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人気株と値上がり株を研究!新興株ランキング TOP20 2017年9月

トウシル / 2017年10月25日 16時0分

人気株と値上がり株を研究!新興株ランキング TOP20 2017年9月

人気株と値上がり株を研究!新興株ランキング TOP20 2017年9月

新興株市場<マザーズ+ジャスダック>のこれまでの動き

 新興株市場のこれまでの動きを振り返ってみます。9月はとにかく個人投資家泣かせの月でした。序盤はズタボロ・・・・・・。9月4日にマザーズ指数が2.9%安。そして翌5日に4.6%安と、それまでマザーズ指数が珍しく安定感抜群だっただけに、ショッキングの大きい幕開けとなりました。

 東証1部の人気株(=信用買い残が極端に多い株)だったKlabが突然急落し、ゲーム株に偏ったポートフォリオを組むタイプの個人投資家が広く痛手を負うことになりました。この“Klabショック”の余韻が続いていたところで、傷口に塩を塗ったのが9月5日のメタップスのストップ安。直前まで最も人気化していた株が、「中国のIOC全面禁止」発表を受け暴落・・・これがインフォテリアやフィスコなど仮想通貨関連の人気株に幅広く売り連鎖しました。

 多くの投資家が似たような人気株ばかり持っていることもあり、人気株が下げると連鎖的に幅広い人気株が同時安してしまう、これが新興株市場。それに加え、この時期は「北朝鮮リスク上昇=マザーズ売り」といった公式が一般化していました。北朝鮮の重要イベントを控えると、そのイベントを前に手控えムードが広がります。

 つまり、流動性が落ちるということ。流動性が落ちると、流動性だけで人気化していた多くの新興株には買う動機がなくなります。つまり、下げやすくなるということ。この2つの需給的な側面だけで崩れたのが9月序盤だったと言えます。

 ただ、マザーズ指数でわかりやすい節目の1,000ポイントを割れた途端、これを号砲にリバーサル狙いの資金が入りました。押し目で買いたい投資家は多いのだと思います。その後は、マザーズは“往って来い”に。東証マザーズ指数は8月末が1,100.80ポイント→9月末が1,093.10ポイントと、値段はほとんど変わってません。ただし、1,000ポイント割れ直後こそ売買が膨らみましたが、その後戻す過程では売買が細っていくばかり・・・「ハイ、元通り!」と言われても、リバウンドに関与できた投資家はさほど多くなかったのではないかと思われます。

 結局、日経平均株価と新興株の底入れタイミングはほぼ同じでした。その日経平均の下げ止まりは、米国株の上昇タイミングと重なることから、世界の株式市場がリスクテイクの姿勢を回復したことが新興株にもプラスに働いたとしか表現できません。そして、リスクテイクの姿勢が回復する場面では、空売りや先物売りなどショートポジションが溜まらない分、戻すときのエネルギーは東証1部の大型株よりマザーズのほうが弱いということも確認されました。
 

どんな株が人気? 売買代金ランキング20(9月)

 売買代金ランキングを見たとき特徴は、突き抜けた人気株が出てこなかったことでしょうか。売買代金の25日移動平均でトップはメタップスでしたが、これはたまたま好・悪材料が続き“乱高下”したため。時価総額の大きいそーせい、ミクシィなどの売買回転率が落ちているところを見ても、その日限りの動意株を使った"ヒット&アウェイ“が主流。北朝鮮リスクが燻ったなかでは「流動性の急な低下」が怖いため、一売買当たりのロットを小さくしたエントリーが増えたのも特徴だったといえます。

 根強い人気のあるのはゲーム株。こちらは、スマホゲームの配信開始を前に“期待”で買われるケースが大半です。ただし、配信開始の翌日にはiOSデイリートップセールスの全体ランキングで“現実”が確認されます。途端に大崩れしてしまうゲーム株が相次いだことで、ゲーム株の人気は総じて落ちたようにも感じられました。

市場 銘柄コード
銘柄名
9月末終値 時価総額
(億円)
売買代金
25日移動
平均値
[億円]
月間騰落率
(%)
マザーズ 6172
メタップス
3,590 465.8 59.6 14.9
ジャスダック 8927
明豊エンター
343 84.6 46.6 51.8
マザーズ 4565
そーせい
9,500 1612.5 44.9 4.6
ジャスダック 4080
田中化研
2,332 591.2 41.6 34.3
ジャスダック 2706
ブロッコリー
627 274.2 37.6 -19.8
マザーズ 3853
インフォテリア
1,357 237.2 35.0 -3.4
ジャスダック 3441
山 王
1,498 74.9 30.4 -18.1
ジャスダック 4274
細谷火
1,917 77.3 29.4 42.0
マザーズ 3810
サイバーS
2,809 165.2 26.5 -7.9
ジャスダック 3758
アエリア
2,081 368.8 26.2 -14.2
マザーズ 4563
アンジェス
661 519.8 24.0 4.8
マザーズ 2160
ジーエヌアイ
465 625.7 22.6 -3.3
マザーズ 2121
ミクシィ
5,430 4247.9 21.7 -7.3
マザーズ 6618
大泉製
1,329 111.2 21.5 84.8
マザーズ 6166
中村超硬
4,615 215.9 19.5 16.0
ジャスダック 6324
ハーモニック
5,810 5504.9 18.0 20.3
ジャスダック 4579
ラクオリア
1,157 222.8 17.7 -13.2
ジャスダック 6864
NF回路
2,316 146.6 17.6 73.2
ジャスダック 4772
デジアド
625 103.3 16.9 -29.0
マザーズ 3911
Aiming
624 215.2 16.3 -16.9


売買代金ランキングで注目の5銘柄

1 メタップス(6172・東証マザーズ)

 天国(9月1日にS高)から地獄(5日にS安)へ―。韓国子会社のメタップスプラスがICO(仮想通貨での新規公開のこと)で資金調達し、来年3月に「CoinRoom」という仮想通貨取引所を始める予定だという一部報道で急騰。その直後の4日、中国がICOは違法行為として禁止令を発表しました。買われた材料がICO期待だったため、まさに悪夢・・・。
 ただ、11日に同社が時間取引所「タイムバンク」の開始を発表すると急反発。そこからリバウンドを続け、IOCショックで下げた分をほぼ取り戻しました。「タイムバンク」というのは、著名人の空いている“時間”を10秒単位で売買できる取引所だそうです。斬新過ぎて判断しにくい材料・・・とはいえ、前期までずっと赤字の同社だけに、将来的に収益化しそうな材料が出ること自体が買い材料になるのかもしれませんね。

2 明豊エンタープライズ(8927・JQ)

 流動性の低い、知名度も低いジャスダックの低位株が“突然”人気株になりました。初動で鼻が利く投資家が買いに向かったのは、2018年7月期業績が超が付くほどの大幅増益になりそうだと一部で観測されたため。実際、14日に同社が発表した2018年7月期予想は、売上高が前期比2倍、営業利益で同3.2倍でした。EPS(1株当たり利益)が膨張するため、株価が急騰してもPERは1ケタ台(まだ割高感なし?)。
 ただ・・・その後に同じ業績観測で、来期にあたる2019年7月期の業績予想を「減益予想」→「増益予想に修正」→「増益予想取り消し」と転々しました。外野のドタバタ劇に振り回されつつ、株価は月間51.8%上昇に。

3 田中化研(4080・JQ)

 7月から始まったリチウムイオン電池関連株ブーム。同社はリチウムイオン電池の正極材料を主力としており、関連株の中心的存在といえます。ただ、8月25日に信用規制がかかったことで9月初旬の株価は下向き。それが一転、信用規制が解除されたことで9月11日に急騰。信用規制解除とタイミングを合わせ、EV(電気自動車)関連株人気がヒートアップしたことも火に油状態で・・・。ただし、14日に再び信用規制がかかったことでクールダウン。ひたすら東証の信用規制に振り回されていました。

4 細谷火工(4274・JQ)

「北朝鮮情勢の悪化=買い」「北朝鮮情勢の後退=売り」と、条件反射的に投機家が売買しているだけにも見えた防衛関連株。日経平均が強く上昇した9月後半、「北朝鮮リスクは後退した」と多くの市場関係者は解釈していました。つまり、この株は「売り」。にもかかわらず・・・、同社株の9月は月間42%も上昇しています。「北朝鮮リスク、実は後退していないのか?」というような想像をしてしまうほど、北朝鮮リスクの強弱を計るバロメーター的に扱われています。
 ちなみに、5%ルール報告で同社の筆頭株主「一般社団法人 日本文化伝承会館」が発行済み株数の3.47%に相当する16万株を市場内で(9月5日に)売却したことが判明しました。

5 NF回路設計ブロック (6864・JQ)

 個人投資家の物色テーマとして8月中旬、彗星のごとく登場した「量子コンピューター関連」。スーパーコンピューターより計算能力が高い量子コンピューターの実用化のため、文部科学省が2018年度から約300億円投じるとの報道がきっかけです。関連株探しで短期の投資家が行きついたのが同社株。たしかにホームページの「製品情報」内にある「超低雑音増幅器」には、「量子コンピュータにおける超電導デバイスの信号増幅」という紹介文が書いてあります。

 

どんな株が値上がり? 株価上昇値率ランキング20(9月)

 新興株の9月の値上がり率トップ20のうち、16銘柄(8割)がジャスダック銘柄だったことにやや驚きがありますね。また、トップ20のほぼすべてが、急に人気化した聞き馴染みのない銘柄で占められているとも言えると思います。

 今年に入り、7月後半まで続いたマザーズ指数の上昇トレンドは8月以降崩れました。その過程で、これまでの上昇局面で信用買い残を積み上げたゲーム株やバイオ株が大きく値崩れ。株価の上昇モメンタムだけを求める短期の投資家が、売り圧力の小さい株を探すようになりました。その結果たどり着いたのが、手アカの付いてないジャスダックやマザーズのマイナーな銘柄だったといえます。ただ、人気化した銘柄の多くは、上方修正など“業績”が理由になっていた点は興味深いところです。

市場 銘柄コード
銘柄名
月間騰落率
(%)
9月末
終値
前月末
終値
時価総額
(億円)
ジャスダック 2693
YKT
146.4 478 194 56.9
ジャスダック 6384
昭和真空
97.9 2,359 1192 153.3
マザーズ 6618
大泉製
84.8 1,329 719 111.2
ジャスダック 6864
NF回路
73.2 2,316 1337 146.6
マザーズ 6192
HyAS&Co.
65.6 1,179 712 87.8
マザーズ 3452
ビーロット
54.9 3,330 2150 133.3
ジャスダック 3317
フライングG
53.1 3,750 2450 54.3
ジャスダック 8927
明豊エンター
51.8 343 226 84.6
ジャスダック 6912
菊水電
48.6 1,190 801 117.8
ジャスダック 3814
アルファクスFS
47.6 1,678 1137 42.2
ジャスダック 2778
パレモ・HD
46.1 377 258 45.4
ジャスダック 4792
山田コンサル
43.1 2,575 1800 512.3
マザーズ 3461
パルマ
42.7 2,441 1710 32.9
ジャスダック 5695
パウダテク
42.3 4,965 3490 147.5
ジャスダック 4274
細谷火
42.0 1,917 1350 77.3
ジャスダック 3329
東和フード
41.5 3,620 2558 148.2
ジャスダック 2480
シスロケ
38.6 1,279 923 45.7
ジャスダック 6898
トミタ電機
38.1 2,270 1644 18.5
ジャスダック 6149
小田原
37.3 3,780 2753 241.6
ジャスダック 6658
シライ電子
36.9 427 312 59.7

 

株価上昇率ランキングで注目の5銘柄

1 昭和真空(6384・JQ))

 業績のビッグサプライズで、まさに社名通りチャート上にも“真空”地帯を形成しました。9月14日、通期の営業利益予想を9.4億円→14.76億円に大幅上方修正。14日終値1,250円の同社株に買いが殺到し、ようやく寄り付いた19日の始値は1,850円でした。
 14日時点の25日移動平均出来高は5.7万株。1日5.7万株程度しか出来ない株が、21日には平常時の60倍近い332万株も出来たわけです。それだけ、同社株を持っていた個人、機関投資家とも少なかったということ。需給面のひっ迫感で株価は高騰しましたが、それでも“業績”の裏付けがあれば強い!
 従来予想のEPSは125円でしたが、これが183円に大幅アップ。ということは、株価が2,000円台を超えても、まだ予想PERでは11倍台というわけで・・・それだけ、これまで割安放置されてきた銘柄とも言えそうです。

2 大泉製作所(6618・東M)

 9月にブーム化したEV関連株として急上昇。温度センサを手掛ける企業で、EV用のセンサ開発への期待から物色が長続きしました。EV関連ではレアなマザーズ銘柄ということで、プレミアムが付きやすい部分もあったように思われます。9月下旬には、自動車最大手のトヨタが、マツダとデンソーとの共同でEV開発の新会社設立を発表。デンソーが同社の主要取引先ということもあり、自動車業界のビッグニュースも同社株の上昇の援護射撃に。


3 ビーロット(3452・東M)

 中古ビルの再生を主力とする不動産株。類似企業の多くが低PER株で、御多分にもれず同社株も8月中旬までPER1ケタ台でした。

 状況を一変させたきっかけが、8月18日に発表した株主優待の導入(100株以上の株主には一律でQUOカード1000円分)!ではなく・・・同時に発表した3万株の立会外分売でした。立会外分売実施の目的に「将来的な東証1部への市場変更を目指し、株式分布状況の改善や流動性向上」と書いていたことが着目されました。

 東証1部への昇格期待で、かなり持続的に株価が上がりました。類似企業に比べてプレミアムが乗っていますので、東証1部への昇格が実際決まった時には出尽くし感も?

4 フライングガーデン(3317・JQ)

 株価が大変貌し始めるきっかけは、8月初旬に発表した第1四半期決算でした。第1四半期の営業利益が前年同期比2.9倍!通期予想は据え置かれましたが、進ちょく率の高さから上方修正は確実といった見方が広がったようです。

 9月も、4日に発表した8月月次売上高(既存店で前年同期比8.6%増)を好材料視。業績材料で水準を切り上げたジャスダックの外食株といえますが・・・それ以外の要素もあったように思われます。

 というのが、この時期、「いきなり!ステーキ」で業績が急拡大しているペッパーフードが連日で高値を更新。主力は「爆弾ハンバーグ」ですが、同社もステーキを扱う“肉系外食株”。凄まじい勢いのペッパーに引っ張られた側面もあったのでは?

5 パレモHD(2778・JQ)

 19日に発表した業績予想の上方修正で激しく値上がりしました。繰延税金資産の計上が主な理由ですが、通期の最終利益予想を5.2億円→9億円に大幅上方修正。また、3期ぶりとなる復配(期末配当3円)発表したことで、翌20日に80円高しました。出来高が急増したのは、その翌日の21日。この日の取引価格帯(372円~435円)で買った投資家が極端に多い株ですので、この価格帯での戻り売り圧力に当分悩まされそうですが・・・。
 

これから注目したい新興株の動き

 マザーズ市場は、9月に大きな穴が1つ空きました。マザーズの時価総額で当時4位だったアカツキが、東証1部に(9月14日付で)昇格してしまったことです。ただ、まさかその穴を、わずか2週間後に埋めてしまう企業が表れるとは・・・。9月22日にIPOしたAIベンチャーのPKSHAが、初値形成後も連日で上昇。9月末時点で時価総額は1,100億円台となり、同1,100億円台だったアカツキの穴を完全に埋めてしまったのです。

 次世代のスターは次から次に出てきます・・・。同じく9月末に上場したマネーフォワードも時価総額は500億円超と大型。ただ、いずれも将来性を買われるタイプの銘柄で、現時点の利益水準で今の株価を説明するのは難しいところ。結局、マザーズ市場の行方はモメンタムに委ねられ、米国株(なかでも米国のハイテク株や小型株)が想像以上に上がり続け、その地合いが日本にも流れてくるかどうか次第では?あとは、マザーズが弱い北朝鮮リスクが再び高まらないことを願うとか、そういう側面が大きいような気がします。

 今後も有効な小型株の戦略は、8月~9月にかけて開花した「“業績”を手掛かりにした小型の無名株にアンテナを張っておくこと」だと思います。無名というのは、多くの投資家があまり持っていない株ということ。決算で上方修正銘柄が出てくる可能性もあります。EPSの膨張で急激に買われた株が、想像以上に伸びていくケースが東証1部の小型株も含めて相次いでいますので、このあたりには注目です。

 このケースは、初動で急騰した株に追随する投資家(いわゆるイナゴ投資家)が今のマーケットには多く存在し、需給ギャップ(買いたい人より売りたい人があまりに少ない)が極端に生じるためだと思います。「聞いたことが無い銘柄だから」とか、「ネット株やバイオ株ではないから」といった理由で敬遠せず、“業績変化”を理由に火が付いた小型株に注目してはいかがでしょう。

(岡村 友哉)

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