいた試算では、単月としては過去最高の対米貿易黒字だ。1~9月の対米貿易黒字は1,955億4,000万ドルとなった。
9月の未加工銅(アノード、精錬、半完成製品を含む)の輸入量は43万トンと、3月以来の高水準。前年同月比では26.5%増、8月の39万トンからは10.3%増だった。1~9月の輸入量は前年同期比9.4%減の344万トン。9月の未加工アルミおよびアルミ製品の輸出は37万トンで、8月の41万トンから10%減、前年同月の39万トンから5%減少した。
一方、9月の鉄鉱石輸入量は1億300万トンと、前年同月比11%増となった。1~9月の輸入量は8億1,700万トンと、前年同期比7.1%増。8月の輸入量は8,866万トンだった。
中国政府は大気汚染対策の目標達成に向けて、主要製鉄地域を含む北部で冬季の鉄鋼減産を命じている。質の低い溶鉱炉に対する規制を受けたことから、高品位原料の需要が高まりやすいため、これらの堅調な輸入が続くものと思われる。
また、9月の石炭輸入は前年比10.8%増の2,708万トンで、2014年12月以来の高水準となった。共産党大会を前に、当局が環境査察を強化したことから国内の生産量が減少したとみられている。1~9月の輸入は13.7%増の2億485万トンだった。
先行き不透明感から原油は反発
原油は反発。中国の石油輸入が堅調さや、トランプ大統領がイランの核合意順守を認めない判断を示したこと、イラク北部クルド自治区の情勢不安などが材料視されたもよう。
また、OPEC(石油輸出国機構)が原油在庫を削減し、原油相場を引き上げるため、来年3月に設定している減産合意期限を延長するとの観測も支援材料になっている。直近高値の更新を狙える動きになりつつある。
一方、IEA(国際エネルギー機関)は月報で、2018年の原油市場はおおむね需給が均衡するとの見通しを示していた。消費拡大が3年間続くことが余剰在庫の取り崩しに寄与し、生産の急増分も相殺するとみられる。さらに2017年の世界原油需要の伸びを日量160万バレルに据え置いた。2018年の伸びは140万バレルとなっている。2018年は4四半期のうち、3期でおおむね市場は均衡するとした上で、2018年通年では原油需要の伸びとOPEC非加盟国の増産分がほぼ同量となるとしている。
OPEC原油の需要は2017年第4四半期に日量3,298万バレルに増加し、その後2018年第1四半期は3,187万バレルに落ち着くと予想した。OPEC非加盟国の原油生産については、米国の増産などにより、2017年は日量70万バレル増となる見通しで、2018年は150万バレル増の5,960万バレルに達するとみている。
OECD諸国の8月の在庫量は1,420万バレル減少し、30億1,500万バレル。サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが海外でのIPO(新規株式公開)を棚上げし、世界の政府系ファンドや機関投資家を対象とした私募での株式売却を検討しているとFT.comが報じている。ここ数週間で中国を含む外国政府やその他の投資家への私募での株式売却に関する協議が加速しているという。来年にサウジ証券取引所に株式を上場する方針に変更はないが、海外で株式を上場する可能性も依然として残されているようだ。
サウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコは、「株式上場について、さまざまな選択肢が引き続き、活発に検証されている。決定事項は何もなく、IPO手続きは依然として予定通り」としている。原油価格が低迷するなか、少しでも高い価格でのIPOの狙いたいところであろう。その意味でも、現在の協調減産合意に参加する産油国には、原油価格のさらなる引き上げのため、より厳正な生産枠の順守を求めていく可能性がある。
(江守 哲)
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