トランプとプーチンが?米ウォール街の重鎮のびっくり10大予想が侮れない
トウシル / 2021年1月20日 16時44分
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トランプとプーチンが?米ウォール街の重鎮のびっくり10大予想が侮れない
2021年はびっくりが連発?10大予想
今回のコラムでは、経済・金融の「世界10大予想」をご紹介します。
前回「米国が火種?全投資家が注目!マーケットを揺るがす10の政治リスク」は、政治リスクを専門とするユーラシア・グループによる「世界10大リスク」のお話をしましたが、経済・金融の専門家による「世界10大予想」はどのような予想になるのでしょうか。
年末年初になると、エコノミストや銀行・証券会社から経済や金融の予想が出てきますが、毎年、このコラムでご紹介しているのは、米ウォール街のご意見番、米投資会社ブラックストーン・グループのバイロン・ウィーン氏によるサプライズ10大予想です(最高投資ストラテジストのジョー・ザイドル氏との共同執筆)。
この予想は1986年以来、今年で36回目となる年始恒例の予想で、ウォール街で注目されています。同氏は「サプライズ」の定義を、「平均的な投資家が発生確率を3分の1程度とみているイベントを、自分は50%以上で起こると信じている出来事」と説明しています。
新型コロナウイルスの感染拡大前の予想だったため、昨年の同氏の予想はあまり意味がないかもしれませんが、それでも当たっているものがあります(参照記事:今年の「サプライズ10大予想」でウォール街の重鎮が危惧すること)。
「株式相場では5%超下落する調整が数回起こるが、S&P500は3,500超になる」(2020年末終値3,756.07)や「景気が押し下げられるも、トランプ政権の政策で景気後退は回避」は当たりましたが、原油価格70ドルや米10年債利回り2.5%は外れました。
予想の大部分は当たらないことが多いのですが、重要なのはウォール街のご意見番が今年の経済や金融をどのように考えているのかを把握しておくことです。自分の相場観と照らし合わせてみて、サプライズの予想かそうでないか、あるいはあり得るかもしれないと思うかもしれません。毎年強気の予想が多いのですが、今年はどのような予想を立てているのでしょうか。
それでは、今年の予想の要点を紹介します。
バイロン・ウィーン氏による「2021年サプライズ10大予想」
2021年サプライズ10大予想 | |
1 | トランプ氏が2024年の米大統領選をにらみ、自前のテレビ局を立ち上げ、インタビュー番組でプーチン露大統領を招く。インタビューはTV史上で最大の視聴者数を記録 |
2 | 米中が建設的な外交・通商関係を回復し、中国A株が新興国市場のけん引役に |
3 | 5~10種類のワクチンが寄与し、米国は5月31日のメモリアル・デーまでにある程度の正常化に戻る。7月には東京五輪が観客を入れて開催される |
4 | 消費者への恩恵が優先され、グーグルやフェイスブックに対し、欧州を除き本格的な解体への圧力は低下 |
5 | サービス株・航空株が力強く上昇し、米国名目成長率は2021年に6%、失業率は5%へ低下、2010~2020年を超え史上最長となる景気拡大期が始まる |
6 | 金融緩和策継続に合わせ、FRB(米連邦準備制度理事会)と米財務省はMMT(現代貨幣理論)を公然と支持するようになり、インフレがぜん進。金は上昇し、暗号資産の評価が上がる |
7 | 経済活動の正常化に伴い、WTI原油価格は65ドルまで上昇、エネルギー関連株は、2021年で最良のパフォーマンスを達成へ |
8 | 米株式市場は年前半に20%近い調整が入るが、年後半にはS&P500は4,500に上昇、大型テクノロジー株は年内出遅れ組に |
9 | 米10年債利回りは経済成長の拡大を受け2%に上昇、ただインフレ上昇により実質金利はゼロ近辺に。FRBは住宅市場と自動車市場の支援を目指し、国債の買い入れ年限を長期化する |
10 | ドル安は反転。日欧の債務拡大や低成長を嫌う投資家がドル資産を選好 |
ウィーン氏は今年も米国経済や株について、まとめると下記のように強気の見方です。
- 米経済は6%成長、失業率は5%に低下し、史上最長の景気拡大期が開始
- ドル安反転、株は20%下落後、S&P500は4,500に上昇。米10年債利回りは2%に上昇
- WTI原油価格は65ドルに上昇、金は上昇、暗号資産も上昇
ただ、これらの強気の見方は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響がワクチンの寄与によって、5月末までに正常に戻ることが前提になっているようです。しかし現在、ワクチン接種は始まっていますが、接種スピードが当初予定よりもかなり遅くなっています。
WHO(世界保健機関)によると、新型コロナの感染拡大が抑えられる集団免疫の達成には、人口の60~70%が免疫を獲得する必要があるとされています。つまり、正常に戻るためにはあと4カ月半で米国民の60~70%が、2回の接種ができるかどうかということにかかっています。
しかし、現在の接種率はまだ5%にも届いていない状況のため、正常に戻るのはかなり後ろ倒しになるかもしれません。そうなると、ウィーン氏の予想の時期がずれていき、米経済の6%成長も、株の回復も、米長期金利の上昇も、そしてドル安への反転も後ろ倒しになっていくことが予想されます。
バイロン・ウィーン氏の【番外編】2021年サプライズ予想
ウィーン氏は10大予想以外にも、それほど重要ではないもの、実現可能性が高くないものとして、さらに3項目を挙げています。
【番外編】2021年サプライズ予想 | |
11 | 東欧・中東などからのサイバー攻撃が増加・高度化し、損害が甚大に |
12 | テスラが世界的な自動車会社を買収 |
13 | 北朝鮮の金正恩委員長がロサンゼルスまで届く長距離ミサイルで脅しをかけるが、トランプ氏が自身のテレビ番組で金委員長を説得 |
今年の「サプライズ予想」で興味深いのは、トランプ氏によるプーチン露大統領へのインタビューです。もし、実現すれば世界中が視聴するのは間違いありません。トランプ氏の存在力はますます高まることが予想されます。ひょっとしたらと思わせるような予想ですが、プーチン大統領へのインタビューが成功すれば、番外の北朝鮮の金正恩委員長へのインタビューも実現するかもしれません。
バイロン・ウィーン氏の予想は、楽観的で強気な予想が多く、当たらない部分も多いのですが、ただご意見番の予想ですので、相場シナリオを想定する際に参考材料として活用することができます。
前回のユーラシア・グループの政治に関わる10大リスクや今回のバイロン氏の経済・金融のサプライズ10大予想を事前に知っているのと知っていないのとでは、相場への対応が違ってきます。事前に留意しておけば、これらのリスクが発生した場合、あるいは予想通りに進展した場合に冷静に対応することができます。そういう意味で前回と今回のコラムを数カ月に1回読み返して、進展度合いをチェックしてみてください。
(ハッサク)
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